クリぼっちこじらせてゲイセ
(初投稿これってやばくね……?)
ここが見えてるってことは、開いてくださったということですよね?
それはそれはありがとうございます!!(陳謝)
騙されたと思って読んでください。
たけし:良いやつだよなたけしは
アキラ:アキラかわいいねwww
性的描写、少なめです。
12月24日、夜八時。大阪府内にある俺の家で友人と宅飲みをしていた。天王寺や難波といった都会はカップル色に染まり、俺ひとりで歩いているときは嫉妬か羨望かで死にそうになった。そういうこともあって、悔し紛れに同じ非リアの友達でも誘って一杯やることにした。
「おい、たけしお前それやから彼女できねーんやろ」
大学に入ってからサークルで知り合ったアキラは、こうやって俺のことを馬鹿にする。お互い気の置けない関係性が気持ちよくて俺はアキラが好きだった。
「お前もいねぇやろwww」
「うっせぇなw」
「でもよー、アキラ。お前いま流行りの中性顔っていうか、可愛い顔してんねんからモテるやろ。声は女っぽいけどさ」
「あー、人気っちゃ人気よ」
「はぁ〜? イケメンは余裕なこった。俺の誘いなんか乗らずにユキちゃんと出掛けたらよかったんちゃうか」
我ながら無茶苦茶である。
「ユキちゃん? あー、サークルの? なんだかなぁ、ああいう私可愛いでしょ、みたいなやつ合わんわ」
アキラは残りの酒をあおるとすぐに、プシュッと500mL缶を開けた。
「わかるわww 俺も昔から人気者気質っていうかさ、いかにもモテそうって雰囲気の女の子苦手やねんな」
「たけしは自分に自信がないからやろ」
「いてーとこ突くなボケw 心の根っこから童貞なんじゃ。俺には釣り合いがとれんわ」
ふと冷蔵庫の苺を思い出したことを口にして席をたった。
「苺が俺を読んでいるっ」
ただ俺が腹へったってだけやけど。
「練乳いる?」
「要らんー」
「あいあい。ま、無いんやけどな」
「なんやねんw」
「はいよ」
俺が机におくなり、アキラは手を伸ばして苺を口に運んだ。「おっ、冷えてる」。とか言っている。お主には感謝も遠慮もないんかい。
「でもさ、話しかけんことには女の子は落とせんよ」
「それができたらええんやけどな。可愛ければ可愛いほど緊張するやん?」
「おい、それ。他の女子に失礼やろが」
「ちゃうねんて、やから苦手やねん。俺の性には合わんのよ。俺はさ〜、アキラみたいな女の子がええわ。」
「は?どういうことやねん、訳わからんぞw」
アキラは笑いながら4個目の苺に頬張る。
「気ぃ悪くすんなよ? なんかこういう関係が大好きやねん。お前の粗雑さとか、適当なくせに細かい優しさみたいなんがあってさ。一緒におると楽やねんなー。俺のベストはアキラが女になることかねぇ〜〜」
「飲みすぎやろww てかこのビール度数高いな、ちょっと酔ってきたわ」
俺はアキラの言う通り、この時点でかなり酔い潰れていた。元々アルコールに強いわけでもないのに、柄にもなくがばがばと飲んでいたのが祟ったようである。
「アキラさぁ〜、酒つよくねぇ…?」
「ま、まーなw」
「なんやその、苦笑いは〜」
「お前に珍しく酔っ払ってるからな…」
「ええやん。皆ヤッとるんやで。見ろ! この時間!」
時刻は夜11時に差し掛かり夜も耽ったという田舎の街灯りと静けさは、より一層寂しさを引き立てる。
「あれやな、なんやっけ。性の時間? 忘れた」
「俺も忘れたぁ〜。聖なる時間みたいなさ、日本で一番ヤッてる時間らしいわ。SNSで見た。ユキちゃんも予定あるらしかったし」
俺が卓袱台に突っ伏してぐだぐだ言っていると、アキラはいやに真剣な声音で話しかけてきた。
「お前ユキちゃん好きなん?」
「いや、ちゃうけど……」
「なら、あんまり名前出さんといてくれ。特に理由はないけどむかむかする」
アキラがこんな風に怒ったように言ってきたのは初めてで、頭が回らないなりにすぐに謝った。
「お、ごめんな、考えなしに……すまん」
「なんや、嫉妬してんのか? アレしたくて?」
アキラは畳み掛けてくる。
「や、俺童貞やしな……別に嫉妬ちゃうよ。中学、高校は勉強を言い訳にしててさ、ヤるとか考えたことなかったけど、大学上がると嫌でも思い知らされるやんか。自分の勇気のなさがさー」
「そんで?」
なぜこんなにもアキラが怒っているのか分からないまま、圧力に負けて必死で言葉を吐き出す。
「俺以外の男は、コミュニティにちゃんと参加して、女の子誘って出掛けてるわけやんか。凄いよな。俺は人付き合い選ぶタイプやし、年々寂しさが増しててな」
「……」
アキラは口を一文字に固く結んでいる。
「ユキちゃんモテるやんか、女の子代表で出しただけ。ユキちゃんちゃうくても、地元のあの子やらバイト先のあの子やらもヤッてるんやろうなって。俺はひとりのまんま。たぶんこの先もさ」
自分でも最初から何を言っているのか。俺は思わず弱音を吐いてしまい、腕を枕にして再び卓袱台に突っ伏した。
「分かった。たけし、起きろ」
言葉は変わらないが、途端に柔らかい口調になった。顔をあげてアキラの顔を見ると、微笑んでこちらの目を覗き込んできた。図らずもドキッとした。は?
「たけし、俺の横来い」
俺は言われるがままに、アキラの横へ四つん這いになって移動して座り込む。
「これ、なにす…」
不意に温かい…というか、ぬるくて、ぷにゅぷにゅしたものに唇を覆われた。それは唇を撫でるようにして離れていく。
「どうだよ」
俺は、にやりとしているアキラの顔を眺めながらも言葉を失っていた。は? 今、何が起きたんだ? 頭が事実の理解を拒むだとか、認識が追いつかないだとか、そんな感覚。見えてるのに見えないみたいな気持ち悪さがあった。
「な、は、え、え?」
ようやく出た言葉は酷いものだった。
「引いたかよ?キスだよ。初めてか」
キス? じわじわと脳が処理を開始する音を立てる。
「はは、おい、アキラ。冗談ならやめとけよ……」
「冗談じゃない、つったら?」
それこそわけが分からないだろ。俺は童貞だぞ。
「Kissって接吻やんな」
「ぶはは! 間違いない、それやわ」
アキラは笑い飛ばすが、まだ俺は受け入れきっていない。
「これ、俺には理解が追いつかんねんけど」
「勘違いすんなよ。俺は男やけど女じゃバカカス」
男やけど女?
「はっ?」
俺は何度目かの素っ頓狂な声が漏れた。
「たけしなぁ、お前めっちゃドエライ勘違いしてんねんで。いい加減気付けよな。俺の身体、女やぞ。」
「ぇ…?」
もはや声もまともに出ていない。
「でも、心は男。習ったやろ、性的少数者みたいなやつな。言っとくけどこれ、かなりすげー勇気がいるカミングアウトやぞ。なんや笑うわ」
続々と追加される情報に俺は振り回された。情報量は多くもないのに、その複雑さと状況がより混乱させたのかもしれない。しばらくして、俺はたどたどしくも口を開いた。
「なんや、アキラ。お前、女で男か」
改めて言うと、もっと分からない気がした。
「そうや。身体は女で、心は男。恋愛の対象は、ま、男やな」
「そうか……俺は馬鹿やな」
俺はアキラの顔が見れなくて、項垂れた。
「いや急にどうした」
「それは、俺のセリフや。なんで、俺にそんな話してくんねん」
「なんや俺のこと、嫌いになったか。幻滅したか」
「ちゃうわ! アホ。今の今まで、ずっと気付かんくてすまんかったな」
俺がそう言うとしばらくして、アキラから嗚咽が漏れたような気がした。
「ん? ちょ、おい、アキラ……なんで泣いてるんや? どうした」
俺が顔をはねあげると、アキラは手で顔を隠すようにして泣いていた。
「ぅ、ぐ、ごめ、、んぐっ、」
アキラの堪えるような声音に、俺は言いようもない胸の締め付けを覚えた。性的少数者については、高校の頃に保険の教科書で齧った程度で正直、困惑の色が強かった。
「アキラ、ごめんな。気付いてやれなくて。酷いこと言った俺を許してくれ」
薄っぺらい台詞ばかり並べて、アキラを直視できない俺はクズだな。許しをこうて、自分ばかり助かろうとするから。
しばらくしてアキラが落ち着きを見せ、とつとつ、話を再開した。
「謝るのは、俺やわ。騙してたし。急にキスしたしなw」
俺の反応を思い出したのか、アキラはふっと吹き出す。
「俺とヤろ。ご不満か、たけし」
膝から太ももにかけて、指先で舐めるように撫でてきた。
「ぁ〜はは、お前としたらゲイセやな」
俺は突然のことに精一杯の見栄を張るが、背中は剃って顎が上がる。額には汗の気配を帯びた。もはや鳥肌が立つ寸前である。
「俺には嬉しい言葉やな。俺が言うのもあれやけど、お前飲み込み早過ぎんか」
「すまん〜、俺には何もかもが急やでww」
思わず笑いが込み上げてくる。人間、半端に緊張すると笑ってしまうのだろうか。
「……お前は知っても、俺のこと女扱いしないんやな。ふつう、友達やめるで」
言葉を紡ぐうち、アキラの顔に翳が落ちた。
「アキラ。俺のこと買いかぶり過ぎや」
「え?」
そんなに縋るような顔をするな。
「俺はこれから、アキラのことは女やと意識してまう。嫌でもや。これは俺が慣れるまで我慢してくれ。あとな、性的少数者に対して理解は多くない。アキラやからなんとかなってるだけや。他の人に言われたら、拒絶してるかもしれん」
そんなに苦しそうな顔をするな。
「でもな、アキラは男なんやろ? お前がそう言うんやったら、そうや。身体は女で、心は男、それでいて同性愛者ってことやろ。この程度には理解した。ちゃうか?」
「…、ぁ、あってる」
やめてくれ、頼むわ。
「アキラ、俺は彼女でもなければ、ましてや友達なんかとはヤれん」
だから。
「友達、やめてくれ」
「……」
アキラの喉がコクリと、音を立てずに動いた。
その刹那、俺は飛びかかるようにしてアキラを押し倒すと、床に肘をついて額を手で抑えた。目を見開くアキラに構わず乾いた唇同士を乱暴に重ね合わせる。顔に荒くかかる鼻息は生ぬるくて色っぽかった。それからは、アキラにされたように唇に吸い付き、何度も貪った。俺が気付いたときには、すっかりアキラは無抵抗だった。
「仕返し…やわ」
唇を惜しげに離すと、軽口を叩いた。ここは敢えて謝らなかった。この雰囲気を壊さずに、アキラの反応を知りたかった。
「ばか……やろう……なにすんねん……」
アキラは涙目だった。
「アキラ……好きや。男として女のお前が好きや。友達として男のお前が好きや」
自分の言っていることがアキラにとって酷なのは知ってる。それに、言っていることがめちゃくちゃなことも。ただ、俺はアキラについて正直でいたかったのだ。これが自分勝手な感情だということには当然気が付いていた。
「友達……やめるんじゃねーのかよナスやろう」
「やめようや。……」
俺の口は二の矢をつげない。
「はっ、そんなこったろうと思ったよ。……それにしても言い方ってもんがあるやろ」
そう言うと、今度はアキラの腕が俺の首に回されて、強引に引き寄せられた。噛み付くようにキスしてくるアキラに飲まれて、童貞のくせにねっとりと舌を絡ませる。アキラの舌は吸いついてくるような弾力だった。俺はそれに舌全体を押し付けて撫でるように、ゆ〜っくりと動かす。混ざりあった唾液がアキラの喉に溜まって苦しそうにするが、俺が舌を飲み込むように吸うからどうにもできないでいる。
「っ……んぐぅ、んはぁっ、はぁっ、はぁっ」
俺が舌を離してやると、喘ぐように息をしていた。
「告白の返事は?」
目尻に溜まった涙が、アキラの左眼から一筋溢れた。
「好きっていう告白イコール付き合ってくださいと思ってるのは童貞やで、ほんま。でも、イエスや。よろしくお願いします、クソ童貞」
「……あまりにも酷くね?」
「あはは!」
そうやって笑うアキラの顔を見ると、胸のつかえがとれたような気がした。
「アキラ。正式に、俺の彼氏になってください」
12月25日、朝5時。眠るアキラの背中は安らかである。もしかしたら、孤独なのは俺だけじゃなかったのかもしれない。アキラも、ずっと孤独を抱えていたんじゃないか。お酒に酔った勢いが助けたのか、アキラはいずれ言うつもりだったことをうっかり漏らしてしまったのだろう。俺はそれを軽々しく受け止めてしまったのではなかろうか。いや、それはないな。身体は満足しても、心はまだまだアキラを求めているのだから。
「アキラの性別は、アキラだよな」
二人きりの部屋。俺は朝焼けに染まる空を見て、幸せに独りごちた。
俺の食べた残りの苺は、すっかりぬるくて甘ったるかった。
12月24日の0時に思いついて、ぱーっと書き上げました。疲れるから推敲はしてないです。たぶん誰も読まないしさ。所要時間は3〜4時間です。
?「おーい、作者、ここ読み終わった人が見るところらしいぞ」
私「はっ!?」
アーーー、スゴク推敲シマシタ。読了感謝カンゲキデス(謝罪)!!!