吹っ切れた俺!
「亮君。
私たちは亮君の味方だよ」
「そうよ、亮。
私たちの前なら、泣いたっていいんだよ。
胸かしてあげたっていいんだからね」
「陽香さんの胸じゃ、ゆっくり泣けませんよ。
私の胸で泣いたっていいんですよ」
「ちょっと、それ失礼なんじゃない!」
陽香が怒り気味に玲奈に言う。
「は、ははは」
二人のやり取りに、俺は笑わずにいられなかった。
本気で笑ったのは久しぶりだ。
「亮君、笑いましたね」
玲奈が少し嬉しそうに言う。
「亮、私の胸を笑ったんじゃないよね」
陽香は少し疑い気味の表情で、俺を少し睨みながら言う。
「いや、違う違う。
二人を見ていると、なんだか嫌な事忘れちゃったよ」
「もう忘れちゃって、思い出さないんなら、いいんだけどさ。
私たちがいなくなってから、また思い出されると困るのよね。
全部、ここで言っちゃってよ」
「そうですよ。
嫌な話って、他人に話すと楽になるんですよ。
私たちに話してください」
そうだった。
こいつらは、そのためにやって来たんだった。
今は確かに笑えたが、こいつらがいなくなると、またうじうじと考え込むだろう。それだけ、俺には衝撃的な事だったんだから。
俺は話す事にした。
この前の戦いで、自分がうぬぼれ、暴走してしまった事。
そして、わなにはまった俺を、隊長がその命と引き換えにして、助けてくれた事を。
事の重大さは二人にも伝わったようで、俺が話し終った時、二人の表情も険しくなっていた。
「だから、俺、自分が情けなくて、情けなくて」
「まじ情けないわね」
俺はちょっと予想外の陽香の言葉に、目が点になった。
こんな時は慰めてくれるんじゃないのか?
その控えめな胸で泣いてもいいって、言ったじゃねぇか。
玲奈も驚きの表情を浮かべている。
「だって、そうじゃない。
その隊長さんは、自分の命を捨ててまで、亮にかけたんだよ。
その亮がそんなことで、くよくよして戦いに出れなかったんじゃ、隊長さん可哀そうじゃない」
その陽香の言葉に玲奈の目が見開いたかと思うと、俺の手を握っていた力をさらに込めた。
「そうですよ。亮君。
隊長さんの分まで、頑張らないといけないんじゃないですか?
それが亮君のするべきことだ、私は思いますよ」
俺は目が覚めた気がした。
俺は自分のせいで、隊長さんが亡くなってしまった事を後悔し、責任を感じていた。それで、くよくよして、戦意を喪失していたのでは、隊長さんも草葉の陰で浮かばれないというものだ。
俺の責任の取り方。
それは隊長さんの期待に応え、隊長さんの分まで戦うことなんじゃね?
「そうだよな」
俺は吹っ切れた表情で、二人に言った。
二人が俺に、にっこりとしながら、頷いてくる。
その時だった。
基地内に大音響でサイレンが響き、警報が流れた。
「ミマサカより戦闘機の編隊が接近。
全機、出撃。
ただちに、発進せよ。
繰り返す。
ミマサカより」
俺は慌てて立ち上がると、玲奈の横をすり抜け、テーブルを後にした。
「頑張って、亮」
「おう」
俺は振り返って、手を振る。
「怪我しないでね、亮君」
俺はその言葉にうなずきながら、その部屋を後にした。




