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竜神探闘前哨戦⑤

「なるほどそういう事か。アリス、もう種は分かったから本気出して良いぞ」

「あ、シュレイとアンジェリナのおかげね」

「ああ」


 アディルとアリスの会話にエイクリッドに不快気な表情が浮かんだ。部下が人間如きにやられたというのも気にくわないのにすでに勝敗が決したかのようなアディルとアリスの言葉に不快感が刺激されたのだ。


「みんなも気づいたようね。後は上手く対処してくれるでしょうね」

「それにしてもアリスが知ってくれてればもっとすんなり勝てたんだけどな」

「仕方ないわよ。闇の竜騎兵(イベルドラグール)はイルジードの私兵だもの。私は幹部の名前ぐらいしか情報はないわ」

「そっか。よくよく考えたらアリスはお嬢様だったな」

「そうよ。こうみえても竜神帝国では、お上品におほほとか言ってたんだからね」

「外面が良かったという事か」

「もう少し、歪曲的な表現でよろしくね」

「はいはい。考えとくよ」


 アディルが肩をすくめながらアリスに返答した。あきらかに声の調子も緊張感を含んだものではない。


「さ、それじゃあ。やるとしましょ」


 アリスはそうエイクリッド達に告げると空間に両手を突っ込むと二本の剣を取り出した。アリスの愛剣である闇竜(ヴィグレム)輝竜(ルクナレス)であった。


「今回はこっちよね」


 アリスは左手に握った闇竜(ヴィグレム)を見て呟くとエイクリッド達に襲いかかった。アリスの動きは静かでかつ速い。一瞬で鉄竜(アスダイム)達の間合いに入り込むと斬撃を放った。


 アリスの放った斬撃は輝竜(ルクナレス)の上段斬り、それを兵士は剣で受けた瞬間にアリスのもう片方の闇竜(ヴィグレム)が首筋に当てられた。

 首筋に剣が当てられたというのに兵士には恐怖の表情を浮かべていない。


 シュパ……


 アリスが静かに闇竜(ヴィグレム)を引くと鉄竜(アスダイム)の首筋がスパリと斬り裂かれた。

 首を斬り裂かれた兵士は信じられないという表情を浮かべると傷口から舞い散った鮮血を感じ、呆然としたまま崩れ落ちた。


「もう種はバレてると言ったでしょ?」


 アリスの不敵な言い方にエイクリッドは先程までの不快気な表情ではないものを浮かべていた。アリスの言葉がただのハッタリでないことを確信したのだ。


「お前らが頑丈な理由は生身の部分を金属に変化させるという類の術だろ?」


 アディルの言葉にエイクリッド達は忌々しげな表情を浮かべた。エイクリッド達の反応を無視してアディルはさらに続ける。


「お前達の身体的特徴なら厄介だと思ったんだけど術なら対処してしまえば簡単だ」


 アディルは余裕の表情で言い放つ。その瞬間に二人の鉄竜(アスダイム)がアディルに襲いかかってきた。


火剋金(かこくきん)、火気を持って金を剋す」


 アディルはそう言うと鉄竜(アスダイム)の斬撃を紙一重で躱し様に刃を首に当て容赦なく斬り裂いた。アディルはそのままもう一人の鉄竜(アスダイム)の首を斬り裂いた。首を斬り裂かれた鉄竜(アスダイム)二人は数歩そのまま走ると首筋から鮮血が舞うと糸の切れた人形のようにバタリと倒れた。


「とまぁこういうわけだ。ここからは純粋な技の勝負というわけだ」


 アディルはそう言うと天尽(あまつき)の鋒をエイクリッドに向けた。




 *  *  *


 エリスは対峙する鉄竜(アスダイム)斧槍(ハルバート)の一撃を避けながら懐に潜り込むと裏拳を放った。


 ガギィィィィ!!


 まともにエリスの裏拳が鉄竜(アスダイム)顔面に入るが、鉄竜(アスダイム)はニヤリと笑うとそのまま斧槍(ハルバート)を薙いだ。


 バギィィィ!!


 鉄竜(アスダイム)の薙ぎをエリスは肘で受けると鉄竜(アスダイム)斧槍(ハルバート)は柄からぼっきりと折れてしまう。エリスは再び裏拳を放った。

 鉄竜(アスダイム)は先程のエリスの一撃でまったくダメージを受けなかったことからエリスの一撃を躱そうともしない。


 ズゴォォォ!!


 しかし、今度はエリスの指が伸びると鉄竜(アスダイム)の右目を抉った。


「がっ!!」


 鉄竜(アスダイム)は苦痛の声を上げると同時に顔を振ることで貫かれた右目から指を引き抜いた。

 苦痛から逃れるためだけの行動であり、鉄竜(アスダイム)の意識からエリスの事を考える余裕はない。

 そう、次のエリスの一撃は無条件で入る事が確約されたのだ。そのエリスが選んだ一撃は肘を顔面に叩き込むというシンプルなものである。


 ゴコォォォォ!!


 エリスの肘が鉄竜(アスダイム)の顔面を打ち砕いた。まともにエリスの肘を受けた鉄竜(アスダイム)は、血と歯を撒き散らしながら回転しながら吹っ飛んだ。


(竜族であっても意識を逸らせば十分やれるわね)


 エリスは心の中で呟く。エリスとすれば十分に竜族とも戦える事を確認出来ただけでもじゅうぶんな収穫であった。


「このアマァァァァ!!」


 仲間がやられた事に激高したもう一人の鉄竜(アスダイム)が槍を突き出してきた。エリスは突き出された槍の柄を躱しながら掴む。掴まれた事を察した鉄竜(アスダイム)は槍を力一杯引いた。


「な」


 ところがここで鉄竜(アスダイム)の口から驚きの声が発せられた。エリスに槍を掴まれたことで武器を封じられまいとして力一杯に引いたのだが、エリスは引かれた瞬間に槍から手を離したのだ。

 抵抗することを想定していた鉄竜(アスダイム)はこの出来事に対処することは出来なかった。大きく体勢を崩した鉄竜(アスダイム)の懐に潜り込んだエリスは胸部に強烈な掌を打ち込んだ。


「が!!」


 鉄竜(アスダイム)の口から血が溢れその場に崩れ落ちる。エリスの一撃は体の内部に衝撃を伝え、心臓を痛打したのだ。いかに鉄竜(アスダイム)が体を金属と化し衝撃に耐えようとしても、内部に衝撃を伝えるエリスの一撃に耐えることは出来なかったのである。


「こっちの方が手っ取り早いわね」


 エリスは倒れ込む鉄竜(アスダイム)を見下ろして小さく呟いた。

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