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四章◆それは誇り◆

雄大が受け取ってくれなかった昼間買ったminamiのパンが入った紙袋を、杏奈は忌々しげに見つめた。

確かにここのパンは美味しいし、店員の対応も悪くない。

けれど雄大が夢中になるような彼女だとは、どうしても納得できなかった。

いつ行ってもにこやかに対応する、いい子を絵に描いたような琴葉。


「そういえば、いつ行ってもあの子しかいないわね。」


ふと思い浮かんだ事を口にする。

朝の出勤前に行っても昼休みに行っても、店員は琴葉しかいない。むしろ他の店員を見たことがない。

奥にパンを焼く人がいるような気配も全く感じたことがなかった。


「まさか一人でお店を?」


そう思ったところで杏奈は何かに気付いてハッとした。


会社の過去の重大インシデントがまとめられた資料をパソコンのフォルダから引っ張り出して数年前のものを調べる。

と、クレーン車の横転事故が出てきた。

さらにそれをインターネットで調べる。

小さなインシデントなら社外に情報が出ることは少ないが、重大インシデントの場合は違う。

しかもそれは死亡事故という大変ショッキングな出来事だ。

当時大々的に報じられ、まだその情報がたくさんネット上の記事になって存在していた。


「あの事故で亡くなった夫婦の娘…?」


インターネット上には、調べれば調べるほど真実なのかどうなのか、あらん情報がたくさん出てくる。

そこから派生して、【小さなパン屋minami】の口コミやタレコミまでもが存在した。


「親族は会社を恨んで訴訟にまで発展?パン屋の経営状況も悪化の一途?」


ほとんど情報を持っていない杏奈にとって、ネットの記事は読めば読むほどそれが真実のような気がしてくる。

どんどん出てくる新しい情報に、杏奈は釘付けになった。


「だから雄大をたぶらかしているのね。」


そう結論付けた杏奈は、怒りに燃えた。

ただ、腹立たしくも口に入れたminamiのパンは、いつものように優しい味がした。


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