彩加 強襲!
「こんばんは」
いつもの笑顔で彩加がそう言うと、俺の親父が入れ入れと言わんばかりに、俺の部屋のドアを思いっきり開いて、手でどうぞと言う合図を彩加に送った。
彩加が俺の親父に頭を下げると、俺の部屋の中に入ってきた。
何しに?
一瞬、そう思ったが、すぐ分かった。彩加の手にはパソコンが抱えられていた。
今日の宿題だ。
これまでにも、ちょくちょく彩加は勉強を教えて欲しいと言って、俺の所にやって来ていた。
今日はパソコンであるプログラムを作ると言う宿題が出されていた。俺は親父の影響もあって、プログラムは得意である。そんな事を彩加に言った事はなかったが、いつもの勉強の調子でやってきたのだろう。
「彩加、今日の宿題、全然っ分かんなくて」
いつもにこやかな彩加の表情に、自分に対する情けなさのような表情が浮かんでいる。
「いいよ。パソコン、机の上に置いて」
「ありがとうぅ。
そんな亮が私は大好き」
またまた、彩加が胸のあたりで両手を結んで、少し顔をかしげながら、かわいい笑みを浮かべながら、言った。
俺の机の上に、彩加がパソコンを置いて、起動した。俺は彩加がパソコンを触るのを初めて見たのだが、目が点になった。
昔々、パソコンが世に出はじめた頃、世のおじさんたちは左右の人差し指だけを伸ばして、ぽちぽちとキーボードを打ったと言うが、起動画面のパスワードを入れる彩加はまさしく、それだった。
どうやら、彩加はパソコンには慣れていなさそうである。
俺の机の椅子に彩加を座らせ、俺はその横で膝をついた状態で、彩加にパソコンを教える。
「えぇー、どうしてなんですかぁ?
彩加、分かんない」
そう言って、彩加が俺に顔を近づけてくる。俺は押し倒したくなる衝動をぐっと抑えるのに、精いっぱいじゃないか。
「開けるよ」
そんな声に、俺はほっとしてしまう。
俺の部屋のドアを開けて、母親が飲み物とおやつを持って入ってきた。
「水上さんは本当に勉強熱心ね」
「あ、はい。
でも、私は頭がよくないので、寺沢君に教えてもらって、助かってます」
そう言って、彩加が軽く頭を下げた。
「そう?
こんな子で役に立つんなら、いくらでも聞いてやってね」
そう言いながら、俺の母親が机の隙間に紅茶とケーキを置いて行った。
これはいつもの事だが、俺の母親は彩加が来ると、時々理由を付けて俺の部屋にやって来る。もしかすると、俺が変な事していないかと、警戒しているんじゃないかと勘繰ってしまうが、実のところ助かってもいる。母親が来なければ、こんなかわいい彩加に異常接近されて、理性を保ってなんていられる訳がない。
「ねぇ、亮。
画面に映っているだけじゃ、分かんないよ。
このプログラム、プリントアウトできないのかなぁ?」
彩加が戸惑いの表情で、俺に言った。確かにそれはあるかも知れない。全体を見れた方が、よく分かる。
「分かった。
ちょっと、待ってて。
プリンタ用意してくる」
俺はそう言って、別の部屋にあるプリンタの電源を入れ、用紙をセットしに部屋を後にした。俺が親父の部屋に入りプリンタの用意をして、部屋に戻ってきた時、彩加はパソコンの画面の前で、首をかしげていた。
俺が戻ってきた事に気付くと、むっちゃかわいい笑顔を俺に向けた。
「お帰り、亮」
「あ、ああ」
どきまぎしてしまわずにいられないじゃないか。
俺はそんな気分を隠すため、いそいそと自分のパソコンを立ち上げはじめた。
「何するの?」
「あ。これ?
プリンタは無線LANでつながってるんだ。
彩加のパソコンのプログラムを俺のパソコンにUSBメモリで移して、俺のパソコンから打ち出すんだ」
「無線ラン?
USB?」
彩加が悩んだ表情で、首をかしげた。
「ああ、ごめん。
俺に任してくれたらいいよ」
「ありがとぅ」
そう言って、彩加が満面の笑みで俺に急接近してきた。俺は自分のハートをクールダウンしようと、紅茶を一気に飲み干した。
それからも俺は彩加の魅力にくらくらしながらも、心の奥底から込み上げてくる欲望と戦いながら、彩加に宿題のプログラムを教えていた。
するとなんだ、この緊張に耐えきれなくなった俺の体は悲鳴を上げた。
お腹がぐるぐると差し込むではないか。
トイレに駆け込みたくなる衝動をぐっと抑えて耐えていると、冷や汗が出てくる。声も上ずってしまう。
そんな俺の異変に彩加が気付いて、心配そうに俺を見る。
「亮、どうかした?
大丈夫なの?」
俺はもう我慢できなかった。
「ごめん。
ちょっと、トイレ行ってくるわ」
俺はそう言って、部屋を後にしてトイレに駆け込んだ。
恥ずかしい限りだ。なんちゅう失態。
だが、トイレから部屋に戻った俺に、彩加はいつも通りの笑顔を向けてくれた。
「お帰り、亮。
一人ぽっちで、彩加、寂しかったよぅ」
そんな彩加にかわいさに、俺は陽香も玲奈もいなければ、いや、心の中にいたっていい。二人の事は心の奥底に押し込めて、今、この家の中に俺の親がいなければ、押し倒していたかもしれなかった。




