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Vertrag des Bluts  作者: 灯籠
9/10

Wahnvorstellung

「屡軌でいいぜ?」

そう言うと手に持っていたコップをベッドの横の机に置きその長い指をからめて手を組み始めた・・・。

「屡軌、私は邑です。人であるころ聖職者に身を置いていました。」

突然、俯きながら淡々と話し始める邑

「そうか。」

やはりな、しゃべり方があのいけすかない男に似ているはずだ

「それでえっと()()様は?」

「今出かけてるからそろそろ戻ってくると思うぜ。」

兄貴のことだもうおそらく扉の前に立っているだろう・・・。

「お、なんだか仲良くなってるね。」

「え?」

驚いた。先ほどまでの少年と違い青年の姿で―――私を助けたときの姿で目の前に現れるなんて・・・やっぱり人間じゃないのね。

「兄貴。」

「あぁ、そうだ邑。」

少しだけ弟の方に顔を向けて言う

その眼は鋭く光っているがここは気にしないでいよう・・・。

という弟の態度がうかがえるが邑は何せ鈍いので気がついてはいなかった。

「はい?」

「僕のことも()()でいいよ。」

弟に妬くなんてらしくないな・・・オレ

「あ。はい・・・。」

突然なんなんだろう?

「やっぱり、まだ怖いよね?」

「え、まあ。」

なんか嫌だなこの空気・・・。

「俺、散歩行ってくるな?」

さっき僕って兄貴が言ったよな・・・。なんか鳥肌立ったし。

「ああ。」

気を使うか・・・アイツらしいな

「行ってらっしゃい。」

逃げたわね!

「ふぅ、なんか自棄におとなしいね?」

もっとこう騒いでなかったっけ?



「そう、ですかね?」

「ああ、何かあったの?」

「いえ、別に、何も。」

「そうか、アレは飲めたようだね。」

おそらく答える気のない邑にこれ以上聞いても無駄なので、話を変えた

「アレ?」

「そう、血。」

匂いがするし、コップがあるってことは屡軌じゃないな。

「ああ!」

「どうだった?」

渇きを潤すには仕方がないが・・・いきなりだと、大丈夫なのか?

「どうもなにも、喉に絡みつくし、鉄臭いし、吐き気するし、飲めたものではなかった。」

吐き出してしまいそうだったわ

「そうか・・・まぁ、じきに美味しくなるよ。」

味だって十人十色だから飽きないし

「はぁ、確かに・・・不思議と乾きは潤せたけど。」

何でなのかしら

「まだ飲み難い?」

タブレットもあるにはあるんだが・・・

「うん。」

毎回は嫌だわ

「じゃあ、ちょっとの間これを飲んでおいて?」

そういうと錠剤の沢山入った袋を手渡した。

少し副作用が心配だが・・・仕方がないだろう

「え?」

何?薬物濫用者みたいじゃない

「血液の成分を固めた錠剤。」

母上もなぜ袋で寄越すんだろう

「でも、あの?」

怖い・・・なんなの?

「一回3錠を毎食後に。」

「はい。」(うわぁ、不味そう。)

「お子様用に甘くしてあるから心配しなくて大丈夫だよ」

糖衣錠ってヤツだ!

「だ、誰がお子様よ!私より年下のヤツに言われたくないわ!!!」

失礼しちゃうっ

「はぁ、だからぁ僕は君より300年以上は長生きしてんだから。」

あ。怒った

「わ、私もこれから長生き?」

「そうだね。そういうことになるね・・・うん。」

何故か上目づかいで聞く邑にニコニコしながら答える

「なに一人で納得してんのよ!」

笑顔が気に入らなかったのか邑はすごんだ

「いやぁ、今君に血を与えるべきじゃなかったと思って・・・。」

少し残念かな

「はぁ?」

何言ってんのコイツ

「吸血鬼はさ、成長が人間に比べてそれは目に見えて遅いわけ。」

早かったら俺もうジィさんか・・・

「だから?」

だからなんだってのよ!!!

「君が妖艶な美女になってから与えたら数十年そのままだったのに。残念」

全く残念そうではない。

「あんたそれでも当主なの?」

「はは。そうだねぇ・・・会議に出てることが妄想でないなら、そうだよ。」

ニコニコ顔で言うのだから真実味があって怖い

「い、言い返せない。」

妄想かも。

「はは。年の功だね。」


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