107/115

四章 ◆繋がるご縁

いつも通り帰宅した雄大が玄関を開けたとたん、奥からタッタッタッと琴葉が凄い勢いで走ってきた。

「雄くん雄くん、大ニュースです！」

おかえりの挨拶もなしに、今にも雄大に飛び付かんばかりだ。

ニコニコ顔から察するに、何か良いことがあったに違いない。

「どうした？」

小動物のように雄大にまとわりついている琴葉をリビングへ誘導しながら、雄大はその可愛らしさに苦笑いだ。

「あのね、今日ね、minamiへ杏奈さんが来てくれたの。」

その名前を聞いて、雄大は一瞬強張った。

「何かされなかったか？」

「されないよ。雄くんの言うとおり、杏奈さんはいい人だったの。」

ニコニコと話す琴葉の様子に不自然な点はない。

雄大はほっと胸を撫で下ろした。

杏奈は雄大の元カノであり、雄大と琴葉が恋人になることを拒もうとしたことがある。

その時に、琴葉は杏奈から酷いことを言われたのだ。

何があったかはおおよそ雄大に話した琴葉だったが、雄大はそのことに怒り心頭で逆に琴葉にいさめられた経緯がある。

何だかんだとそのことに文句を言っていた雄大だったが、最後には”杏奈は根はいいやつだから、ごめんな。”とフォローしていたことを、琴葉は忘れていなかった。

そして今日、一年振りにその杏奈がminamiを訪れたのだ。