11発:おまえもブタ丼にしてヤろうか?
「体で支払っていただきましょうか、ねっ!」
「ええっ!!きゃ、きゃらだでッ!?」
「Exactly(そのとおりでございます)」
そうかッ!
この店員、俺を女だと思い込んでいるな?
確かに、今の俺はありていに云って、きゃわい仔ちゃん、だからなッ!
――だが、男だ!
申し訳ごじゃいましぇん。
驚異的、圧倒的、悪魔的、超絶スペクタクル、全米が泣くレベル、モンドセレクション最高金賞受賞クラス、1000年に一人の可愛さ、控えめに云ってピエール=オーギュスト・ルノワール、あるいはアレクセイ・アセクセイヴィッチ・ハラモフの絵画に描かれた少女のよう。
美少女過ぎる異世界転生者、として人気を博すこと受け合いだ。
なのだが――
きゃわいい女の子だと思った?
――残念!
男の娘でした♪
きゃはッ!
「いやぁ~、あのー…俺、男なんスよ」
「エッ!?男性なんですか??」
「はぁい~~~」
「――別に男性でも全く問題ありません」
「にっ、にゃにぃぃぃーー!?」
そ、そういうことかッ!
う・か・つ!
そうだった。
何も、買うヤツ全てが“女”だけを求めているワケではない、と云うことか。
肉が好きな者もいれば、魚が好きな者もいる。
ペペロンチーノが好きな者もいれば、ナポリタンが好きな者もいる。
反町版GTOが好きな者もいれば、AKIRA版GTOが好きな者もいる…
嗜好は人それぞれ、千差万別。
何人たりとも、決めつけることは出来やしない。
異性が好きな者もいれば、同性が好きな者もいる、そーゆー魂胆だなっ!
アッー♂!
俺はこんなワケの分からん異世界にまで来て、とうとう娼婦、いや、男娼になってしまうのか…
お父さん、お母さん、生んでくれて、ありがたう。
あなた達の息子は、いま、旅立ちます…
――あゝ…
俺を選び、買ってくれる人は果たして、優しくしてくれるのだらうか――
うわーーん!
「さぁ、こちらへ」
「(ご、ごくり)…ひ、ひゃい」
覚悟を決めなくては。
これが現実世界の後進国だったら、その場でボコボコにされているか、下手すりゃ殺されかねない。
命があるだけ、めっけもの。
しかし、だ。
まさか、幼女神まで俺と一緒に売り捌こう、ってことはねぇーよな?
その筋では、引く手数多だろう。
確かにコイツは合法ロリだ。
だが、見た目からはそんなこと、分かりっこない。
流石に、ロリまで売ろうなんてことは許さんぞ!
絶対に、曲げられない信念がある。
大人として、男として、そして、幼女指南役として、こればっかりは譲れない。
店員の後をついて行く。
ギルドと銘打っていたその建物は用途に応じて区分けされているようだ。
今さっき食事を摂った酒場風の場所から仕切りのない戸口をくぐり抜けると宿屋テイストなフロアが見えてくる。
店員が向かうのは、その宿屋の受付方向ではなく、右手側の広場、その奥に宝くじ売り場のような構えの受付が幾つか壁際に並んでいる。
広場には、うす汚い冒険者風の輩、要はガラの悪い連中が屯し、どう見てもカタギとは思えないクソ野郎だらけ。
店員は奥の受付を親指で差し、促す。
刑務所の面会室を思わせる空気穴が幾つも開けられたガラス越し、そのカウンターの中には女性がたたずむ。
――あれっ?
見覚えのある女性…
あっ!?――
この街に入ったばかりの城門付近で、この町のことやら魔王のことやら色々と教えてもらった、あのねぇーちゃんじゃね~か!
なんで、こんなところに?
まさかっ!?
彼女がこの女衒の受付?
あんな人々の往来が激しい場所で一人キョロキョロしていたのは、めぼしい者を見付けるため、つまり、キャッチだったのか?
いや、おかしい。
だったとすれば、明らかにあの時点で俺を引き込むはず。
何故なら、今の俺は、宇宙的美しさなのだからッ!!
「あらっ?あなた、もしかして、さっきの?」
「あ、はい――先程はありがとうございました」
「やはりそうだったんですね!」
「えっ!?」
「あなたも魔王を討伐しにきた冒険者だったのですね!」
「え?あれ?えー、と…まあ、そんな感じです、ハイ」
脇からヌッと店員が顔を出し、語気強めに彼女に語る。
「いや、コイツらは、食い逃げ犯、ですよ。
なので、コイツらには体で支払ってもらうため、冒険者登録をさせにきたんですよ!」
「えぇっ!この方が!?」
「あッ!いや、ちがうんです。これはちょっとした手違いがあって…支払うつもりではあったんで……ハッ!」
凍てつく視線。
カウンターのガラス越しからでも分かる、養豚場のブタでも見るかのように冷たい目線。
『かわいそうだけど、近いうちに吉野家か松屋あたりでやっすいブタ丼になる運命なのね』って感じの。
ああっ!
数少ない、という以前に、この世界で出会い唯一まともに話した相手だってのに、あまりにも早い再開、そして、この仕打ち。
神様ッ!
なぜ、あなたはこんなにも残酷な仕打ちを俺に下すのでしょう…
おいッ!
神様、おめぇーのことだよ、このクソ幼女神!
隣で我関せずさながら、小指の第一関節までズッポシと鼻の穴に突っ込み、ほじくりたおす幼女神は呆けた面まるだしで一言。
「なんかよく分からねーデスけど、冒険者登録とかで気が済むなら、トットとしちまいやがれデス」
――こ、こいつぅ~~!
まったく、とんでもねぇー神様だッ!
しかし、1つだけ、感謝しておこう。
受付の彼女の視線を浴び、俺は悟った。
『あれ、嫌いじゃない』、と。
そう、俺はドMだったのだ――
うーん、この……




