俺の想い
現国王派が保有航空戦力は本当にこれが最後だった。
陸上部隊と戦闘機部隊を引き連れた前国王派の軍が本格的な首都侵攻を始めたが、迎撃に出てくるのは陸上部隊だけだった。
航空戦力のない陸上部隊が戦い抜くにはゲリラ戦くらいしか策はないが、さすがに多くの一般市民を巻き込むゲリラ戦は挑んでこなかったため、決着がつくのに時間を要さなかった。
王宮に立て籠もっていた現国王と松山だったが、現国王派の軍の敗走と共に、王宮は無防備な状態となり、前国王派の陸上部隊の兵員たちが容易に占拠した。
王宮には前国王を再度迎え、ここに完全に前国王を国王の地位に戻すことができた。
松山はツワノの国王の証言どおり、年端もいかぬ国王を擁立し、この国を自らのものとする計画だった。
ツワノに潜む菅原を拉致したのは、TM-Xを奪取するため松山が実行した作戦だったが、その計画を提案したのは意外な人物だった。
俺はどうしても、その人物と話がしたくて、今ここで向き合っている。
「教えてくれないか」
俺の言葉に、その相手は俺に視線を合わせることもなく、冷たい表情で横を向いたままである。
「ゆかりちゃん、あの時、助けを求めてきたのは嘘だったの?」
俺の言葉にきつい視線をゆかりちゃんは向けてきた。
「私の目的はね、あの人を国王に付ける事。
でも、それだけではだめなのよ。その地位を確実なものにしなきゃだめなの。
あの人を国王にするには、あなたを陥れる必要があった。でもね。あの人が国王になった以上、あなたを牢屋に入れおく必要はなかったし、それ以上に、ツワノの国王が裏切った場合、あなたのパイロットとしての力が必要だったのよ。
あの最新鋭機を持って、野望を抱くツワノの国王は危険な存在。
あのツワノの国王が裏切って、この国に攻めてこない保証なんてなかったんだから。
でもね。あなたを社会に戻すときに、クーデターまで起きたのは想定外だったわ。
そもそも、あれがつまずきの始まりだったわ」
つまり、俺を利用するために、俺を社会に復帰させておく必要があった。そう言っているのだ。
俺の頭の中に、あの時のゆかりちゃんの姿が浮かぶ。
小さく体を震わせ、流した涙。
「それって、あれも芝居だったって事?
涙は嘘だったの?」
「当り前じゃない。
私はね。あの人が好きなの。
あの人のためだったら、何だってできるわよ。
涙だって、流して見せれるわよ」
俺は言葉を無くしてしまった。
治安関係者に連れて行かれるゆかりちゃんの後姿を眺めながら、ゆかりちゃんとの日々が、俺の頭の中に甦ってきた。
俺は少し女の子と言うものを誤解していたのかもしれない。
確かに体力的には男より弱いに違いないが、だからと言って、男より弱い生き物とは限らないのかもしれない。
好きな人のためなら、あれだけの事をやってのけるしたたかさ。
俺はこの戦いの中で、色々学んだ気がした。
自分の大切なものを守る覚悟。
自分の力を信じる気持ち。
その一方、行き過ぎた過信に対する反省と、仲間との連携。
そして、女の子のしたたかさと行動力。
その背景にある一途な想い。
この世界は再び平和を取り戻した。俺は普通の高校生活に戻り、相変わらず陽香と玲奈に付きまとわられている。
「亮君に触らないでもらえません?」
「だからぁ、亮は私のなんだから」
「陽香さんに、亮君は渡しませんよ」
そう言って、左右から俺の腕を掴んで、二人はにらみ合っている。
もう二股かけようと言う気も無い俺は、俺への一途な想いに応えるため、いつかはどちらかを選ぶことになるんだろう。
だが、まだ今の俺はこの二人のどちらかを選ぶ事はできない。
今はとにかく、逃げるか。
俺は二人の腕を振り払って、駆けだした。
「待って、亮君」
「何すんのよ、亮」
そう言って、二人が追いかけてくる。振り返って、そんな二人を見ていると、こんな二人がいる幸せな生活を守れてよかったと思わずにいられなかった。
まずはじめに、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品はアニメで見たパイロットって、かっこいい!と言う単純なところから、書き始めました。
評価、感想やアドバイスなどいただけたら、うれしいです。
それが私のエネルギーになります。
最近はちょっとエネルギー切れ気味で、そろそろ限界を感じていますので、なおさらです。
本当に、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




