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下部組織の受難:竜眼①

「さて、それじゃあ毒竜(ラステマ)を狩るとしよう」


 アディルの言葉にアマテラスの全員が頷くと立ち上がった。対毒竜(ラステマ)戦の火ぶたが切って落とされたのだ。


 現時点でアマテラスの存在は、毒竜(ラステマ)にほとんど認知されていない。あくまで灰色の猟犬(グレイハウンド)のおまけという位置づけである。それを利用しない手はないというのがアマテラスの共通認識である。

 毒竜(ラステマ)の意識は灰色の猟犬(グレイハウンド)へと向いているのは間違いない。アマテラスの存在は完全に認識外の事である以上、アディル達は自由に動けるというものである。


 アディル達の作戦はシンプルである。毒竜(ラステマ)の部下達から先に始末していき、最後に毒竜(ラステマ)を潰すというものである。もちろん“言うは易く行うは難し”というやつであるが、まともに戦うよりも遥かに良いと言う意見で一致していた。

 

「まずは竜眼(ドルグシア)からだな」

「うん」


 アディルの言葉にヴェルが簡潔に答える。既にアディル達は毒竜(ラステマ)の情報をムルグ達から得ている。その中で毒竜(ラステマ)の部下的な立場である竜眼(ドルグシア)の存在を知ったのである。

 竜眼(ドルグシア)は、毒竜(ラステマ)への情報提供を行っている闇ギルドである。一応、独立した闇ギルドであるが実際は下級組織である。


「アジトの場所は西区の貧民街で良かったよな?」

「ああ、間違いない」


 シュレイの問いかけにアディルが即座に返答する。アディル達は闇雲に“毒竜(ラステマ)を狩る”といって立ち上がったのではなく、得た情報の精査が終わったために行動に移したのである。

 情報源はアディルとエリスの作成した式神からもたらされたものである。アディルとエリスの式神は、自由な形へと変えることが出来る。その式神の特性を利用して王都中(・・・)に式神を放っていたのだ。


 アディル達が対毒竜(ラステマ)戦において、竜眼(ドルグシア)を最初の相手に選んだのはもちろん意味あっての事である。アディル達の作戦上、まずどうしても最初に戦う必要があったのだ。


 アディル達は西区の貧民街に向かってまっすぐ進む。貧民街は王都の暗部とも言うべきものである。ヴァトラス王国としても治安維持の関係上、貧民街の存在は喜ばしいものではないので、現国王のもとで様々な福祉政策が実施され貧民街の治安は良くなりつつある。

 貧困は急激に改善されると言う事はあり得ないので、長い時間がかかるのであるがそれでもその第一歩を踏み出しているというのは評価すべきであろう。


「何人かの人達の私達を見る視線に険が含まれ始めてるわね」

「どっちかというと私達を獲物とみている視線じゃない?」

「そうともいうわね」


 アリスとエスティルの会話は全員の共通認識であると言って良いだろう。アマテラスの女性陣に注がれる視線のほとんどは感歎であるのだが、貧民街に入ったと思われる所でアディル達に注がれる視線が一気に不愉快さを増したのである。刺々しさというよりも、ねっとりと纏わり付くような不快な視線であり、アディル達を獲物と見ているものという感じなのだ。


 自分達を獲物と見ているものがいるという認識によりアディル達の不快感と共に警戒感も増している。いつどこで襲われても対処できるように心構えだけはしている。


「みんなを誘拐しようとする可能性が高いからな。気を付けるんだぞ」


 アディルは女性陣へと注意を促すがその声にはやや熱量が欠けていると言える。


「何か真剣味が足りない感じがするんだけど?」


 ヴェルがアディルの声の熱量不足に対して疑問を呈する。ヴェルにしてみれば軽い扱いをされているようで少しばかり納得出来ないのである。


「そうね。私達のようなか弱い女の子をもう少し気遣うべきじゃ無いかしら?」


 そこにアリスも参加する。アマテラスの女性陣は実力者揃いであるために他者の声などからでも情報を仕入れるようにしているためにアディルの声に真剣味が足りないと言う事は即座に察する事が出来るのだ。


「まぁ、お前らの実力を考えれば誘拐なんかされるはずないから真剣味というのはどうしても欠けるな」


 アディルの苦笑混じりの返答にヴェルとアリスはすかさず抗議の声を上げる。


「わかんないわよ。私を攫うような猛者がいるかも知れないじゃ無い」

「私達だって女の子よ。もう少し心配すべきだと思うわ」


 二人の抗議に他の女性メンバー達もうんうんと頷く。正直な話、アディルの返答が実力を高く評価している事に対しては嬉しく思っているのだが、守って欲しいという欲求がヴェル達にもあるというのも事実なのである。


「大丈夫だ。そんな時があれば俺が助けてやるさ」


 アディルはサラリと抗議に返答した。その返答を聞き、女性メンバー達の機嫌はあっさりと上向きになった。ある意味、チョロいと言えるだろうが女性陣が待っていた言葉をもらったので納得したのは当然であったのだ。


(まぁ……このメンバーを攫うことの出来るような相手がどれ程居ることかな)


 アディルは心の中でそう呟いていたが意味ありげな視線を女性メンバーに向けると考えが読まれそうな感じだったので視線を向けるような事はしなかった。



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