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開戦④

(ローランはシュレイがあたったか……それなら……ん?)


 アディルはシュレイがローランにあたったことで周囲の傭兵達を蹴散らそうとするが、思いとどまった。一人の傭兵を天尽(あまつき)で斬り伏せたところでヴェル達のほうへと下がっていく。

 アディルが下がっているのは当然傭兵達と斬り結んでいる仲間達も気づいているのだが、何かしらの意図があると思ってそこにはふれなかった。


 アディルが下がった事で傭兵達と戦っているのはシュレイ、アルト、エリス、アリス、エスティルとなった。

 傭兵達と激しい戦いが行われている。一対一ならばそれほど手こずる相手ではないのだが、傭兵達は最初の斬り結びから、アマテラスの実力が決して侮ることの出来ない事をさっすると決して一対一で戦うということをしない。


(さすがは傭兵というべきね)


 エリスは三人の傭兵を同時に相手にしながらその思い切りの良さに感心していた。騎士などはいかに不利な戦いでも一対一にこだわったりする者がいるがエリスの戦闘思想に対する考えでは信じられない甘さに見えるのである。


 エリスは次々と自分に放たれる斬撃を紙一重で躱しながら、反撃の機会を待つ。次々と放たれる斬撃を躱し、一人が連続で斬撃を放てる限界点を見て、やや速度が落ちたところで攻撃に転じる。


 エリスは一人の傭兵の顔面に右拳を放つ。ゴシャリという音とともに傭兵の顔にめり込んだ。


 キィィィン!!


 エリスが傭兵の顔面に拳をたたき込んだ瞬間に他の傭兵がエリスの腹部に斬撃を放った。攻撃に転じた瞬間に生じた隙をつこうとした傭兵の判断は決して誤りではない。しかしエリスの対応力はその上をいっていた。腰に差した小太刀を抜いて受け止めるとそのまま、斬撃を放った傭兵へ前蹴りを放つとエリスの蹴りが鳩尾へと吸い込まれ傭兵はその場に昏倒する。


「な……」


 もう一人の傭兵が驚きの声を上げる。傭兵にしてみれば先ほどの斬撃により、勝負は決していたつもりであったのだろう。あの状況で斬撃を防げるなど想像の上を行っていたのである。


(よし!!)


 エリスは傭兵の動揺を見逃すことなく右上段蹴りを放つ。


 ゴガァ!!


 エリスの蹴りが傭兵の側頭部に入ると傭兵の膝ががくんと折れそのまま傭兵は崩れ落ちた。


「ま、こんなもんよね」


 エリスが仲間達に助太刀しようとしたところすでに仲間達が複数の相手のうち一人を斬り伏せている。それを見たエリスは助太刀を思いとどまった。アディルが下がった事の方を重視したのである。


「シュレイは……」


 エリスはシュレイとローランの戦いに目を向けるとそこでは激しい戦いが展開されていた。



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