対毒竜戦④
アディルが毒竜の六人に斬りかかるとアマテラスの面々もそれに続いた。
ヴェルとアンジェリナはその場からバックステップしつつ、魔力の鏃と魔術を放った。アンジェリナの放った魔術は、火球だ。
放たれた火球は地面に着弾すると爆発を起こした。
毒竜の六人は散会した。その一瞬後にヴェルの鏃が散会した毒竜へと放たれる。
毒竜のメンバー達はそれぞれ武器を抜き放つとヴェルの鏃をそれぞれの武器で弾き飛ばした。
「ヴェル、アンジェリナ良くやってくれた」
アディルは振り返ることなく最適な行動を取ってくれた二人に礼を言う。二人の行動で毒竜の六人にダメージを与える事は出来なかったのだが、敵を分散させるという有り難い状況を作ってくれたのだ。
アディルは毒竜のリーダーであるロジャールへと狙いを絞った。
アディルが間合いに踏み込み斬撃を放つとロジャールは長剣を抜き放ちアディルの斬撃を受け止めた。
「このクソガキが」
「そう怒るなよ。あんたらがマヌケなだけだよ」
アディルはそう言うと鍔迫り合いから突如力を爆発させてロジャールの長剣を弾き飛ばした。
止まった状況からの突然の力の爆発にロジャールは驚きの表情が浮かんだ。
(な……なんだ今のは?)
ロジャールの背筋に冷たい汗が流れた。アディルが自分の長剣を弾き飛ばした技は自分の知るものと明らかに異なっていることを察したのだ。
戦いにおいて相手の技がまったく読めないという事ほど恐ろしい事はない。しかもこれは情報戦で大きく後れを取っていることを意味していたのだ。
「その顔は察したみたいだな」
アディルはロジャールに向かって静かに言い放った。
* * *
「それじゃあ、私達も始めるとしましょう。まずは自己紹介からさせてもらうわね。私はアリスティアよ。あなたとは格が違うからすぐ終わっちゃうけど自信無くさないようにしてね」
アリスの冷笑はその美貌と合わさることで清冽な美しさを見せていた。アリスが相対しているのは毒竜のエインである。
エインは二本のダガーを抜き放ちアリスを睨みつける。アリスの態度が気に入らないことこの上ないのだ。
「手足の腱を切って動けなくしてから犯してやる。あのクソガキの目の前で犯してやるぜ」
エインの言葉にアリスはまったく心乱された様子はない。アリスは空間に手を突っ込むと二本の双剣を抜き放った。
アリスの持つ双剣、右手に握られた銀色に美しく輝く剣を輝竜、左手に握られた黒曜石のように黒く輝く剣を闇竜という。
対称的な輝きを放つアリスの双剣にエインは見惚れてしまう。
その輝きがいかに危険なものであるかはエインも分かっているのであるが、アリスの美貌と相まって一種の宗教画のような神々しささえエインは感じていたのだ。
「まぁ、正直期待外れだったけど殺さないという事で動いているから命を奪うような事はしないわ。感謝なさい!!」
アリスがそう言った瞬間にエインの視界からアリスの姿がかき消えた。
(な……)
エインはあまりの事に頭がつい呆けた声を出した。そして次の瞬間にゾワリとした感覚を背後に感じた。
そして膝裏に激痛が走り、エインはその場に倒れ込んでしまう。
「は、はぁぁぁぁぁ!?」
(そ、そんな!! いつ!! いつ!! 背後をとられたんだ!? )
エインは意図せずに意味を成さない叫び声をあげていた。膝裏から温かい液体がエインの下半身を足を濡らしていたのだが、それが自分の血である事を察した瞬間に一気に恐怖がエインの心を覆い尽くした。
「やっぱりこんなもんよね」
アリスはため息をつきながらエインの脇腹を容赦なく蹴りつけると、エインの体は宙を舞い受け身を取ることもなく地面に叩きつけられ、数メートルを転がった。エインが止まった時にはエインの意識はすでになかった。
「はぁ……これ役に立つのかしら?」
アリスはそう呟きながら周囲を仲間達の戦いを確認するとすでに戦いが佳境に入っているのがわかった。
アリス……強すぎましたかね?




