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竜神帝国へ①

「お前……御伴がジルドさんだけなんだな」

「当然よ。護衛という観点ならジルドだけでも安心なのにみんながいるからね」


ベアトリスはそういうとニッコリ笑った。


「よろしくね♪」


次いでベアトリスは全員に視線を移すと言う。王女にこう言われれば、アディル達は止める段階はとうに過ぎてる事を察せられずにはいられない。


何しろ、今日これから竜神帝国へと出発する日なのだ。


「それにしても、この国こんなに王女の警護が甘くて良いのかしら……」


ヴェルの呟きを聞いたベアトリスはニヤリと笑う。


「何言ってるのよ。ヴェルだって次代のレムリス侯爵じゃない。立場ある身分という観点ならあなたも一緒よ」

「いや、全然同じじゃないわよ」

「細かいこといいっこなしよ」

「ハイハイ……もうどうにでもなれって感じよ」


ヴェルはどこか吹っ切れたように言う。ヴェルは一度腹を決めれは、あとからぶつぶついうことは絶対に言わない。この辺りはヴェルの美点と称して良いだろう。


「なんかすごいことになったな」

「ま、生きてればこんなことだってあるわな」

「ありえないレベルのことが起こってるんだけどな」

「シュレイ、ここまで来たら腹をくくれ。ベアトリスは王女だけど俺たちの仲間。はい復唱」

「お前、何やらせようとしてんだよ」

「悪質な洗脳」

「堂々と言うな」


 アディルとシュレイが軽口をたたきあう。一国の王女が同行、しかも向かうところは、仇敵との戦場という危険極まるところなのだ。にも拘わらずこれほどまでに軽口が叩けるのは既に覚悟が決まっているからであろう。


「じゃあ、そろったということで説明するわね」


 アリスがアディル達に向けて話し始めると、全員の視線がアリスに集中した。


「これから竜神帝国の国境沿いまで転移するわ」

「国境沿い?」

「竜神帝国は国境をぐるりと結界で覆っているのよ。よほどの熟練者でも破れるものじゃないわ。それに破れたとしても、魔術による追尾が行われるから余計面倒が増えるわ」

「なるほどね。私たちの敵はあくまでイルジード。官憲を敵に回してる余裕はないわね」

「そういうこと」


 エリスが納得したように言うとアリスもまたにっこりと笑って返答する。


「それから堂々と入国して帝都へと向かう。大体、一週間ほどの道のりよ」

「入国してから転移しないの?」


 アリスの計画にアンジェリナが首をかしげながら訪ねる。先ほどの話から考えて国境を越えれば転移可能と考えたからである。


「うん。私が堂々と戻ってくればイルジードは動くわよね?」

「つまり、自分をエサにして襲わせるということね。襲わせる目的は……宣戦布告のためで良い?」

「半分はその通りよ」

「もう半分は?」

「竜族との戦闘を早い段階で経験してほしいのよ」


 アリスの言葉にアンジェリナだけでなく全員が納得の表情を浮かべた。アディル達が知っている竜族はアリスだけであり、どのような強さかを確かめる必要があるのだ。


「どう? もし安全を優先するなら他の方法を提示するけど?」


 アリスは全員に向けて言う。


「煽ってくれるな」


 アディルがニヤリと笑って返答する。そのアディルの笑みを見たアリスもまた不敵な笑顔で返した。


「アリスの考えた心遣いだ。ありがたく受けさせてもらうぜ。みんなはどうだ?」

「私は良いわ。前もって竜族の力量を図っておくのは必要と思うわ」

「私もです。お嬢様の魔弾と魔術が竜族に通じるかを確認しておく必要があります」

「俺も賛成だ。指揮官レベルを始末できれば相手の戦力をそぐことができるからな」

「私も賛成、理由はシュレイと一緒ね」

「私も賛成よ。試したい暗器があるのよ」

傀儡(くぐつ)の新武装が効くか試しておかないとね」

「儂も大丈夫じゃよ」


 仲間たちの賛成を受けてアリスはにっこりと笑う。


「よし、それじゃあ決まりね♪」


 やる気に満ちているアディル達とは対称的に駒達の表情は強張っていた。


 

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