どうして俺のパソコンの中に?!
俺が家に到着した時には、すでに家の中には俺の父親が帰っていた。そして、その横にはこの国の宰相 松山が立っていた。
「おお、君があの有名な撃墜王の寺沢亮君か」
俺と松山の間にいた何人もの人をかき分け、松山が嬉しそうな顔で俺のところまでやって来た。
「えっ。あ、いえ。
はい。寺沢亮です」
相手はこの国の宰相である。どぎまぎとしてしまった俺は、そんな返事をしながら、頭を下げた。
俺の視線の先に手が見えた。握手?
俺は慌てて制服で手を拭くと、手を差し出した。
「いやぁ。今日はとんだ災難だったね。
事情は聞いてもらっていると思うが、君がそんな事をする訳ないだろうから、ウイルスか何かにPCがやられているんだとおもうよ。
すぐに分かるだろう」
「はい。よろしくお願いします」
俺がそう言うと、松山は俺の父親に合図を送った。どうやら、俺のPCを調べるのは俺の父親らしい。そして、そんな俺の父親が何かしないように、背後に何人もの男が控えていて、一緒にパソコンの画面と操作を眺めている。
「あの?
まず、何を調べるのですか?」
「ああ、まずは機密情報のファイルが、このPCに入っているかどうかだよ」
松山が俺ににこやかに、説明してくれた。
俺の父親が外国に送られたと言う電子ファイルの名前で検索をかけた。
パソコン画面は俺のPCの中の全ファイルから、指定されたファイル名と同一のファイルが無いか探している。
無いと分かってはいても、いい気はしない。
数分後、PCは同一のファイル名が無いと言う結論を出した。
無いと分かっていても、この結果にほっとせずにはいられない。
「同一ファイル名のものはありません。
いいですね?」
俺の父親が背後の男たちに同意を求めた。
「はい。
確認しました」
男たちはそう言うと、全員が手にしているメモに、その結果を書き始めた。
俺がそんな男たちを見ていると、父親の背後に立っている男の一人が言った。
「ファイル名が変えられている可能性もありますからね。
次行きます」
別の男が、俺に視線を合わせて言う。
「極力特別なソフトは使用しないで、調査します。
特別なソフトに細工があってはいけませんからね」
俺の父親は転送された電子ファイルと同じ拡張子のファイルを全て抽出した。
何十個と並ぶ電子ファイル。
その横に表示されているファイルサイズ。
父親はファイルの大きさから該当しそうなファイルを一つずつ開いていく。
「違いますよね」
さっきと同じように、背後の男たちにそう同意を求めながら、一つずつ確認していく。
そして、半分程度のファイルの確認が終わった頃だった。一つのファイルを開いた俺の父親の目が見開いた。
その反応に父親の背後の男たちが、パソコン画面を食い入るように視線を向けた。
「あった」
その声に皆が俺に視線を向ける。予想外の展開に俺は一瞬唖然とした後、パソコンの周りの男たちを押しのけ、画面に顔を近づけた。
俺には見覚えもなければ、何が書かれているのかもさっぱり分からない資料が映し出されている。
「亮、お前、これをどこで手に入れた?」
父親が真っ青な表情で、俺に聞いた。
「お、お、俺?
知らないよ。こんなファイル」
俺はそう言いながら、周りの反応が気になって、辺りを見渡した。みな、驚きの視線を俺に向けている。完全に俺が犯人になっているではないか。
「いや、ほんと。俺知らないって」
「うんうん。
君が犯人な訳がない。
すべては持ち帰って、このパソコンを詳しく調べてみるよ。
それでいいかな?」
松山がこんな状況でも、俺を信じているよと言わんばかりの笑顔で、俺に言った。
「ありがとうございます」
俺は思いっきり、頭を下げた。きちんと調べてもらえば、俺が犯人じゃない事は分かるはずだ。俺はそう思っていた。
そんな俺を松山は頷きながら眺めた後、父親に視線を移した。
「寺沢さん。
疑う訳ではないが、全てを確かめるために、この家にあるPC全てを持ち帰らせていただけませんか?」
言い方は丁寧だが、宰相の発言である。半ば強制である事は、俺だって分かる。
俺の父親はそう言う意図と俺の無実を証明するためにも、それが必要だろうと松山の申し入れを受け入れ、俺の家の中にあった俺のPCと父親のPCを持ち帰って行った。




