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竜神探闘⑱

 キィィィン!!


 シュレイの剣とルーティアの大剣が打ち交わされる。


「うぉ!!」


 ただの一合撃ち合っただけでシュレイが体をよろけさせた。ルーティアの容姿は可憐な美少女のそれであるのだが、振り回す大剣の斬撃をシュレイは上手く逸らす事が出来ずによろけてしまったのだ。これはルーティアの膂力と剣速がシュレイの想定したものよりも遙かに上回っていたからであった。


(まともに打ち合えば俺の剣が持たないな……というよりも魔力を通して強化しなかったら今の一撃で剣が折れてたな)


 シュレイはルーティアの実力の高さを想定よりも一段階引き上げると剣に通す魔力の量を増した。


(アディルなら力を相殺する技術を持っているんだろうけどな……)


 シュレイはかつてアディルが毒竜(ラステマ)のロジャールの斬撃を音もなく受け止めた技術を思い出していた。シュレイは他者の技術を見て自分のものとする事に対して余念がない。むしろ趣味としているといっても過言ではない。


「てぇい!!」


 ルーティアは左袈裟斬り、そのまま返す刀でシュレイの右足へと斬撃を放つ。相当な重さのはずなのにルーティアは軽々と振り回している。


(参ったな。単にぶん回してるだけじゃない。この()の剣術の腕前はすごいな)


 シュレイはルーティアの膂力、剣速のみでなく剣の操作に対しても超一流の腕前を持っていることに感歎するしかない。


 ルーティアの大剣が振り下ろされるとシュレイはその斬撃を体を横に逸らしつつ躱すとそのまま大剣に向けて自分の剣を一気に振り下ろした。


 キィィィィィン!!


 シュレイの剣がルーティアの大剣を真っ二つに斬ると斬り飛ばされた剣の半分がその場に落ちる。自分の大剣が斬り落とされた事にルーティアの顔に驚きの表情が浮かんだ。シュレイはその隙を逃すことなく袖口に仕込んでいた鉄鎖を取り出すとそのまま放つ。


 シュレイの放った鉄鎖はルーティアの左手首に巻き付いた。


(よし!!)


 シュレイはここでエリスから教わった衝撃を伝える技術を使用して肩甲骨を動かして生じさせた力を鉄鎖を通じてルーティアに送り込む。


「え?」


 ルーティアの左手首が僅かながら動きそれに曳かれるように体が少しだけ傾く。エリスの完成された技術であればルーティアの体は大きく揺らされ、次の攻撃に繋げる事が出来たことだろう。だが、シュレイの未熟な技術では次の攻撃に繋げるほどルーティアの態勢を崩すことは出来ない。


(何、今の!?)


 しかし、ルーティアに与えた衝撃は決して小さいものではない。単なる膂力でない未知の力に態勢を崩された事に脅威を感じずにはいられなかったのだ。それもその前の自分の大剣を斬り落としてシュレイの技量の高さを確認した事がさらに未知の力について過大な評価を与えたのだ。


 キシィィン!!


 ルーティアは残った大剣で鉄鎖を断つと一旦距離をとった。距離をとったところで手首に巻き付いた鎖を振り落とすとシュレイへ視線を向ける。


「一体何なのかしらね」

「何が?」

「もう、さっきの巻き付いた鉄鎖よ。あれは何? 体が突然よろけたわ」

「降参したら教えてやるよ」


 シュレイの返答にルーティアは気を悪くした様子もなく苦笑を浮かべた。元々、シュレイが素直に話すとは思っていない。ルーティアがそう言ったのは単に戦いの流れを切るためでしかないのだ。


「魅力的な提案だけどそういうわけにはいかないのよね。そうそう、私の大剣を斬り落とすなんて並の腕前じゃないわね」

「だろ? もっと褒めてくれても良いんだぞ。ちなみに恋人募集中だから惚れても構わんぞ」

「あらら、確かにあなたっていい男だけどそう簡単に私が靡くと思われたら困るわね」


 シュレイとルーティアは軽口をたたき合いながら互いに次の攻撃の取っ掛かりを探っている。


(私だけ驚かされるというのも癪だし、やってみるか)


 ルーティアはそう心の中で呟くと先半分が斬り落とされた大剣をシュレイに向けた。


「ん?」


 シュレイが向けられた大剣に視線を向けると残った剣身の部分がドロリと溶け出すと地面に落ちた。


「私の剣の名は魔剣セイルウェイズ……。有する能力は液体を刃とするのよ……こんなふうにね」


 ルーティアは左手に水の塊を発生させると右手に握る柄の方に水が集まって行くと大剣の形へと変わっていった。水が剣となったことで澄んだ剣が形成されている。


「なるほど……水の刃か」


 シュレイが呟いた瞬間にルーティアが動いた。

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