6発:おしりだって、洗ってほしい。
ヘドロとクソまみれの俺は、近くの川の畔で縞パンと白ニーソ、勿論、ケツも洗っていた。
ぶぇックシュっ!――
――えーい、ちくしょーッ!
おっさん特有の豪快なくしゃみ&でっけー独り言。
うう、まだ肌寒いこんな日に、ケツ丸出しにして川で洗濯とは、なさけない。
――ん?
あれ?
向こう岸に、ダレかおる。
あら!
こりゃ、かわいいお嬢さん、だこと。
やあっ!とばかりに手を振る。
キャーッ!
悲鳴を上げて、走り去る彼女。
おいおい、そんな驚かなくたっていいだろ?
そりゃ~、確かにメイクぼろぼろ、ヘドロまみれできったねー女装したおっさんが女物の下着洗ってたら、ほんのちょっと、少しばかりビビるかも知れんけど、別に襲いやしねーんだから、さ。
あ゛っ――
コレ、のせいか。
こんな丈の短いスカート履いてノーパンじゃ、しゃがみ込んで洗濯してたら向こう岸から、俺ジュニア、丸見えじゃねーか。
暴君モードじゃない普段の恥ずかしがり屋なプリティーな状態、通称『プリチン』くらい、見たって平気だろ?
うーむ。
猥褻物陳列罪に当たるのか?
わいのプリチン、あかんのか?
ちょっと、いろんなことが一気に起こったせいか、感覚がマヒしてるかも?
ま、いっか!
――さて、と。
コレからどーすんのかな?
ガイドもチュートリアルもない世界じゃ、何をどっから進めればいいのか分からない。
取り敢えず、異世界転生後、はじめてのミッションは、ケツとパンツを洗う、ってことだけは確かなんだが。
もう、機嫌なおしたかな、あの幼女。
あいつに聞くしかあるまい。
幼女神がすっげー怒ってたのには、理由がある。
異世界転生の魔術を行うことができるのは、あの“シロ”とかいう白一色の部屋からじゃないとダメらしい。
おまけに、異世界に転生をされると、超越界レベルとかいうパワーの基準的なモノが、『0』にリセットされちまうらしい。
つまり、強くてNew Gameはできねー、って寸法。
リセマラ対策してる、ってさぁ~?
どんだけ、課金させるつもりなんだよな、この世界の運営はッ!
あっ、運営は、あの幼女神か。
んで、あいつがやたらと怒っていたのは、あいつもこっちに来ちまったせいで、その超越界レベルが0になっちまったっぽい。
あいつから渡された、このgodPhone、通称『ゴッホ』を使えば、世界のルールを書き換えることができるらしい。
要は、ゴッホで元の世界やシロに戻ることも出来るんだと。
しかし、超越界レベルに応じてアクセス権限が設定済みなんで、レベル0になっちまった幼女神自身も手に負えない、とか。
チートやハッキング対策にかまけて、設定した本人も例外なく、これに従わざるを得ないって、まったく、ヌケてる神様だぜ。
この世界からの脱出法は大きく分けて5つある。
1つ、功徳を積み上げ、“悟理”の境地に達することができれば、シロへの扉が開く。
シロに戻りさえすれば、幼女神はバックアップしておいた本来のレベルと力を取り戻せるんで、後はどうにでもなる、と。
2つ、この世界でおっ死んじまえば、そのまま天国か地獄に行く。
但し1度、転生術を使って異世界で人生をやり直し、そこで死んじまうと、もう二度とシロには行けないらしい。
天国か地獄への一方通行だ。
幼女神も例外なくこの法則に従わざるを得ないっぽく、絶対死なない、と駄々をこねている。
3つ、ゴッホの持つ宇宙創造法規書換機能へのアクセス権限を得る程度に超越界レベルをアップさせること。
もっとも、幼女神が云うには、1つや2つの異世界で人生をやり直したところで、アクセス権を獲得できる程のレベルアップは絶望的、絶対不可能らしい。
ご愁傷様。
4つ、転生先にもよるが、その異世界において極限まで真理に触れ、次元旅行か時空飛行のたぐい、これに似た秘術を用いて別世界に飛ぶ方法。
この場合、レベルはそのままに、別の異世界に行くことが出来る。
強くてニューゲームだぞい、ってのはコレだわな。
だが、シロに辿り着くことはやはり不可能なため、幼女神にとっては無意味な脱出法、なんだとさ。
5つ、これは奇跡にすがる行為。
他の神様、“在婁魂”っちゅーらしいが、要はこいつらは幼女神の部下や配下らしく、運良くこいつらに助けてもらい、シロに呼び寄せてもらえばいい、って方法。
ところが、幼女神はこの方法は避けたいらしい。
どうやらこの幼女神、まぁ、今までの所業を見てれば一目瞭然なんだが、パワハラがすげーんで、あんま部下から気に入られてないらしい。
他にもこの世界から脱出できる方法は考えられるらしい。
しかし、幼女神が求めているシロへの到達法は、たった1つしかないため、単なる脱出法ではダメなんだと。
要するにだ、幼女神が取らざるを得ない脱出法は『1.功徳を積んで、“悟理”を開く』しかねーんだわな、これが。
あいつ自身が考え、作ったルールなんだから、ま~、しゃーなしだわな。
不正対策に必至になり過ぎ、自身さえも世界のルールに従わざるを得ないってのは、まぁ、ある意味、理想的な統治者ではあるんだが、そもそも幼女神は創造主に当たり、統治者じゃねーから話がややこしい。
まあ、なんちゅーか――
俺の異世界転生に、巻き込んじゃって…
――ごめんちゃい、テヘッ♪