対毒竜戦⑥
「それじゃあ行くとしましょうか♪」
ベアトリスはにこやかに笑いながら魔法陣を展開させ、一体の傀儡を召喚する。
その傀儡は、銀色の髪に黒いドレスを纏っている美しい傀儡である。傀儡の名は黒の貴婦人という。
ベアトリスは指先から魔力の糸で黒の貴婦人と自分をつなげると黒の貴婦人の目が怪しく光った。
黒の貴婦人を見た毒竜のウルディーの顔が引きつった。
「そ、それは黒の貴婦人……まさか、貴様はベアトリス王女か?」
「ご名答♪」
ウルディーの問いかけにベアトリスはにっこりと返答すると黒の貴婦人の左腕がウルディーに向けて放たれた。
「くっ!!」
放たれた黒の貴婦人の左腕をウルディーはバックステップで躱すと腰に差した剣を抜き放った。
「甘い!!」
ベアトリスは簡潔に言うと指を高速で動かすと黒の貴婦人がウルディーへと襲い掛かった。ほぼ一瞬でウルディーとの間合いをつぶした黒の貴婦人の右拳がウルディーへと放たれる。
ウルディーは放たれた右拳を紙一重で躱すと黒の貴婦人へ斬撃を放つ。
ウルディーの斬撃が黒の貴婦人の胴体部に触れるがウルディーの剣は黒の貴婦人の体を切り裂くことはできない。
「な……斬れないだと!!」
ウルディーから驚きの声があがる。ウルディーは魔力を剣に通し強化しており、鉄であっても斬り裂くのはたやすいはずなのに黒の貴婦人に通じないのだ。
ウルディーの動揺をベアトリスは見逃すことなく攻撃に移る。黒の貴婦人の左腕はいつの間にか元あるところに戻っており、両腕となった黒の貴婦人の両拳の乱撃が放たれる。
「く、くそ……」
ウルディーは黒の貴婦人の連撃を捌きながらチラリとベアトリスを見る。確かに黒の貴婦人の放つ連撃は速度こそすさまじいものがあるが、傀儡の拳であり同じタイミング、リズムで放たれるため、躱しきれないというものではなかったのだ。
(いける。ここでベアトリスを人質にとればこの戦いは勝ちだ)
ウルディーは仲間たちの戦いに視線を向けると確実に毒竜が劣勢に立たされているのがわかった。
この劣勢を跳ね返すにはベアトリスを人質にとるしかないとウルディーが考えるのも当然であった。
ウルディーは黒の貴婦人の連撃を躱しジリジリと位置を変える。ウルディーの狙いはベアトリスとの距離を少しずつ詰め、一足飛びでベアトリスを捕らえることのできる距離への移動であった。
そして、ウルディーはついに狙った位置につき、ベアトリスをとらえるために行動に移そうとした瞬間、すさまじい衝撃がウルディーの背中に発した。
「が……」
ウルディーが振り返るとそこにはベアトリスが片足を挙げた状態で立っていたのである。ベアトリスの体勢を見たときにウルディーは何が起こったか察した。
「私が傀儡師だからって近接戦闘が出来ないと思うなんて……おバカさんね♪」
ベアトリスが憐れむような声をウルディーに投げかけるのと同時に黒の貴婦人の連撃がウルディーに叩き込まれた。
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴゴゴゴゴゴ!!
容赦なく叩き込まれた連撃にウルディーは宙に舞いながら自分の敗北を悟った。
「さ、おしまい」
ベアトリスは地に伏したウルディーを見下ろしながら勝利を宣言した。




