アイヅ エド侵攻
その頃、両国の戦いの主戦場はエドのアイヅとの国境近辺の空域だった。
制空権なきまま、陸上部隊を動かすわけにはいかない。戦争を始めるにあたり、アイヅは海上からのミサイルと戦闘機群で攻撃に出た。
最初の攻撃は、エドの領海すれすれを航行していたアイヅの艦隊から発射された巡航ミサイルだった。目標はエドの軍事施設。特に、レーダー施設と対空ミサイル施設。
ミサイルの発射を検知したエド側が迎撃ミサイルを応射する。
ミサイルの迎撃は100発100中とはいかない。
多くは撃墜に成功したが、一部は軍事施設に着弾し、エドの防空システムにダメージを与えた。
被害はそれだけでは収まらない。
後手に回ったエド側のミサイル迎撃は市街地上空となり、撃墜に成功したミサイルの破片が市街地に降り注いだ。
破壊される建築物。
傷つく人々。
エドの市街地は混乱に陥れられた。
そのエドとアイヅの国境沿いには、両国の間を隔てるように2000m級の山脈がそびえ立っているが、その山脈も両国の南部に広がる海に近づくにつれ、低くなっていた。
ミサイルの攻撃に続き、その山脈の低くなった場所を多くの火力兵器を搭載したアイヅの最新鋭機ケルビエル型AK-5の編隊が越境してきた。
海上からの巡航ミサイルの初撃で、レーダー、対空ミサイルシステムと言った対空防衛システムにダメージを受けていたエド側からの迎撃の主戦力は迎撃ミサイルではなく、戦闘機編隊にならざるを得ない。
スクランブル発進で、強力なミサイルを搭載するエドの主力戦闘機ラミエル型ER-Zの編隊が迎撃に向かう。
両国の戦闘機の性能は拮抗していた。
性能が拮抗していれば、パイロットの資質か数がその戦いの趨勢を決める。エド側が一気に形勢を決しようと、大量の戦闘機群をアイヅが越境してきているエド南部に向かわせる。
しかし、両国を隔てる山脈にはもう一か所、低い場所があった。その位置は南北に延びる両国の国境のほぼ中央。
アイヅの国内ではAK-5の別の大編隊が山脈の斜面に沿うように低空で飛行し、その山脈の低い場所を目指している。
レーダーシステムの一部が破壊されてしまっている事と、高い山が邪魔してエド側はこの編隊の動きを掴めていなかった。
その大編隊が突如越境して現れた事で、エド側の混乱はさらに深まった。
近づく戦争の足音に、学校は急きょ時間を短縮して下校となった。
授業が打ち切られ早く帰れると言う、俺たち生徒にとってはうれしい話だったが、不穏な雰囲気に誰も楽しげにはしていない。
俺が鞄の中に教科書とノートをしまっていると、担任に呼ばれた。俺が教壇の上に立つ担任に目を向けると、担任の横には彩加が立っていて、俺ににこりと微笑んだ。
何だろうと俺が近づいて行くと、担任は俺の肩を抱き、教室の中で帰り支度をしている生徒たちに背を向け、黒板に近寄って、ひそひそと俺に話しはじめた。




