2
物凄い衝撃が身体中に走った。
自分の身体から聞いた事の無い音も聞こえた。
そして、間違いなく人生ナンバーワンになるであろう激痛も感じた。
それはきっと気のせいじゃない、のに。
「.......ここは、どこ?」
ふと、気が付くと草原のような場所に座り込んでいた。
上にはよく晴れた青空が広がっている。
ちぎれ雲がいくつか浮かんでいて、とても気持ちの良い天気だった。
そよ風が、鼻をくすぐる。何処と無く青臭い。緑の匂いというやつだろうか。
立ち上がってみると、ジーンズの膝には泥がついていた。パタパタと払うと手にも黒い汚れが広がる。
そのまま掌をじっと見つめていると、みるみる脳みそが動き始めた。
通勤中に車道に飛び出した事。
勢いよく走ってきた大型車に突っ込まれた事。
多分、間違いなく、私は、
「死んだ........?」
そうに違いなかった。
この光景は天国としては少々違和感がある。
太陽の光の暖かさや地面のひんやりした感触、自分の掌の感じもリアルだ。生きている頃と変わりない。
しかし、それが何だというのだ。
地球上で言われている死後の世界なんて幾らでもある上、全ては想像に過ぎない。
本当の天国はきっとこんな感じなのだろう。間違いない。
それよりも、私にはもっと重大な事があるのだ。
「やったーーーーー!!!!!もう仕事しなくていいーーーーーーーーー!!!!!」
青空に向かって大声で叫んだ。
だって、もう二度と仕事に行かなくてもいいんだ。
未練が無かったと言われれば嘘になる。
だけど、死んでしまったものは仕方ない。
それにこの景色を見れば、死後の世界も中々悪く無さそうだ。
春のような優しい日差しに、何処までも続く緑の丘。
ドサッと後ろに倒れ込むと、胸いっぱいに穏やかな香りが広がる。
汚れるのも気にせず、そのままゴロゴロと転がった。
「ああ!神様、ありがとう!」
このまま一眠りでもしようかな。
そう考えて目を閉じた。
その時だった。
空を裂くような音と共に、風が顔中に吹き付けてきた。
目を開けるよりも前に、「何か」が勢いよく顔にへばりつく。
「ぶっ!?!?!」
鼻に衝撃が走る。
死んだ後も痛みは感じるのだなと思いつつ、顔のものを引っペがした。
妙に柔らかい?
謎の物体をよくよく見ると、灰色の羽毛のような物だった。
よく見ると尖った棘のようなものも生えている。
これが顔に当たらなくてラッキーだったな。
ところでこれは一体?
「ピュウ!ピュウピュウ!」
........鳴いている?
よく良く見れば、羽毛のようなものはまさしく羽毛で、棘のようなものは鉤爪で、後ろ足には蹄のついた足が2本。
そして、金色に光る目と、翼。
「なんだこれ!?」
「ピュウ!」
そうしてこの謎の生き物は目をパチクリさせて、私の手に頭を擦り付け始めた。