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壊れたとりかご  作者: ゆめづき
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時間は動き出した

本日6月7日から書き始めました。

更新頻度は分かりかねます。

何せ自分の体験や見解を軸に書いてるものですのでご了承ください。


 僕の一日は6時に起床し、顔を洗うことから始まる。

 今日の授業に使う教科書類を鞄に積めこみ、ベランダのベンチに腰掛け、漫画を読む。

母親が起きてきて、朝食が出来上がったタイミングで一階に下りて朝食をとる。



 6月差し掛かったことで制服はブレザーからYシャツに変わった。

この日はまだ朝は寒いということで僕はその上から紺色のセーターを着た。

ちなみにズボンは灰色で多少ラインが入っていてカッコいい。ここだけはさすが私立と言ったところか。



 いってきますと玄関で呟き、僕はガタガタになった前籠の自転車を走らせ駅へと向かった。



 電車を待つホームでの数分間、僕は大抵意味もなくホームから空を見上げているのだが、今日は違った。



「おはよ」



 彼女だ。中学の頃から同じ学校に通っている。僕らの学校は最寄り駅から40分、そこから徒歩で10分程度歩いたところにある。

知り合いのなるべくいないところに通いたかった僕はたまたまそこを選んだわけで彼女との打ち合わせはしていない。だから僕と彼女が同じ学校に通っているのは全くの偶然である。



「おはよ」



 最近よく会う気がする。いや、駅で見かけることはよくあった。しかし、見かけても言葉を交わすことはなかった。

それが最近、わざわざ僕の並ぶ号車まで来て声をかけてくれるようになった。



 今日は朝の小テストの範囲はなんだっけなど他愛のない話を僕らは電車が来るまでした。

そんなたったの数分が僕の唯一の青春だ。電車が来て、車内に入った瞬間僕らは他人になる。

彼女は昔からの親友の隣に行き、僕は車内奥ドア横の隙間にすっぽりと収まる。

 甘酸っぱすぎる僕らの関係だが僕は割と好きだ。後一歩の勇気があれば何か変わったかもしれないが僕にそんなものはなかった。



 そこからは繰り返しの時間だった。電車の中で朝の小テストの勉強をし、駅を出てからは一人、早足で学校へ向かう。

電車で勉強するようになってからは小テストで落ちることはなくなった。テストに落ちると放課後掃除をさせられるという何とも嫌な制度あり、一刻も早く家に帰りたい僕は落ちるわけにはいかないのだ。



 午前の授業を真面目に受け、昼休み僕は一人自分の席で昼食を取る。

別に悲しいと思ったことはない。特に不満もないしむしろ楽だと思っている。


 

 真面目に授業を受けていると言ったが僕は勉強が大嫌いだ。今は一個下の進学クラスにいるが、2年生の時には選抜クラスという一個上のクラスにいた。

自称進学校だと噂されてはいるが、学校は進学校だと推している。だからその程度の頭はあったのだと僕は思う。しかし当時の勉強に対する趣はどん底でテスト前日ですら遊び惚けて、赤点を連発で夏休み特別演習を受けた。

さすがに推薦を狙っている身として危機感を覚え、最終日のテストでは100点を取ってやった。勉強したのに先生に怒られた。

だから今の僕は頑張っていると思う。こないだの中間テストでも平均点70ちょいは取っていたと思う。それにいつも出していなかった提出物も完璧に出した。

だがこれも一、二年で取り損ねた内申点を取り返そうとしているだけに過ぎない。


 

 帰りはまたしても偶然同じ学校になった中学の友達と二人で帰る。

 背はずば抜けて低く、一、二年前までは私服で電車に乗ればまず小学生と間違えられるくらいだ。

またゲームやアニメなどが好きな彼は浮気性である。彼にそう言ったところ確かにと言われたから間違えはない。

ある時は寝る暇も惜しんで一日中ネット小説を読み、ある時は一日中スマホゲームに目が腫れるくらい没頭する。

けれども、どれもこれも一か月そこらで冷め、また別の楽しみを探し出す。



 そんな暇を持て余す彼に何のため生きてるのと聞いたところ、ふざけるなと罵倒された。

ゲームをしたって得られるのは一時的幸福のみだ。僕はそれが何に繋がるのかわからない。

もちろん僕だってゲームをしないわけじゃない。たまにはそういうのもあったっていいと思う。

だけれどいつまでもやっていると時間の無駄だと思ってしまう。

そんなこと言ったらこの世のほとんどが要らないものじゃないかと言われた。

まさにその通りだ。僕が愛する漫画ですら生きるために絶対必要かと言われたらそうではない。

要は自分が満足するか否かなのだ。



 そういえば今日は自転車がパンクしてて今朝は母に送ってもらったのだと思い出す。

僕はメールで駅まで迎えに来てとメールを送った。

数分後、あれ今日は朝自転車じゃなかった?と返信が来た。僕はぞっとした。

 有限な時間の中で僕は繰り返される日々に泥酔していたのだ。

いつ死ぬかも分からない世界で僕は毎日が当たり前で無意味なものだと思い込んでいた。



 家に着いた僕はリビングに鞄を置き、すぐにお風呂掃除をした。

今日やった体育のバレーでの汗はいつしか消え去り、今や冷や汗に変わってどうにも気分がすぐれなかった。

だから早くお風呂に入りたかった。

 お風呂から上がって部屋着に着替え、僕はご飯が出来るまで今朝読んでいた漫画の続きを食い入るように読んだ。

そうでもしないと怖くてたまらなかった。



 特に母とは会話はせずに、ご飯を食べ終え、僕は二階の自室に戻った。



 時刻は7時過ぎだ。まだ寝るには早い。

いつもならここで勉強するかまた漫画を読むかでもするのだが今日はそんな気分にはなれなかった。

 部屋に入った僕は明かりをつけることもせずベットに横たわった。

何も聞こえない。静寂の時間。

昔はよくこうやって悲しくなったとき真っ暗の中天井を眺めていたなと思い出す。

そんなとき僕はどうやって気持ちを落ち着かせていたんだろうか。



 音楽を聴くことだ。



 もうずいぶん音楽は聞いていなかった。小学生以来だろうか。

 僕は僅かに見えるようになった目を頼りに押し入れの中に放り込んでそのままだったウォークマンを引っ張り出した。

ベットに戻ってイヤホンを両耳にさした。音が出るか心配だったが問題なく音は聞こえた。

昔よく聞いていた女性アーティストの曲だ。僕はこのアーティストのホジティブすぎる歌詞が大好きだった。

何をするにも全力で直向きに生きる彼女がまた僕に生きる力をくれた。

一曲聞き終わる頃にはすでに悲しみは消え去っていた。



 安心したのか僕はその後すぐに眠りについていた。

 


 


 



 


 


 


 








 





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