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雄大が社長決済を得るために書類を持って社長室へ赴くと、中では秘書の藤原が一人で仕事をしていた。

藤原はモニターから視線を外して雄大を確認すると、立ち上がって言う。


「社長なら先程外出されましたよ。」


「外出?珍しい。どこへ?」


何の気なしに聞いただけなのに、予想外の答えが返ってくる。


「パン屋minamiです。」


「は?何で?」


驚きのあまり思わず声が裏返ってしまい、雄大は口元をおさえた。

社長がminamiへ行く用事とは何かと考える。

と、すぐに先日杏奈と共に社長室へ呼ばれたことを思い出した。


───きちんと確認させてもらう


社長の言葉が鮮明によみがえり、雄大は反射的に社長室を飛び出していた。


「まさか直接琴葉に会いに行ったのか?」


雄大は小さく舌打ちをすると、そのまま会社を出てminamiへ急いだ。


琴葉のことが心配でたまらない。

何か嫌なことを言われていないだろうか。

泣いていないだろうか。

想像すればするほど妙な怒りが込み上げてきて、雄大は余計苛立った。

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