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出発編

先日京都に行った際に書いたレポート的な小説です。


息抜きに書いてみました。


もちろんフィクションです。


俺に、彼女が出来た。

名を、以呂波椛(いろは/もみじ)という。

容姿端麗、文武両道。

まさに才色兼備の女性だ。

つい先日までコーヒーも飲めなかったような童貞丸出しの俺(大学生)が、そんな高嶺の花と付き合えたのは……別に奇跡でもなんでもなかった。偶然を装った、ただの必然だった。



「遅いな……」

今日は初のお泊まりデートの日。一泊二日ということで近場の京都に行くことになっている。

待ち合わせの時間はとうに過ぎていて、デートの約束自体が嘘だったのではないか、という時間帯にまでなっていた。

彼女の遅刻癖については彼女の周りのあらゆる人間から聞いていたため、俺自身、待ち合わせ時刻の二時間後にこの場所に着いた。

もはや待ち合わせているとも言えないような状況だが、それでも彼女は来ていない。もちろん、きちんと定刻に来たのに俺がいないから帰ってしまった、というわけではない。


『件名:外出の件について

 本文:春眠暁をおぼえず、とはまさにこのこと。

春の心地よい温かさは私を眠りの世界へと誘うのだ。

私は残念ながらそれに抗うことが出来ず、お布団様の言いなりになってしまった。

お布団様は私に「寝ろ」とおっしゃった。

私はその指示に忠実に従ったまでなんだ。


だからな、今回の遅刻は不可抗力っていうことで。


おやすみ(-_-)zzz


気が向いたら行くわ』


これが先程、以呂波さんから届いたメールである。

何かっこよく自己正当化してんの!?

それに、気が向いたら行くって……どうせデートとも認識されていない旅行なんだ、断ってくれた方がいい。

さっさと帰ってしまおうと思う反面、ここは男として待った方がよかろうかとか、せっかくの荷造りがもったいないだとか、そんな気持ちも捨てきれないわけで。悶々と悩んで今に至る。

以呂波さんに想いを寄せる男性はごまんといたようだが、「以呂波は欲のままに生きる女性だ」という噂の真の意味――性欲でなく睡眠欲が旺盛だった――を知った瞬間、彼女に抱いていた恋心はフライアウェイしてしまったようだ。

そういう事情を知ったうえで彼女と付き合っている俺はかなりの物好きなのかもしれない。

まあ、彼氏も彼氏なら彼女も彼女ってことだ。

都合よく高嶺の花なんか摘めるわけがない。


「くそ、あと5分だけ待つか」

さすがにもう待てない、と時間に限りをつけることにした。

1分、2分、3分、4分、……5分、経った。

以呂波さんは来ていない。うん、もういいや。

俺はよく待ったよ。2時間も待ったんだ、彼氏としては上出来だと思うよ。

「よし、帰るか」

くるりと踵を返し、帰路に着こうとした俺の背中に、

「おーい!」

今一番聞きたくなかった声がかけられた。

「よう!何帰ろうとしてんだよ」

ホラー映画の要領でゆっくり振り向くと、そこには……

「貞子ぉっ!?」


……正確には貞子のような髪型の以呂波さんが立っていた。


「おいおい、貞子とは何だよ。こんな美女に貞子はないだろ!」

「はいはい、すみませんでした」

ぶーぶーと子供のように文句を垂れる以呂波さんを宥めながら、枝毛だらけの黒い長髪を櫛でといてやる。この櫛は俺が以呂波さん用に常備しているものだ。つくづく世話の焼ける彼女である。


「や、やめろ!バカ!」


ま、恥ずかしがる以呂波さんも可愛いんだけど。



さあ、こんなことをしていても埒があかないし、時間もないからそろそろ出発しますか!


「以呂波さん!出発しましょう!」

「そうだな!」


と、以呂波さんが向かったのは新幹線乗り場と反対方向で。


「ちょっと!」

「え、……お、おう!こっちだったな!」

「……そっちも違います」


不安だよ、京都旅行……。


ここまで読んでくれたあなたに心からの感謝を。

ありがとうございました!

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