クーデター! ヤマシロ国分裂
それから数週間後、玲奈の親父さんである宮内将軍が率いる軍を中心としたクーデターが起きた。エドに攻め込むはずだった国軍は国境近辺から引き換えし、スマの離宮を占拠し、前国王の幽閉を解くと、前国王を再び国王の地位に就いていただくと宣言したが、一部の国軍は現国王と松山に忠誠を誓い、二人を守って王宮を警護しながら、首都の広い部分に展開し、にらみ合った。
ヤマシロの首都近郊は現国王派が、それ以外の広い範囲を前国王派がその勢力下においた。前国王派は国民すべてに向かい、このクーデターの理由をこう説明していた。
すべては宰相 松山がこの国の実権を握り、やがてはこの地域の覇権を掌握するため、寺沢親子を陥れ、10年以上前の人体実験の黒幕を前国王に擦り付け、退位に追い込み、自らが実権を握るため、年端もいかぬ前国王の弟の息子を国王に付けたのだと。
すなわち、自分たちにこそ、正義があり、松山は邪な国賊であると。
このヤマシロの騒動に周辺国が敏感に反応した。
エドは直ちにクーデター派を正式な国家の代表と承認し、ミマサカは突如、越境を開始してきた。首都に主力を置く、現国王派の国軍との戦いに向け、ヤマシロ西部の地域より首都に向かいつつあった前国王派の国軍は背後にも敵を迎えることとなり、引き返してミマサカ軍を迎え撃つことになった。
その話を俺は収監されている部屋を出る時に聞いた。
変な話である。現国王派と停戦していたにもかかわらず、クーデターが起きると突然停戦合意を破り捨て、前国王派の背後を襲うと言うのは。
隣国の騒乱に便乗しようと言う可能性はあるが、それなら松山が前国王を退位に追い込んだ時に、さっさと停戦したのは不自然である。つまり、ミマサカは現国王派とつながっていると言うふうに考えるのが自然である。
とすればだ。ミマサカは松山がこの地域の覇権を握ろうとする事に協力している事になる。
なぜ、そんな事をする?
ヤマシロはミマサカから見れば、異民族国家である。異民族国家に覇権がわたったままでもいいと言うのか?
それとも、ヤマシロが覇権を握った後の便宜を考えているのか?
ともかくだ、俺にはあんなに俺の事を信用しているような話をしてくれていた松山が、俺を陥れた黒幕だったのかどうかは分からないが、まずミマサカを叩かなければならない事だけは確かである。
姉貴に会って、真相を聞きたいところだが、今から俺は戦いに行かなければならない。それは戦いが終わってからである。
今は、目の前の戦いに集中だ。




