「連鎖」
「殺される」死の連鎖を止められるか?
それは真夜中に突然鳴った。
「は…はい?」
重い目蓋を開けてケータイを持った。
『た、たすけて…殺される…。』
それは助けを求める私の声だ。
「…えっ?わ、わたし?殺されるって…?」
『はぁ…はっ…』
ガサガサッと草を踏む音と、私の息遣いが聞こえる。
『今日は…10月17日…〇〇公園で…』
「17日って3日後?!」
えっ?3日後の…私??
『バ、バイト帰りに…はっ…この公園を…通ったら…誰かに追いかけ…られ…て…はっ』
「えっ?追いかけられてるの?!」
『そ、そう…たぶん殺され…る…ナイフ持ってる…』
ナイフ?何で?
『だ、だから…はぁ…公園…通らない…で…』
ガサガサガサッ!
『みぃ、つけ、たっ。』
その聞いた事ある声に背筋がゾクッとして、心臓が止まりそうだった…。えっ…誰?
プツッ…プープー…
そこでケータイは途切れた。
えっ?何?い、今の…夢?
でも…やけに生々しく耳に残っている。
3日後に私…殺されるの?
3日後に〇〇公園を通らなければ、殺されない?
3日後の10月17日、真夜中。
コンビニのバイトをドキドキしながら、変な冷や汗をかきながらやり終えた。
バイト仲間の加藤くんと別れて、公園を通らずに家に帰る事にする。
ドキドキ…これならきっと大丈夫だ。
歩道橋を渡ろうとした時…背後に気配を感じる。
…えっ…誰かに…つけられてる?
急いで歩道橋を上がる。
…カンカンカン!
その誰かも…着いて来る。
怖くて…振り向けない…でも追いかけてくる。
必死に逃げて…近くの工事現場に入った。
冷や汗が背中を滴る…
心臓が痛いぐらい…早い。
な、なんで…追いかけて…来るの?
コイツは公園にいたんじゃ…?
背後から凄い殺気を…感じる。
「はっ…はっ…はぁ…」
フェンスの影に隠れて、ケータイを持った。
お願い!過去の…私、3日前の…私に掛かって!!
『は…はい?』
掛かった…私だ。この事を伝えなきゃ!!
「私は…田中理沙。あなただよ。今日は…10月17日…で。3日後のバイトの帰りに、歩道橋を…通らないで!
誰かに殺され…る。」
『えっ?私?こ、殺される?』
「絶対、通らないで。」
「あーあ、またケータイ掛けてる。」
その誰かにケータイを切られる。
こ、この声?ま、まさか…。
顔を上げるとそこには…
バイト仲間の加藤くんが居た。
黒いフードを深く被って、マスクをして、右手には…
ギラリと光るナイフ。
月明りに照らされて…不気味な程に…怖い。
「か、加藤…くん?」
「ねぇ、手間取らせないでよ。理沙ちゃん。」
「ど、どうし…て…」
もう腰が抜けて、体が硬直して…動けない。
「君の髪に埃付いてたから取ろうと思っただけなのに、触ったら凄い嫌な顔して…僕の手を振り払ったでしょ?
それがショックで、憎くなって、君を好きだったのに。
だから…殺そうと思ったの。」
「く、狂ってる!そ、そんな事で…。」
「僕にとってはそんな事じゃない。あぁ、一応謝っておくわ。殺してゴメン。」
「でも、また殺すから。ね?」
何コイツ…頭おかしい…。
過去の私にまた電話しなきゃ。犯人は加藤だって。
でも、もう間に合わない。
このままだと過去の私も殺されてしまうのだろうか?
このままだと死の連鎖が続いてしまう。
その前に断ち切らなくちゃ。
ここでコイツを殺しても、過去のコイツは生きていて…また過去の自分も殺されてしまう?
よく分からないけど、今やるしかない。
私は近くに転がっていた鉄パイプを握った。
私が死ぬのが先か、コイツを殺すのが先か、
どっちだ…?
end