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屋飼乃音は努力次第  作者: 土曜原アオ
プロローグ
4/4

プロローグ4 「ノート」

「まあ、取りあえず……、『回復魔法(フーレ)』っと」


 鳥の胃袋から出てきたのは、如何やら普通の少女のようだ。

 私の右手の触れている部分から、じわじわと損傷を治していく。

 あっという間に身体は再生されていくが、服が所々千切れている。

 これはしょうがない。我慢してもらおう。


「ん、……と、こんなもんかな」


 身体にあった怪我をあらかた塞ぎ、少女の呼吸が安定したので、魔法を止める。


「で、この子どうしようかな」


 少し考えてみるが、これという良案が浮かばない。


 まじまじと少女を観察する。

 肩辺りまでのばされ、整えられている黒い髪と、線の細い小柄な体躯が特徴的な少女だ。

 とても一人でこんな森の中ほどまで来られそうもない貧弱な身体。

 どういった状況でこんな事になったのか、それを聞けばこの鳥の事も解るかもしれない。


「でも意識戻らないなぁ……」


 ふと少女の傍らに、紐のついた鞄があるのに気が付く。

 それも何やら不思議な構造の入れ物だった。


「なんだろこれ」


 さらにその中に小さめの袋があった。


「お金、かな?」


 さらに開けると中にはいくつかの物が入っている。

 使用方法が解らない物から、お金らしき金属の硬貨が、いくつか出てきた。

 何処の国の通貨だろうか。自分の膨大な知識の中にそれは存在せず、一層謎が深まる。


「お?」


 その中に、目を引くものがあった。

 何やら文字が書かれた数枚の札。

 でも、読めない。

 気になる。


「仕方ないか、……『把握』、『理解』」


 頑張っても答えに行きつくことが無さそうだったので、私は普段は使わないようにしている二つの技能(スキル)を使用した。


『把握』のスキルで情報を網羅し、『理解』のスキルで文字通り理解する。

 反則じみたこのスキルを使うのは本当はあんまり好きじゃないのだが、この際使ってしまおう。

 抑えきれない知識欲を満たす為には、致し方ない。

 それに、この娘を放っておくわけにもいかないだろうし、たまにはこれ位しても良いだろう。

 とまあ、言い訳もほどほどに、スキルで『理解』できた事。


 この札は如何やら、『学生証』や『ポイントカード』と言うらしい。


「ヤカイ、ノオト……か」


 いくつかの札に共通して書かれていた文字を読み、声に出す。

 まあともかく、ついでに色々理解したので、この子をどうするか、改めて考える。

 自分が保護するか、誰かに保護してもらうかだ。

 正直、他人の面倒は見たくないので、別の人に保護してもらうに一票。


「テレクにでもお願いしよう」


 勝手に決めたら怒るだろうけれど、お人好しのあいつならば断われまい。

 あとはこの子の言語がこの世界の言語と違う、と言う問題点が生じていた。

 けれど、取りあえず言語の形式が酷似していたこともあって、案外簡単に翻訳魔法も作れそうだ。

 目覚めたら喋られるように、計らってあげよう。


「『補助魔法作成』、【言語翻訳】」


 そうやって少女に魔法を掛けたり鳥の肉を凍らせて保存が効くようにしたりして暇を潰し、少女の目覚めを待つ。


 数時間後、日が落ち始めた頃。


「……ん……?」


 やっと、少女が起きたようだ。

 半分しか開かれていない瞳は陰鬱で、それを覗き込む形で声を掛ける。


「おはよう、ノート」


 屋宮乃音を『理解』し、現状を『把握』した私だから、知っている。


「……」


名前:屋飼乃音

年齢:16

種族:人間

レベル:1

HP:8/8

MP:8/8

筋力:2

耐久:2

敏捷:2

技能:《努力》《速読》《裁縫》《言語翻訳》


「今はすごく弱いけど、うん……頑張れ」


 私は小さく、この貧弱な少女に向って呟いた。


誤字などあったら教えて下さい。

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