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とても聞きづらい質問だったのだろう。

綾菜の顔からは笑顔が消えていた。

けれど聞いておかなければという強い意思も見える。


琴葉は一度深呼吸をしてから、静かに口を開いた。


「綾菜さん、さっき素敵なお店って言ってくださいましたよね。私も本当に素敵なお店だと思うんです。」


質問に対する答えになっておらず、綾菜はどうすべきか迷って口をつぐんだ。

すると琴葉はにこりと笑って続ける。


「このパン屋minamiは、早瀬設計事務所にデザインをお願いしたんですよ。」


「え?」


思いもよらぬ情報に、綾菜は驚いて声を上げた。

早瀬設計事務所は基本的に個人の案件を受けないからだ。

ただ、綾菜は早瀬設計事務所の社長の娘ではあるが社員ではないので、詳しいことはわからない。

不思議そうな顔をする綾菜に、琴葉は言った。


「どういう繋がりかは知りませんが、父が依頼したことは間違いないです。暖かみがあっておしゃれで、でもこの地域の風景に溶け込んでいる。私、このお店が大好きです。人を優しい気持ちにさせてくれるデザイン。雄大さんはそんな素敵な会社でお仕事をされてるんですね。」


「琴葉ちゃん。」


「両親の事故は不慮の事故です。恨んでいるかと聞かれれば、うーんどうでしょう。よくわからないです。あまり考えたことがありません。経営状況は正直あまりよろしくないです。だけどそれは私の力不足ですし、それでもminamiのパンを食べたいって仰ってくれるお客様のために、これからもパンを焼き続けたいです。」


キラキラとした瞳で語る琴葉に、綾菜は胸を打たれて自分を恥じた。

少しでも琴葉を疑ったことが申し訳なくて、頭をブンブンと振る。

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