俺と彩加って、運命なのか?
「すでに警察に連絡はしているのだが、どうやら水上さんの後をつける不審人物がいるようだ。
今朝も校門近くまで、つけてきていたらしい」
何だそりゃ?
それが本当だとして、俺に何をしろと言うんだ?
俺が返す言葉も見つけられずに、顔を横に向けて担任を見た。担任は一度頷いて、話を続けた。
「彼女を送って行ってやってほしい」
「はいぃ?
何で、俺なんすか?」
ひそひそモードでの話だった事を忘れて、俺が思わず大声を出してしまったので、教室の中にいたクラスメートたちが何事かと俺を見た。
「何でも無い。
何でも無い。
用に無い奴はさっさと帰れ」
担任が手をぱんぱんと叩いて、残っていたクラスメートたちを教室から追い払おうとする。そんな担任の行いに、俺と担任が何を話しているのか気にしつつも、クラスメートたちは教室を後にしていく。 もちろん、陽香と玲奈も教室から出て行こうとしている。
「寺沢。
この子の家はお前と同じマンションだったんだ」
「まじっすか?」
俺は目が点だ。嘘のような話である。それが本当だと言うのなら、俺と彩加はもしかしたら運命なのかも知れない。
担任は落ち着いた表情で、頷いていやがる。
でも、待て。
問題はストーカーだろ?
この子はストーカーから逃れて、転校してきたのか?
それも嗅ぎつけて、ストーカーがここまで来ているのか?
だとしたらだ、そいつは危険すぎやしないか?
確かに俺の運動神経は人並み以上だ。ゲームなんかでは、俺の視力に認識能力、そして判断力に指先を動かす神経で、並び得る者など皆無だが、現実社会で犯罪者と戦うスキルなんか持ち合わせていない。
「先生。それはちょっとまずいっすよ。
彼女、ストーカーに付きまとわれているんしょ。
俺じゃあ、対応できないっすよ」
「警察にも言っているし、彼女が言うには誰か男の人がいれば何もしてこないって言ってるんだ」
「まじで?」
俺が真剣な表情でたずねた。
「ああ。
だから、頼むな」
担任は大きく頷くと、俺の肩をポンと叩いて、彩加にも頷いて教室を離れはじめた。
ま、ま、待て。
それって、もう俺が承諾したって事になってるのか?
慌てて、俺が背を向けて去ろうとしている担任を追いかけようとした時、彩加がにこりとして、一度頭を下げた後、一歩踏み出して、俺に近づいて言った。
「寺沢君。
ごめんね。
でも、彩加、うれしい」
またまた、彩加が胸のあたりで両手を結んで、首を少し傾けながら、微笑んでいる。
かわいいじゃないか。
もう仕方ない。俺は担任を追いかけるのも、この話を断るのも諦めるしかなかった。




