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閑話:朝の一幕

「一体何なんだ?」


 朝になってアディルは周囲を見渡しながら小さく呟いた。アディルを中心にヴェル、エリス、アリス、エスティル、ベアトリスが隣り合って寝ているのだ。アディルの両隣はヴェルとエスティルであり、その向こうにいる三人も静かに現在は寝息をたてている。

 ちなみにアディル達が寝ているのはエスティルの魔力によって形成されたコンテナの中である。テントという手もあったのだが、寝込みを教われる可能性を少しでも減らすためにエスティルが作ったのである。


 また、シュレイとアンジェリナはアディル達から離れた所で隣り合って寝ている。別に性的な感じはなく仲の良い兄妹のようであるが、それはアンジェリナの擬態にすぎないことはシュレイ以外の者はわかっている。


 ジルドは外で寝ると言うと、ベアトリスに何やら囁き出ていった。

 ベアトリスはやや顔を赤くしていたのだが、その時はアディルは内容を確認することはなぜか憚られたのである。


「ひょっとしてハニートラップというやつか? だが、俺にハニトラをかけるメリットが無いんだよな」


 アディルの呟きは小さく寝息をたてる仲間の少女達の眠りを妨げるものではない。それ故にアディルの疑問に誰も答えてはくれなかったのである。


「ハニトラをするようなみんなじゃないし、だからといって恥じらい無いというわけでもない。本当に何なんだ?」


 アディルは昨晩の様子を考えながら呟いた。昨晩の五人は誰がアディルの隣に寝るかでちょっとした競争が起こったのである。

 ただ、五人とも恥じらいを忘れているわけではなく、頬を染めてからの行動であったのだ。

 五人は恥ずかしいのだが、引くわけにはいかないという様子であり、アディルとすればまったく意味不明であったのだ。

 今までの旅で同じ所で寝るということはあったのだが、昨晩のようなアディルの両隣に誰が寝るかで揉めることは無かったのだ。


「ひょっとして、こいつら俺の事を? いや、ないない」


 アディルはひょっとしてこの五人が自分に対して惚れてるのではないかという考えを持ったのだが、すぐにそれを否定する。

 もちろん、アディルから見て五人は魅力に満ちすぎているのだが、だからこそその考えを否定したのである。


「でも、こいつらそんな軽い女じゃないからな」


 しかし、そうすると昨晩の五人の行為が所謂尻軽女ということになってしまうので、アディルはその考えを否定することになった。


 こうしてアディルは朝イチで、ぐるぐると思考のループにはまってしまうのであった。




 アディルが思考のループに嵌まってしばらくすると仲間達が起き始めた。


「ふわぁ~」

「アディルお早う♪ 早いのね」


 エリスとベアトリスがまず起きるとそれを皮切りに皆がおき始めたのだ。


「さ、顔を洗って食事にしましょう♪」


 ヴェルが大きく伸びをしながら言うと全員の視線がアンジェリナへと向かう。アンジェリナはシュレイに抱きついて体を密着させていたのだ。

 先程まで普通に寝ていたのに、いきなり抱擁と読んでも差し支えない過激なスキンシップに全員が呆けた表情を浮かべた。


「迂闊だったわ。みすみすチャンスを逃すなんて、一生の不覚だったわ」

「寝起きを装うだけでこうも大胆になれる。私はなんて甘いの」


 ヴェルとエスティルがアンジェリナの行動を見て、何やら悔しがっている。


(うん、触れるのは止めておこう)


 アディルは二人の呟きを聞こえなかったということにして起き出すことにした。


「おい、シュレイ起きろ」


 アディルはシュレイを起こす。これはアンジェリナへの挑戦であることは自覚しているのだが、このままではシュレイが(性的に)食われかねないので救いの手を差しのべたのだ。


「ふわぁぁ~ってアンジェリナ!!」

「ん、好き」

「こ、こら寝ぼけるな!!」


 シュレイは起きたときにアンジェリナの顔が目の前にあった事に大きく狼狽えたのである。


(((((やるわねアンジェリナ!!)))))


 アンジェリナの行動を見て女性陣がなにやら頷いているのをアディルは察するが、これまた触れないという選択肢を選んだ。


「ふわぁぁ~あ、兄さんお早うございます。すみません私ったら寝相が悪くて兄さんに抱きついちゃいました。嫌じゃなかったですか?」


 アンジェリナは寝ぼけ眼を擦りながらシュレイに謝罪するとシュレイは慌てて首を横に振った。


「だ、大丈夫だ。うん」

「良かった。明日からは気をつけますね♪」

「あ、ああ」

「さ、食事の用意をしますね」


 アンジェリナはにっこりと笑うと立ち上がった。


「みんなもお早う。アディルお早う(・・・)

「はいご免なさい」

「アディルったら寝ぼけてるの? お早うでしょ」

「ハイ。ソウデスネ」


 アディルはひきつった表情で返答した。中々、情けないがその事でアディルの評価が下がることは決してないだろう。


「何か朝から疲れたよ」


 アディルの小さな呟きは誰の耳にも届かなかった。

 何故か書いてしまった。反省はしていない。

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