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エリスとの出会い③

「初めましてアディルといいます」

「ヴェルといいます」

「シュレイです」

「アンジェリナです」


 一通り相手の自己紹介が終わりアディル達も簡単に自己紹介を行う。アンジェリナが名乗った所でアディルがさらに続ける。


「俺達はたった今ハンターに登録したばかりで本当に経験ゼロです。皆さんの足を引っ張る事になるかも知れませんが一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」


 アディルがそう言うとヴェル達三人の頭を下げる。


「おい、オグラスどういうことだ? 確かにランクは問わないっていったけど、流石に経験ゼロはまずいだろ」


 灰色の猟犬(グレイハウンド)の一人であるネイスがオグラスに呆れた様に言う。ネイスは筋骨逞しい大男で巨大な盾と戦槌を背負っており一目でパワーファイターであると思わせる男だ。


「そう心配しなくて良いだろ。何と言っても俺達がいればフォローすれば良い話だ」


 ムルグがネイスの意見をやんわりと否定する。そこに、灰色の猟犬(グレイハウンド)の魔術師兼治癒術士のアグードが呆れを含んだ声を発した。


「まぁできる限りフォローはしますけどね。オグラス、あなたが連れてきたんですからちゃんとあなたがフォローするんですよ」

「わかってるよ。ヴェルちゃん、アンジェリナちゃん、お兄さんがきちんと守ってやるから安心してね」


 オグラスの返答にネイスがため息交じりに言う。


「まったく、お前のその軽薄な態度のせいで俺達も同類に見られるだろうが」

「何言ってるんだ。俺達は似た者同士じゃないか」

「どこがだ!!」


 ネイスとオグラスのやり取りに場の雰囲気が一気に和む。


(ムルグさんは楽観的、ネイスさんとアグードさんは現実的、オグラスさんは軽薄そうに見えるが一種のムードメーカ的な存在だな)


 アディルはそう灰色の猟犬(グレイハウンド)のメンバーを推測する。


「まったくあなた達は変わりませんね」


 そこにもう一つのチームのリーダーが苦笑しつつ言う。名をビストというゴールドランクの男だ。


「ははは、そう言うな。ビスト達も頼むぜ」

「任せて下さいよ。こちらにも良い目見せて下さいよ」

「ああ、報酬は弾むつもりさ」


 ムルグとビストはそう言うと笑い合う。 アディルは周囲を警戒しながらその様子を見ている。出来るだけ周囲の者達に気取られぬように注意しているとアディル達を見るハンターの目に嫌悪感が含んでいる者がいることに気づく。


(俺達に敵意……違うな。灰色の猟犬(グレイハウンド)への嫌悪感か?)


 アディルは嫌悪感の対象が最初は自分達に向いていると考えたのだがすぐにその考えを改める。嫌悪感を持っている者の視線は灰色の猟犬(グレイハウンド)に向かっている事にアディルは気づいたのだ。


(こっちもか……)


 アディルは次いでエリスが灰色の猟犬(グレイハウンド)を見る目が気になっていた。嫌悪感だけでなく、監視をしているような視線を向けていた。エリスはあからさまにそれを見せるような事はせず、細心の注意で隠している。アディルが気づいたのはたまたまと言えるかも知れない。


(エリスも一癖ありそうだな)


 アディルはエリスに注意することにした。エリスと灰色の猟犬(グレイハウンド)が正しいかを考えるのではなくどちらがアディル達の敵になるかを考えているのである。


「それではムルグさん。出発の日時と集合場所を教えていただけますか? とりあえず食料品などを買い込みたいので失礼したいのですが……」


 アディルがそう言うとムルグは少し考え込むと口を開く。


「そうだね。すまないが出発は明日にさせてもらうよ。場所はここギルド本部、時間は午前八時でよろしく」

「はい、わかりました」


 アディルはニッコリと笑って返答すると仲間達に視線を向けると灰色の猟犬(グレイハウンド)達に頭を下げると歩き出した。その際にアディルの懐から一枚の紙切れがこぼれ落ちるが、それはすぐに粉々となり誰の目にもとまらなかった。


「あ、私も武器のメンテナンスが終わってる頃だからちょっと席を外させてもらうわね」


 エリスも灰色の猟犬(グレイハウンド)達に笑いかけると歩き出した。アディル達とエリスがギルドを出て行ったところで、灰色の猟犬(グレイハウンド)の面々の雰囲気がガラリと変わる。


「見てくれの良い女が三匹、冴えないガキが二匹……楽勝だな」


 ネイスの言葉にムルグがニヤリと嗤う。見る者の不快感を刺激する嗤顔(えがお)であり、先程までの人の良さそうな笑顔とはまったくの別ものである。いや、仲間内で晒すこの笑顔の方がムルグの本質により近いモノなのだろう。


「あの今日ハンターに成り立てのガキ共の持っている武器はかなりの値打ちものだ。おそらく良いところのお坊ちゃん、嬢ちゃんなんだろうさ」

「そいつは世の中の厳しさを教えてやらねえとな」


 ムルグの嘲りの言葉にネイスがニヤニヤと嗤いながら返答する。


「女達は俺達で楽しむとしてガキ二人はどうする?」


 オグラスの言うどうするとは、殺す殺さないではない。いつ殺すかという事である。


「まったく……あのガキ共の目の前で楽しむに決まってるじゃないですか。前回は順番が逆だったし、あれはあれで楽しかったですけど、今回は趣旨を変えましょうよ」

「そりゃいいな」

「俺達も忘れないで下さいよ」

「わかってるって」


 灰色の猟犬(グレイハウンド)達はそう言うと不快な含み笑いを浮かべていた。しかし、表面上は真っ当な事を言っているようにアグードが偽音(フェイク)を周囲に張っており、外部には当たり障りのない会話として聞こえていたのだ。


「いずれにせよ。明日は楽しもうぜ」


 ムルグの言葉に灰色の猟犬(グレイハウンド)達はニヤリと嗤った。だが彼らは自分達が誰に喧嘩を売ったかをこの時点では誰も気づいていなかったのだ。


 そう……これから始まる苦難の旅路を灰色の猟犬(グレイハウンド)達は歩み始めたのである。



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