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申請②

「しかし、この皇城は単に美しいというわけでなく、この皇城は防衛施設としても優秀だな」

「ああ、アディルの言う通りだな。所々に兵が隠れる死角があるし、しかも塔の配置からして外から見れば死角が多いのに、中からは死角がほとんど無いように見える」


 皇城内を歩きながらアディルとシュレイの言葉に全員が納得の表情を浮かべた。。


 竜神帝国の皇城は、造形美と機能美が結びついており、竜神帝国の経済力、軍事力の巨大さを内外に知らしめているのだ。


 皇城内をアディル達一行はアリスの先導に従って歩いて行く。皇城の中ではアディル達は様々な種族とすれ違った。竜族の国である以上、竜族は当然であるが、人間、エルフ、ドワーフ、ホビット、獣人など様々な種族である。


(どの種族もとりあえず虐げられているという感じはないな)


 アディルはすれ違う各種族を見て、竜神帝国は竜族が支配者階級であるのは間違いのだろうが、他種族を虐げるというわけではないらしい。その辺りの事はアリスから聞いていたために予備知識があったのだが、ここに来て確認出来たという感じである。。


 アディル達一行はそのままずんずんと進んでいく。


「ここよ」


 アリスが扉の前で一言言うと扉の前の衛兵に声をかける。


竜神探闘(ザーズヴォル)の申請に参りました。取り次ぎをよろしくお願いします」

「はっ!! 少々お待ちください!!」


 声をかけられた衛兵はアリスにキビキビとした篇津を行うと部屋の中に入っていった。


 衛兵が中に入って五分ほど経って衛兵が部屋から出てくるとアリス達に一礼する。


「お待たせいたしました。お入りください」


 衛兵の言葉を受けてアディル達は入室する。その部屋の中心には一つの水晶球が台座に掲げられ、よく見ると台座から水晶はわずかであるが浮かんでいた。

 部屋の奥に五人の人物が座っている。中心にいるのは白い髪の老年の竜族であり、その他はエルフ、獣人、人間、ドワーフが座っているところをみると彼らが訴えが適切かどうかを裁定するのだろう。


「それではそちらの水晶に触れて竜神探闘(ザーズヴォル)の申立人、仇の名を告げなさい」


 中心にいる老年の竜族が厳かに告げるとアリスは躊躇することなく進み出て中央の水晶の隣に立った。


「申立人アリスティア=フレイア=レグノール!! 我が両親の仇である現レグノール選帝公イルジード=ザルク=レグノールに竜神探闘(ザーズヴォル)を申し込む!!」


 アリスがそう宣言して水晶に触れると水晶球は蒼く冷たい光を放った。水晶が蒼く光った事に五人の裁定者達は静かに頷いた。


「うむ……アリスティア=フレイア=レグノールの訴えを認めよう」


 竜族の男性の言葉に四人の裁定者達も同意の表情を浮かべた。


(決まりなのかしら?)

(本当にあっさりと決まるんだな)

(それだけあの水晶に込められている術式に自信があるというわけね)


 アディル達は静かに視線を交わしながらアイコンタクトで意思の疎通を行いつつ、とんとん拍子に進んでいく手続きにアディル達とすれば驚くしかない。


「あれってうちの国でも導入できれば良いのに……」


 ベアトリスがポツリと呟いたが、その内容には大きく頷かざるを得ないというものである。


竜神探闘(ザーズヴォル)には準備期間として一ヶ月の期間が設けられることになっている。なお、その一ヶ月とは相手ではなくレグノール選帝公イルジードに通知を受け取った次の日から数えて一月後とする。申立人、異存はあるか?」

「ございません」

「それではこれにてアリスティア=フレイア=レグノールの竜神探闘(ザーズヴォル)の申立の受理を宣言する」


 竜族の男性はそう言うと席を立った。続いて残りの四人の裁定者も立ち上がり部屋を出て行った。


「また、あっさりと受理されたわね」


 五人が出て行ったのを見て、エスティルが言う。


「うん。この水晶はありとあらゆる虚偽を見抜くのよ。竜神探闘(ザーズヴォル)は神聖な決闘。もしそこに虚偽の申立を行えば命はないわ。そして申請が受理された以上、私とイルジードのどちらかが死ぬ事になるわ」


 アリスの声には強い決意が感じられる。イルジードの実力をアリスは決して過小評価していない。それ故に厳しい戦いになることを確信しているのだ。


「アリス、死ぬのはイルジードだ。お前は一人で戦うんじゃない。俺達がいるからな」


 アディルの言葉にアリスは小さく頷く。


「うん……ありがと」


 小さくお礼をいうアリスに全員の顔が綻んだ。アリスは決して素直ではないが、それは表面上の事であり、本心は全員が察しているのである。まぁ表面が薄すぎるため本心は丸わかりなのだ。


「さて、これからどうすんだ?」


 シュレイがアリスに尋ねる。


「そうね。これから実務的な事が始まるわ」

「実務的?」

「うん、これから一ヶ月の間どこで過ごすとか、資金の援助は必要かとかね。私としては竜神探闘(ザーズヴォル)の申請者が滞在する施設があるのよ。そこに滞在するように申請するつもりよ」

「それは助かるな」


 アリスの提案にシュレイが即座に賛成した。一ヶ月もの間の滞在費を考えるとやはり相当な費用がかかるのは間違いないからだ。


「ただし、半軟禁状態におかれるわよ」

「え?」


 軟禁という物騒な言葉に全員が困惑の声を上げた。


「身の安全を確保するには隔離するのが一番手っ取り早いでしょ」

「まぁ確かにな」

「自由にさせた場合に敵に襲われでもしたら意味が無いから当然の処置かもね」

「保護される以上、当然の代償だな」

「そういうこと。ただで手に入るものなんてこのよには存在しないわ」


 アリスはそう言って笑ったところで二人の文官が入ってきた。


 そこで、簡単な手続きを行ったところで文官の一人がアリスに告げる。


「レグノール様、この後に」


 バタン!!


 文官の言葉を遮って扉が勢いよく開け放たれた。


「アリスティア!! 無事だったか!!」

「アリス!! 良かった!!」


 振り返った先には二人の竜族が立っていた。

  

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