対毒竜戦③
「う……う」
「ぐ……」
「い、いてぇよ……」
わずか三分ほどで毒竜一味のほとんどが地面に伏している。何人かの気絶できなかった不幸な者達のうめき声が聞こえていた。
「お疲れさん」
ヴェルに向けて家から出てきたアディルが声をかける。アディルの後にシュレイ、エリスも出てくる。
「まぁ、この程度なら心配するような事はないわね」
「だろうな」
「雑魚は狩り終えたから残りを始末するとしましょう」
「だな」
アディルがそう言った瞬間にアディルがナイフを投擲する。闇の中に放たれたナイフであったが、闇の向こうからこちらに近付いてくる足音が聞こえてくる。闇の向こうから現れた人影は六人。数、風格といい毒竜の六人であろう。
「あんた達が毒竜か?」
アディルが六人に向け言い放った。
「ああ、初めまして。俺達が毒竜だ」
一番前にいた長身の男がアディルに返答する。
「なるほどな。それであんたが答えたということは、あんたが毒竜のリーダーと言う事か?」
「ああ、俺が毒竜のリーダーであるロジャールだ」
「そうかロジャールさん……か。それでどうして俺達を殺しに来たんだ?」
アディルの問いかけはかなり意地の悪い質問だと言えるだろう。実際に毒竜に喧嘩を売ったのはアディル達であり、しかも自分達の駒にしようというかなり自分勝手な理由からである。
勿論、毒竜達はこの段階でその事を知らないために、アディルの問いかけに対して「お前等が喧嘩売ってきたんだろうが!!」という返しをする事は出来ない。
「別にお前達を狙ったわけじゃない。俺達の目的は灰色の猟犬と紅風だ」
「ほう、すると俺達は巻き込まれただけか」
アディルの返答は事情を知る者ならば「いや、お前ら主犯だろ」と即座にツッコミが入るレベルの詭弁であった。
「これは謝罪を要求するしかないな」
そこにシュレイが会話に割り込んできた。
「そうだな。どう考えても理不尽な襲撃だ。直接関係ない俺達を殺そうとするなんて非道い話だ。やはり謝罪ぐらいしてもらわなきゃな」
「ああ、さてロジャールさん、最凶の闇ギルドである毒竜はこの不始末をどうつけるつもりだ?」
アディルとシュレイがニヤリと嗤いながらロジャールに言い放った。
「別に謝罪するつもりなどないさ。俺達はムルグ達に用があってきた。そのお前らと一緒にいるお前らが悪い」
「あ、やっぱりそうか」
「仕方ないよな」
ロジャールの返答にアディルとシュレイは落胆した様子もなくロジャールへと返答する。
「お前達、何を企んでいる? 俺達を前にして、どうしてそこまで余裕なんだ?」
「当然だろう。お前らと戦っても勝てるのが分かってる。勝てる勝負を恐れるわけないだろう」
「ほう……随分と舐めた事を言ってくれるな」
ロジャールは一段声を低くして、殺気を放ちながら言う。一気に空気が張り詰めていくのだが、まったくアディル達は動揺する事はない。いや、むしろ拍子抜けしたような空気が流れた。
ロジャールの放つ殺気は確かに一流の実力者の放つ類のものであるが、アディル達にとってすればそれほどのものではない。ムルグ達レベルでは死を感じるものであろうが、アディル達からすればそれほどの相手ではない。
「あの……真面目にやってるの?」
アリスの問いかけに毒竜の面々は訝しがる表情を浮かべた。
「ねぇ、これって……慎重にやりすぎたかしら」
「うん……なんか失敗だった気がするわ」
エリスとヴェルもため息をつきつつ言う。
「ねぇ兄さん、私達って時間を無駄にしたわけですかね?」
「いや、そういうわけじゃないだろ。アルト達に出会えたんだからそれは無駄でなかったよ」
「そうですよね♪」
シュレイとアンジェリナの会話はもはや対毒竜戦に意義を見いだせなくなり、それ以外の出会いに意義を求めるものであった。
「はぁ、もう良いか。さっさとやるか」
アディルは天尽を抜き放つと毒竜へ殺気を放ち始める。アディルが殺気を放ち出すとアマテラスの面々も同じように殺気を放ち始めた。
「舐めんなよクソガキ共が」
ロジャールは苦虫を一億匹噛み潰したような表情と共に怒りの声を絞り出した。いや、他の毒竜のメンバー達も同様である。
「うんうん、そちらも良い感じで盛り上がってきたな」
アディルがそう言うとニヤリと笑う。アディルが構えをとろうとした瞬間にそれを制止する声がかかった。
アディルに声をかけたのはヴェルであった。
「アディル、待って。まだ来てないでしょ?」
「そうだな。もうそろそろ来るだろうな」
「その通りよ」
アディルとヴェルの会話にロジャールはギリッと歯ぎしりをする。アディル達の態度は自分達を虚仮にしているとしか思えなかったのだ。
「調子に乗るなよ。クソガキがぁぁぁ!!」
ロジャールの隣にいた男が激高する。アディル達は知らないが、男の名はアルメイスという。加虐趣味で、ビストの仲間を攫って拷問した男である。
「だから待てって」
アディルは出来ない子を窘めるように言うと毒竜の怒りのボルテージはさらに上がった。怒りは頭打ちであったと思われていたが、今度のアディルの言葉にさらに上がったのだ。
「お……来たな」
アディル達の後ろに魔法陣が展開されると三人の人物が転移してきた。
「あれ? もう終わりかけじゃない」
「本当だ。終わりかけだな」
「そうですかな? この六人がメインですよ」
「あ、そうなの?」
「へぇ~こいつらが毒竜か」
突如現れた三人の呑気な会話に毒竜は毒気を抜かれた表情を浮かべた。
「それじゃあ。狩るぞ」
アディルが言うと毒竜に斬りかかった。




