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竜神探闘⑥

 川をはさんで両陣営が睨み合う。フォルデシルを討たれた剛竜(ヴァスダイム)は一種の恐慌状態に陥り大きな損害を出したのだが、何とか全滅する事なく川を渡り難を逃れたものが半分ほどであった。


 アディル達は追撃を行う状況ではないという考えから追撃を見送ったのである。


「困ったな、一箇所に固まると魔術の攻撃……分散して配置すると突進を止められない」

「確かにそうね」

「普通の軍隊でならとっくに退却なんだがな」

「私達はそれはしない……でしょ?」

「ああ、俺達と駒の関係を正しく把握してない事が救いだな」

「普通に考えれば非人道的な関係だものね」

「ああ、心が痛むな」


 アディルの言葉にエリスは苦笑を浮かべる。まったく心のこもってない声にエリスとすれば笑うしかない。


「まぁそんなことより、式神を増やすとするか。灰色の猟犬(グレイハウンド)ぐらいの強さなら二十は作れるな。エリスは?」

「私の方も灰色の猟犬(グレイハウンド)レベルで良いなら三十はいけるわね」

「あの四体レベルを同時にやるのはやっぱり厳しいか?」

「うん。現状ではこれで限界ね。これ以上の数は私のコントロールを離れるわ」

「そっか……なら合わせて五十……時間稼ぎには十分だな」

「騙し騙しという状況は動かないわよ」

あちら(・・・)に期待するとしようぜ」

「うん」


 アディルとエリスが会話を終えるとウルグ率いる闇の竜騎兵(イベルドラグール)

が隊列を組み一斉に突進してきた。

 さすがに本隊の突進は凄まじい圧力であり、鉄の津波を思わせた。


「それじゃあ出るか。エリス行くぞ」

「了解♪」

「みんなは支援をよろしくな!!」

「「「了解!!」」」


 アディルの言葉に仲間達が応えるとアディルとエリスが走り出した。


「油断せんでくれよ。陛下に怒られるでな」

(なんで国王陛下が? まぁその辺は後で確認っと)


 一拍後れてジルドが声をかける。ジルドの言葉にややアディルは内心首を捻るがアディルは一旦置いておくことにする。


 鉄の津波に身を晒すことになる駒達の中には恐怖のあまり失禁するものがいたが、それを笑うには闇の竜騎兵(イベルドラグール)の与える圧力が強烈すぎた。


 アディルとエリスは懐から取り出した符を地面に放り式神達を作成する。現れた五十の式神は即座に隊列を組むと槍衾を形成し、一斉に突撃を行う。


「何!?」


 突如現れた槍衾にウルグ達本隊の中から驚きの声があがるがすぐに気を取り直すと速度を緩めることなく突進していく。


「突撃せよ!! 粉砕してやれ!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

『突撃!!』


 闇の竜騎兵(イベルドラグール)は咆哮を上げ大地と大気を振るわせながら突撃してきた。


 ヒュウウウウウウウウウ!!


 そこに先程同様に火球が数発打ち込まれ着弾すると炎が巻き起こった。しかし、式神達は全く隊列を崩すことなく槍衾を形成したまま突っ込んでいく。

 そして式神達が形成する槍衾と闇の竜騎兵(イベルドラグール)が激突した。


 ドゴォォォォ!!


 式神達の槍衾は闇の竜騎兵(イベルドラグ―ル)の突貫力を防ぎきることは出来ずに蹴散らされていく。


「しゃあああああああああああ!!」

「殺せぇぇぇぇえ!!」


 闇の竜騎兵(イベルドラグール)達の咆哮が式神達を呑み込んでいくようであった。だが、闇の竜騎兵(イベルドラグール)達も無傷というわけにはいかない。局所的ではあるが式神の槍が闇の竜騎兵(イベルドラグール)を刺し貫き、落竜する者がいたのは事実である。


 エリスは懐から符を取り出し再び放ると式神が再び作成され、闇の竜騎兵(イベルドラグール)へと襲いかかった。一列目の槍衾を突破し、もはやアリスまで一直線と思っていた所に新たな相手が現れたのだ。一度目の突撃ほどの勢いがすでに削がれており、この状況ならば十分に勝負になる。


「かかれ!!」


 アディルの命令に駒達も乱戦の中に跳び込んでいく。それと同時にアディルとエリスも乱戦の中に跳び込んだ。


 乱戦になった事でアディル達と闇の竜騎兵(イベルドラグール)が混ざり合い。激烈な戦闘が展開されていた。



 * * *


「ち……。こう混ざれば魔術による支援は出来ん」


 魔竜(フルドダイム)の隊長であるエーベントは舌打ちしつつ、ウルグ率いる本隊とアディル達との乱戦を見ている。


「隊長、どうしますか?」

「こちらも川を渡る」

「了解です」


 エーベントの言葉に部下達は即座に返答する。相手の大部分が人間であるという状況とウルグ率いる本隊が圧倒的に相手を押しているという状況が川を渡ることを躊躇させなかったのである。


 魔竜(フルドダイム)は悠々と川を渡り味方のいない後衛に向かって魔術を放った。


 放たれた魔術は雷撃(ライトニング)と呼ばれる雷撃である。魔竜(フルドダイム)の動きを察知していた後衛は即座に防御陣を形成し魔竜(フルドダイム)雷撃(ライトニング)を防ぎきった。


「ほう……少しはやるではないか」


 エーベントの嘲りの言葉が発せられた。するとヴェルとアンジェリナが即座に報復の魔術を放ってきた。乱戦の外から魔術を討ってきたということは逆に言えばヴェルとアンジェリナの方も気兼ねなく魔術を放てるというものである。


 アンジェリナの放った火球が四発、エーベント達に放たれる。エーベント達は即座に防御陣を形成し放たれた四つの火球に備える。

 アンジェリナの放った火球はエーベント達の防御壁に直撃すると大爆発を起こしたが、エーベント達の防御陣を破る事は出来なかったのだ。


「面白い。人間にしては中々の腕前だ。あの連中に格の違いを見せてやれ!!」

「はっ!!」


 エーベントの命令に魔竜(フルドダイム)はニヤリと嗤うとヴェルとアンジェリナへと狙いを定めた。



 *  *  *


「隊長~俺達はこのままですかい?」


 アルゼストがシーファスに尋ねる。戦いは苛烈さを増し、血と絶叫を撒き散らしながら斃れていっている。


「まだだ……。もう少しでアリスティアの周りに誰もいなくなる。その時が我らの動くときだ」


 シーファスの言葉にアルゼストは少しばかり不満げな表情を浮かべたが、異を唱えるまではいかない。シーファスの判断に信頼を置いている証拠である。


(あの二人の魔術師がエーベント達にかかり切りになればアリスティアを討てる)


 シーファスはその機会をじっと待っており敵陣営に目を向けている。シーファスの目にはヴェルとアンジェリナが魔竜(フルドダイム)達への意識を集中しているのを察すると部下達に向け言い放った。


「よし……いくぞ」

「待ってました!! 行くぞお前ら!!」


 シーファスの命令が発せられると同時にアルゼストが部下達に檄を飛ばすと部下達はニヤリと頷いた。


 影竜(ズールダイム)の足元に魔法陣が展開され、シーファス達影竜(ズールダイム)達の姿が消えた。



 *  *  *


「これで役目は取りあえず果たせたわね」

「そうですな」

「ヴェルとアンジェリナがあの魔術部隊……アディル、エリスが本隊……そして私達があいつらね」

「はい。アリスさんの従兄妹達の動向は気になりますが、これで当初の予定通りですな」

「そうね。多分、案山子(・・・)を狙うことでしょうからその時に数体やれるわよね」

「初手を間違えると面倒なりますから本気でいくとしましょう」


 ジルドはそう告げるとさりげなくベアトリスの後ろに立つ。ベアトリスも同様にこくりと頷くと同時に白の弓神(フィンファリス)を操作し矢を番えるとそのままアディル達が戦う乱戦の中に矢を射放った。

 放たれた矢は一直線に竜上で斧槍(ハルバート)を振るう兵士の首を射貫いた。射貫かれた兵士はそのまま落竜していく。おそらく自分がやられた事を理解することもなくその命を終えていることであろう。


「流石ですな」

「ジルドだって出来るでしょ」

「いやいや、寄る年波には勝てぬというやつですよ」

「嘘ばっかり」


 ベアトリスが苦笑混じりに言ったところで背後から何者かが駆けてくるのを察した。


「来ましたな」

「うん」


 ベアトリスとジルドはそう言うと背後から襲いかかってきた二人の敵の斬撃を躱した。頭部の角が襲いかかってきた兵士二人が竜族である事を物語っていた。斬撃を躱された竜族はジルドとベアトリスを無視してアリスに襲いかかる。


「アリス逃げて!! シュレイ!! エスティルはアリスを守って!!」


 ベアトリスが叫ぶとアリスに向かっていった四人の竜族が襲いかかった。


 シュレイ、エスティルは剣を抜き襲いかかってきた二人の竜族と斬り結ぶが四人がそのままアリスへと襲いかかる。


「さようなら……」


 ベアトリスが皮肉気に嗤うとベアトリスの指先に小さな魔法陣が浮かび上がる。浮かび上がった魔法陣が光を発すると同時にアリス、シュレイ、エスティルが突如光を放ち爆発した。


 ドゴォォォォォォォォォ!!


 三人の爆発に巻き込まれた計六体の竜族が地面に落ちる。すでに事切れているのは明らかである。後に続こうとしていた竜族に白の弓神(フィンファリス)の矢が放たれ喉を射貫くとそのまま崩れ落ちた。


「七……上出来ですな」

「うん」


 ジルドの言葉にベアトリスは満足気に答える。


「残りは六ね。大物が残ってるけど半分始末できたことは幸運と見るべきよね」


 ベアトリスが背後から現れた竜族達に微笑を向ける。


「一体どういうことだ?」


 シーファスが呆然としつつ二人に尋ねるとベアトリスはニッコリと嗤っていう。


「ああ、分かってると思うけど今爆発したのはアリスじゃないわよ。もちろん他の二人もね」

「アリスティアはどこだ?」

「ここにはいないわよ」

「どこに……」


 シーファスはそこで気づいたかのようにイルジードがいると思われる場所へ視線を向けた。


「あ、わかっちゃった? あんた達は罠に掛かったのよ」


 ベアトリスの言葉にシーファスはゴクリと喉をならした。




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