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整える者達①

「とりあえず喧嘩を売ったと言う事で良いな」

「まったく、上手く立ち回れば楽に斃すことも可能だったんじゃない?」

「それじゃつまらないだろ」


 アディルの返答に仲間達は呆れたような表情を浮かべた。もちろん全員がアディルの言葉を額面通りに受け取っているわけではない。アディルがエルゼスに喧嘩を売った理由をほぼ全員が察していた。


 アディルは、エキュオール、エルゼスがハンター達を襲っているという事実を実は重く受け止めていたのである。ビオルの喉を衆人環視の中で斬り裂いた事から、エキュオール達を道徳、法律による制裁で縛ることは期待できない。言わば人間社会に入り込んだ猛獣のような存在だ。しかもなまじ知能があるのが余計に質が悪いというものである。


 そのような者が相手なのでアディルは、自分達が引き受けるために敢えて喧嘩を売ったのである。しかも、エルゼスに名乗ったのはアディルだけであった。アディルは自分が名乗ることでエルゼスに敵として印象づけたのだ。これは、仲間達を危険から遠ざけようという思いというよりも、仲間達を危険に断りもなくさらした事による責任感によるものが大きいのだ。


「まったく、水くさいわよ」


 アリスの言葉にアディルとすれば一瞬バツの悪そうな表情を浮かべるがすぐにそれを納めると惚けた表情を浮かべた。


「何の事だ?」

「私達を気遣う必要なんかないのよ。アディルは私達を助けてくれたんだから、私達だってアディルがやることを手助けしたいわ」

「……そうだな」


 アディルの返答にアリスはにっこりと微笑んだ。もちろん他の仲間達も同様である。


「ま、勝手に話を進めたからな。その責任ぐらいは取ろうと思ったんだよ」

「それが水くさいのよ。どのみち奴等と戦う事になったんだから開き直りましょ。変なところで気を遣わない!!」

「う……わかったよ」

「そうそう。アディルの背中はちゃんと私が守るからね♪」


 アリスの続けて放たれた言葉に女性陣がピクリと反応する。アリスの言葉は決して甘い雰囲気を発しているものではなかったが、それはアリスの真の意図とは大分異なるものである事を女性陣は察したのだ。


 アンジェリナとルーティアは興味深げにチラチラと他の女性陣に視線を送ると他の女性陣が何かを決意した表情を浮かべていたのを見てニンマリと笑った。



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