#23話『罪と罰』中編
――クーフェとロズが待つ円卓へと戻る。
「お二人とも、すごく良かったですよ!」
「最後、ばっちりキマったわね!」
二人は拍手で出迎えてくれた。
「練習したかいがあったよ! ダンスパーティーに誘ってもらって本当に楽しかったよ!」
オレはベネロッサの方を向いて、
「ありがとう」と言うとベネロッサは照れながらも
「よく、頑張りました」と言ってくれる。
ただ、本人は恥ずかしかったのか……
「わ、わたし……料理でも取ってくるね。踊ってお腹がすいたでしょ……?」
そう言うと、オレたちを置いてどこか行ってしまった。
「姉さま……素直じゃないんだから……」
ロズが独り言のようにボソッとつぶやく。踊っているときは素直なのに……女心はムズかしいとハイデは思う。そんな悩んでいるオレの肩がたたかれる。おそらく肩を叩いたのは……
「ヌハハハ! 王子殿下! 先ほどのダンスは素晴らしかった! 我が娘と息もぴったりでしたな!」
――予想はしていたが……その相手とはバルバロッサ王だ。
わざとらしい言い方をする……と、ハイデは思った。ただ、今はハナシを合わせていこう。
「見ててくれたんだね!」
「モチロンですとも! いやぁ、二人が仲良さそうで本当に安心した!」
バルバロッサ王はホッと胸を撫で下ろすように息を吐く。帝王争奪戦に不利にならないかを、心底気にしているようだ。
「バルバロッサ王は、素晴らしい娘さんを持ったね!」
「おお……王子殿下にそのように言って頂けるとは……」
パフォーマンスがゼロといえば嘘になるかもしれないが、俺自身、ベネロッタをいい子だとは心の底から思っていた。
「そういって貰えて安心しました……実は、それともう一つ、王子殿下にご紹介したい者たちがおりまして……」
バルバロッサ王は、後ろにいる四人の騎士を自分の前に並べる。
「右から、我が国の騎士団長、ニエ。そして、第五小国「銀月」から来賓客として、まねいた三人将の皆様です。さぁ、ご挨拶を……」
騎士団長のニエが最初に俺に挨拶をしてくる。確か今日の司会をつとめていた、女騎士だ。
「お初にお目にかかります。闇舞で騎士団長をしております、ニエともうします。以後お見知りおきを……」
ニエは深い礼をする。そして、後ろの三人の「銀月」の将軍たちが口を開く。
「はじめまして、王子殿下。我々……ゲエテ王の国、銀月から参りました、三人将のウド・グスタフ・エドウィンと申します。」
三人は敬礼をしながら、ハナシを続ける。
「本日は、ゲエテと親交の深いバルバロッサ王の誘いもあり、参上した次第……」
「そっか、ゲエテ殿とバルバロッサ殿は仲が良いのだな!」
「はい、先代の王の時代から仲良くさせていただいておりました。」
先代の王……つまり、殺されたゲエテの兄の時代から……なにか引っかかる。
少しカマをかけてみるか……。
「銀月の先代の王は、たしか、ゲエテ殿の兄上だったのではないか?」
「はい、おっしゃられる通り。バルバロッサ王も先代王がお亡くなりになったときは、それはそれは……」
オレはバルバロッサ王の方をチラっと見る……。だが、あまり悲しんでいる様子は見られなかった。
(ゲエテの兄の死に、バルバロッサも絡んでいる……? とすると、この二カ国はグル……?)
……とすると、ゲエテとバルバロッサが手を組んでいる可能性だってある。あくまで……可能性のヒトツにすぎないが。
(一応、注意しておくに越したことはないだろう……)
オレは警戒心を高めることにする。ただ、それを悟られてはいけない。
「銀月と闇舞が仲が良いことは良いことだ! これからも我が本国のために、その連携を強めてくれよ!」
「「「っは! かしこまりました!」」」
敬礼する四人は、勢いよく返事をする。
こちらの本心に気付かれないように、敢えて馬鹿なふりをする。これが今の最善策。そんな、水面下の心理戦をしていると、前方からベネロッサが料理を運んできてくれるのが見えた。
「ごめんね、ダン王子! 混んでて時間がかかっちゃった!」
「いやいや、わざわざ、ありがとうな!」
そんな様子を見た、ニエと三人の騎士団長たちは、オレたち二人に茶々を入れてくる。
「いやぁ、お二人が揃っているとさまになりますなぁ!」
「まさに、……ベストなカップルですね!」
「確かに、そのとおりですな。我が国のスーチェ姫も負けていられませぬ」
「しかし、これだけお似合いだと難しいのではありませんか?」
褒めちぎられ、顔が真っ赤になったベネロッサは、どうしたら良いのかわからない様子だ。
「みんなが言うようにベネロッサはいい子だよ! オレにはもったいないぐらいにね! それに……」
ベネロッサは今の言葉で、もう恥ずかしさの頂点になったのか、これ以上喋らないでとばかりに、お皿の料理をオレの口に放りこむ……。
「もう、恥ずかしいってば!!」
スプーンがオレの口の中に入ってくる。
――これが人生初の「あ〜ん」
甘酸っぱい思い出の1ページ……になるはずだった。
しかし、オレの目の前は、真っ暗になる。
「な、なんだ……と!?」
何も見えない。呼吸が苦しい。腕と足が言うことを聞かない……。
最後に聞こえた言葉は……ベネロッサの叫び声だった……。
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