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竜神探闘⑧

 アリスが転移した先はイルジードの本陣から百メートル程後方の場所である。やや高台にあったその場所からは、アディル達がかなり攻め込まれている現状が見て取れる。


「みんな無事みたいね」


 アリスの言葉が弾んでいるのは、アディル達が健在でそれぞれ戦っている姿が見えたからである。ちなみにここで言う無事の中に駒達は含まれていないのは確実である。闇の竜騎兵(イベルドラグール)によって駒達は壊滅的な損害を受けており、かなりの数の駒達が転がっているのだ。


「さてイルジード……決着をつけましょう」


 アリスはイルジードへ一瞬だけ視線を向けると毒竜(ラステマ)の六人へと視線を走らせ言う。


「仕事よ……あんた達はこれからイルジードの本陣へと突っ込みなさい」

「え……そんな……」


 アリスの命令にロジャールは顔を引きつらせた。他の五人も同様である。竜族の凄まじい戦闘力を見ていた毒竜(ラステマ)とすればアリスの命令は死ねと言っているに等しいものだ。


「あんた達に別にイルジードを討てといっているわけではないわ。私だって悪魔じゃないから無駄に命を散らせなんて言ってないわよ」


 アリスの言葉に毒竜(ラステマ)の六人から困惑の空気が発せられた。表面上には呪血命(まじないのちのみこと)のために出せないが、心中では激しいツッコミが入っているのは間違いないだろう。


「あんた達の役目はイルジードの周囲の兵士達四人の排除よ。しかも斃す必要もない。イルジードから引き離せば良いのよ」

「しかし……」

「この程度の仕事が出来ない役立たずなら生かしておく理由もないけど?」

「ひぃ!!」


 アリスの言葉に毒竜(ラステマ)達から明らかに恐怖の声があがった。今までのアディル達の駒への扱いから冗談ではないことは骨の髄まで知っているのだ。


「まぁ、これ以上あんた達の覚悟が決まるのを待つほど暇じゃないわ。さっさと突っ込んでちょうだい」

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」


 アリスの命令に毒竜(ラステマ)の六人は咆哮を上げて突っ込んでいく。


「そうそう。頑張ってね」


 アリスの言葉にはまったく毒竜(ラステマ)への期待が微塵も含まれていない。アリスの目的は毒竜(ラステマ)が突っ込んだ段階でほぼ達成できているのだ。迎撃のために確実に兵士達がイルジードから離れるのは間違いない。


「さて……いくか」


 アリスはニヤリと嗤うとイルジードに向けて走り出す。


「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」


 前を走る毒竜(ラステマ)の六人の陰に隠れながらアリスは走る。イルジード陣営の兵士達が毒竜(ラステマ)の突撃に即座に気づくと迎撃のために動き出した。毒竜(ラステマ)が人間であることに気づいた兵士達は四人のうち半分の二人が迎撃に出た。


(あらら、四人迎撃が理想だったけど……まぁいいわ)


 アリスは二人がイルジードの側に残った事に対してもさほど困ったと思っていない。わずか数秒ほどの時間しかないが、アリスはその二人を排除する事を選択する。


 毒竜(ラステマ)と二人の兵士が斬り結んだ瞬間にアリスはその間隙を縫って走り抜ける。


「な」

「あれは……」


 アリスとすれ違った兵士がアリスに気づくと動揺の気配を発した。もしこの時にアリスに動揺させられなければ毒竜(ラステマ)の半数は最初の剣戟により斬り伏せられていたかもしれない。結果的にアリスの行動が毒竜(ラステマ)の六人の命を救ったと言えるかも知れない。それが結論を先延ばしにする行為かもしれないがこの時点ではアリスが救ったと言える。


 アリスは二人の兵士をやり過ごすとそのままイルジードへと走る。アリスが向かってくる事に気づいた二人の兵士がアリスに迎撃に動く。


(勝機は一瞬……)


 アリスは迎撃の二人の兵士に向かって最小限度の動きで向かう。必要以上に時間をかければその隙をついてイルジードが動く可能性がある。そうなれば初手をイルジードに取られることになるために流れを取り戻すには大きな労力を要することになる。


 兵士が槍を突き出してくるのを最小限度で躱すと同時に懐に跳び込むとすれ違い様に腹部を斬り裂いた。もう一人の兵士が驚きの表情を浮かべたのはアリスの動きが経死の想定を大いに上回っていたからであろう。


(いける!!)


 アリスはそのまま兵士の背後に回り込むと容赦なく兵士の背中を切りつけた。鮮血が舞い背中を斬られた兵士はそのまま崩れ落ちた。


「こんにちは叔父様……お祈りの時間は済んでますか? まだなら待ってあげますよ」


 アリスの不敵な言い分にイルジードはニヤリと嗤う。兵士二人を斬り伏せた時の隙を無くすための言葉かけであったが、どうやら上手くいったようである。


「随分と殊勝げな言葉をはくじゃないか」

「これから死ぬ叔父様に対して私も少しぐらい優しくしないといけないなと思っただけですよ。まぁ完全な義務感というやつです」

「死ぬのはお前だろう。私に勝てると思っているのか?」

「あらあら、お父様に勝てないからってお母様を人質に取った男の言葉とは思えないわね」

「……ほう、知っていたか」


 イルジードは目を細めてアリスに言う。その声には暗い響きがある。


「あら? 本当にそうなのね。次点にお父様に一服盛って斬りつけたと思ってけどね」

「勝てば良いと思わないか?」

「その点については否定しないわ。でも高潔なことじゃないわよね。お父様は弟と言う事で情があったのでしょうね。でも私はあんたがいかに品性下劣なクズということを知ってるから驚きはしないけどね」

「お前は昔から礼儀のなってない娘だったよ」

「あんたに礼儀を守る意義がどうしても見つからなかったのよね」


 アリスの言葉にイルジードはヒクリと片頬を引きつらせた。


「さて、お祈りは終わったみたいね。決着をつけるとしましょう」

「クソガキが……」

「いい顔になったじゃない。その顔が見たかったのよ」

「斬り刻んでやる」

「あんたごときに出来るのかしら?」


 アリスはそう言うとイルジードに斬りかかった。

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