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邂逅⑤

「さてとそれじゃあ、本格的に今後の事を話し合おうじゃないか」

「だな」


 アディルが言うとアルトが簡潔に答える。


 アディルは二人が王族であっても口調を変えていない。アディルは別に礼儀を無視するのが素晴らしいと考えているのではない。今までの話の流れから二人は王族として来ているのではなく、アルト、ベアトリスとして来ているのだからそこを崩すつもりは無いのである。

 もし、他に人がいて気安く話すことで二人が不利益を被るなら、いくらでも礼儀作法を守るつもりであるのだ。


「それなら、俺達の残りの仲間と合流しようか」

「「「「え?」」」」


 アディルの言葉にヴェル達四人が驚きの声を上げた。アディルとすれば四人が驚く理由もわかるのだが、避けるわけにはいかないのだ。


「いや、みんなの意見も分かる……俺だってわざわざ虎の尾を踏むような事はしたくない。だが仕方ないだろう。俺達は仲間なんだから……あいつらをこの三人に引き合わせる必要もあるしな」

「う……そうだけど」

「タイミングが悪いというか……」

「いつもならともかく今のアンジェリナにそんな理屈が通じるかしら……」

「いざとなったら主人権限でヴェルに頑張ってもらうしかないわね」


 アリスの最後の言葉を受けて全員の視線がヴェルに集中する。するとヴェルはあからさまに頬を引きつらせた。流石に嫌すぎる役回りだと感じたのだろう。


「ねぇ、どうしてそこまで怖がってるの?」


 ベアトリスが首を傾げながらアディル達に尋ねる。ベアトリスとすればアディルの力量を見た後の事なので純粋に首を傾げざるを得ないのだ。


「まぁ恋路の邪魔は単に戦闘力が高くても勝利できるわけじゃないんだよ」


 アディルの言葉にアマテラスの面々は頷いた。戦闘力で言えばアンジェリナに後れをとるものは決していないと言えるが、ことシュレイが絡めばアンジェリナは凄まじい力を発揮するのだ。


「え!? 恋バナ!!」


 ベアトリスは目をキラキラとさせて声を上げる。ベアトリスのテンションが上がった事にアルトとジルドは小さくため息をついた。


「えらく食いつくな」

「だって恋バナよ!! これこそ乙女の嗜みよ!!」

「お、おう」


 ベアトリスのテンションに圧倒されたアディルがようやく声を絞り出した。


「王女殿下がどうしてそこまでテンション上げてるのかしら?」


 エリスの声は戸惑いに満ちている。エリスもアディルと同様に平民なので、王族というのは雲の上の存在であり、自分達平民とは違う人種と思っていたのに、年相応の反応を示している事に戸惑っているのである。


「何言ってるのよ!! 私だって乙女なのよ!! 恋の話に興味がないわけ無いじゃない!!」

「はぁ……」

「それに私の事も王女殿下なんて他人行儀名言い方は止めてちょうだい!! そうベアトリスでいいわ♪」

「いや、さすがにそれは……」


 ベアトリスの提案にエリスは顔を引きつらせた。流石に王族を呼び捨てするほどエリスの神経は図太いわけではないのだ。


「ええ、お願いよ♪」

「良いんじゃないか。本人からの提案だし」


 ベアトリスの援護射撃をアディルが行う。


「はぁ? アディル、あんた何言ってるかわかってるの?」

「ああ、ベアトリスに養ってもらってるなら絶対にやらないが、そういうわけじゃないからな。それに何も公式の場や他の人の目がなければいいんじゃないか」

「そうそう♪ アディルったら分かってるわね♪」

「う~ん……良いのかしら」


 エリスは首を傾げながら呟く。


「まぁ良いじゃない。ベアトリスが良いって言ってるんだから。それに甘えるとしましょ。私はアリスティアよ。アリスで良いわ」

「うん、よろしくね♪」


 アリスの申し出にベアトリスは嬉しそうに微笑んだ。


「私はエスティルよ。エスティルって呼んでね」

「うん♪」


 次いでエスティルが言うとベアトリスは声を弾ませて言う。ベアトリスはチラチラとエリスを見ながら期待を込めた視線を送る。それを見たエリスは少しの逡巡の後に意を決したように言った。


「あ~もう。分かったわよ!! 私はエリスよ。よろしくね、べ、ベアトリス!!」


 エリスの言葉にベアトリスはニッコリと頷き言う。


「うん、よろしくね。エリス♪」


 ベアトリスはそしてヴェルに視線を向ける。ヴェルとすればヴァトラス王国の貴族として王族への礼儀を欠かすことに大きな抵抗があるのだ。

 全員の視線がヴェルに注がれ、しかもベアトリスは期待に満ちた視線を向けている。


(これじゃあ……私だけ王女殿下と呼ぶわけにはいかないじゃない)


 ヴェルとすればもはや外堀を埋められているという状況であり、それに抗う事は出来ないのだ。その一方でベアトリスと呼んで距離を詰めたいという思いも確かにあった。つまり、ヴェル個人とすれば呼びたいという思いがあり、貴族としては呼ぶわけにはいかないという状況なのだ。


「分かったわよ……私の事もヴェルと呼んでね。ベアトリス」

「わかったわ、ヴェル♪」


 ヴェルの言葉にベアトリスは嬉しそうに言う。


「良かったですな。ベアトリス様」

「うん♪」


 ジルドの言葉にベアトリスは嬉しそうに返答する。


「何というか、羨ましそうだな」

「煩いな」


 アルトの返答は簡潔を極めていた。その反応にアディルはニヤリと笑って言葉を続けた。


「俺もあんたのことを呼び捨てで呼んでやろうか?」

「気持ち悪いな」

「うっせ」


 アディルとアルトのやり取りにジルドは顔を綻ばせながら見ている。


(良い関係を築いて欲しいものじゃな)


 ジルドは二人の教え子を見ながらそう思う。王族という重責を背負う二人の教え子にアディル達の存在が救いになる気がしたのだ。


(友人が出来るのは……諦めていたのだろうが、この機会を逃さんで欲しいな)


 ジルドとしてはそう願わざるを得ないのだ。




 この後、アディル達はシュレイ、アンジェリナと合流すると同じやり取りを行うのであった。


 アマテラスとヴァトラス王国の王族の共同戦線が成立したのであった。




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