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竜神探闘前哨戦②

 森林地帯に設けられている街道の幅は五メートル程、しかも石畳で整備されているのは、このレジオム森林地帯が竜神帝国の流通に欠かせないものであるのは確実であった。


 ガタゴト……


 出発して二時間が経ち、アディル達一行はここで小休止を入れる事にする。レジオム森林地帯での戦いを確信しているアディル達とすれば、疲れを残した状況で戦うと言うのはあまり好ましいわけではないのだ。


「エリス、何かあったか?」

「ううん。今の所は何もないわね。アディルは?」

「俺も今の所は何もないな」


 アディルとエリスがそう会話を交わした。アディルとエリスは式神を斥候として四方に放っているのだ。


「いつ襲ってくるかわからないというのは結構面倒ね。精神が削られるわ」

「確かにそうね。このままじゃこっちが潰れちゃう」

「いや、とてもそうは見えないのだが……」


 ヴェルとアンジェリナの会話にアディルが小さくツッコミを入れると主従コンビはギロリとアディルを睨みつけた。睨みつけられたアディルとすればさりげなく助けを求めるためにシュレイに視線を向けるがシュレイは遠くを見るふりをして難を逃れようとしていた。


(なんて薄情な奴だ。友よ俺は悲しいぞ)


 アディルはシュレイに恨みがましい視線を向けるがシュレイはそれに心動かされた様子はない。


(アホ、なんで余計な一言を云うんだよ。学習しないアホと一緒になぜ俺が怒られなければならんのだ)


 シュレイはチラリと視線をアディルに返すが、それはアディルが望んだ感情が込められていないことは確実であった。


「二人ともそんなに怒らないの。アディルもあんまりからかっちゃだめよ」


 エスティルが顔を綻ばせながらアディルと主従にむけて云う。その声も表情も慈愛に満ちており聖女然とした印象を与えた。


「エスティル……お前ってやつはなんていいやつなんだ」

「うふふ♪」


 アディルの言葉にエスティルは優しく微笑んだ。


(く……またエスティルに良いところを持っていかれた)

(お嬢様、やはり素直にいくのがよろしいかと)

(そんな事わかってるわよ。でもどうしても恥ずかしいのよ)

(ヘタレですね)

(あんた、一応私は主人なんだけど)

(承知してます。だからこそ苦言を申し上げているのです)


 ヴェルとアンジェリナはコソコソと話し合っている。その声は小さいのために二人以外には聞こえないのだが、女性陣は何やら内容を察しているようであった。


「さ、それじゃあ。とりあえずお茶を飲んで出発するとしましょう」


 ベアトリスの言葉に全員が頷くと、ベアトリスがポットのお湯をティーポットに注いだ。王女から直々にお茶を入れてもらうという事は、冷静に考えれば相当な出来事なのだがベアトリスもニコニコとしながらやっているために“気遣い”的な発言を誰もしなかったのだ。


「はい、どうぞ♪」

「ありがと」


 ベアトリスはニッコリと微笑んでアディルにティーカップを渡すとアディルは受け取ると“おっ”という表情を浮かべた。ベアトリスの煎れたお茶の香りがすばらしくアディルの鼻孔を刺激したのだ。


「へぇ、良い香りだな。ベアトリスはこういうことも出来るんだな」

「えへへ♪」


 アディルの言葉にベアトリスは嬉しそうに微笑んだ。その様子はとても幸せそうであり、アディルは何故か頬が赤くなるのを感じた。


「みんなもはい♪」


 ベアトリスはそう言うと全員にティーカップを渡していく。ベアトリスのお茶を飲んだ全員がほっとしたような表情が浮かぶ。やはり、おいしいお茶は気分を癒すには十分なのだろう。


「ベアトリスのお茶っておいしいわね」

「うん。上手な人が煎れるとこうも違うんだな」

「確かにそうね。だってこれって茶葉的には私が買ったやつだものね」


 エリスの言葉に全員が頷いた。エリスの買った茶葉は決して品質的に悪いものではないのだが高級品では決してないものなのだ。ところがベアトリスが煎れてみると同じ茶葉とは違ったものに感じられる。


「ねぇベアトリス、お茶の煎れ方を教えてくれない?」

「もちろん良いわよ♪」

「ありがとう♪」


 エリスの申し出をベアトリスは快諾する。少しずつベアトリスもアマテラスに馴染んできているようであった。


「ん? みんな、誰かがこっちに来るわ。数は二十ほど、距離はここから五㎞ほど後方よ」

「敵か?」

「そうね。全員が武装してるわ」

「まぁ敵と見て行動するとしよう」

「それが賢明ね」


 アディル達は戦闘モードに気持ちを切り替えるようなことはしない。この竜神帝国で自分達がか細い存在である事を知っている以上、一切気持ちを切るような事はないのだ。表面上の事を見れば緩みきっているようにみえても、決してそうではないのだ。


「それじゃあ、とりあえずこのまま行かせるとしようか」


 アディルはそう言うと式神の馬が馬車を引いていく。エリスはそれを見てから懐から取り出した符を地面に放ると二十体ほどの兵士が形成され、馬車の後について歩き出した。


 アディル達は状況がわかっているのだが、事情の分からない駒達はアディル達が出発したと思い、慌てて立ち上がるがアディル達がその場にいるのを見て戸惑いの表情を見せた。


「これから敵と思われる連中が来る。お前達は俺達の合図があった時に襲いかかれ。それまでは絶対に手出しをするな」


 アディルの言葉に駒達は身を震わせる。敵という単語もそうだが、アディル達の指揮能力が未知数なために恐れを抱くのは仕方のない事であろう。

 ただ、アディル達にしてみれば駒に対して何ら情を有しているわけではないので、いくらでも切り捨てることが出来ると思っているのである。


「全員近くの茂みに隠れていろ。気配を消しておけよ」


 アディルの命令が発せられると同時に駒達は一斉に動き出すと近くの茂みの中に入っていった。


「よし、それじゃあ俺達も隠れるとしよう」


 アディルの言葉を受けて今度はアマテラス達も茂みの中に入っていく。茂みに身を潜めた後でエリスが符を地面に放ると四体の見慣れない鎧を身につけた武者が顕現する。


「ねぇ、これって?」

「う~ん、実はよく知らないのよね。おじいちゃんからこの形で作れと云われてるのよ。何でもタモン、ジコク、コウモク、ゾウチョウというらしいのよ」

「時々、あんたもアディルも謎のものを生み出すわね」


 エリスの返答にアリスは苦笑混じりに云う。


(ねぇ……これって)

(アディル君と同じ系統ですな)

(これはエリスも手放せないわね)

(ですな)


 ベアトリスとジルドの言葉は小さく二人以外の誰の耳にも届かなかった。



やっと次回戦闘です

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