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漏れた軍事機密

 一方、蛮族を牽制するために飛び立った我が国の戦闘機部隊はとんでもない罠にはめられていた。

 ヤマシロの北方に延々と東西に連なる長城。そのほぼ東西の真ん中付近に集中し始めていた蛮族を叩くため、蛮族が集中していない西側のゲートを開き、陸上部隊が蛮族のテリトリーに侵攻し、蛮族の側面を突く。それと呼応して、長城の城壁側からも一斉攻撃を行い、蛮族たちに大打撃をを与える。

 その作戦を援護するため、予備役を中心とした4小隊16機がミマサカとの国境近辺を北上し、蛮族のテリトリー上空に侵入した。


 陸上部隊が侵攻して行く妨げとなるような蛮族の兵力は存在しない。それを確認し、針路を東に変え、蛮族が集中する場所に移動しようとし始めた時だった。

 北方より向かってくる戦闘機部隊をレーダーが捉えた。

 蛮族。

 何も、毛皮を着て、やりを持っている未開人ではない。

 それなりの技術を保有し、それなりの兵器を持っている。ただ、法治と言う概念を持っていないため、蛮族と呼んでいるだけである。

 ヤマシロの編隊が向かってくる蛮族の戦闘機部隊を迎え撃とうと、針路を再び北に取る。両者の距離が接近した。


 「ミサイル統合管制システム オン」


 隊長機の命令に従い、全機がミサイル統合管制システムをオンにしようとした瞬間、操作パネルがエラーを表示し、コンピュータシステムがメッセージを流した。


 「システム全周で異常ノイズを確認。

 システムを起動できません」


 予備役でも十分な戦闘力になるのは、このシステムが放つ初撃で、敵の戦力を大幅に削ぎ落せるからである。それが作動しないとなると、不利になってしまう。

 この状況が伝えられたヤマシロ軍はただちに、蛮族の戦闘機部隊を攻撃するため、陸上部隊を蛮族のテリトリーに侵攻させると共に、対ミマサカ作戦のために用意していた戦闘機部隊を援護に向かわせた。

 そして、蛮族のテリトリーに侵攻していた4小隊にはただちに引き返すよう命令を出した。蛮族の戦闘機ならその性能差から、転回して引き返したとしても振り切れる。そう言う判断だった。

 ところが、蛮族の戦闘機と思われていた機影を振り切る事はできず、4小隊の後方に付けてきて、対空ミサイルを発射した。

 16機のYM-1戦闘機が散開し、ミサイルをかわそうとするが、追尾をかわすことができず、次々に撃墜されて行く。

 16機全てを撃墜した蛮族の戦闘機編隊はそのまま南下を続け、長城を超えて侵攻を始めたヤマシロの陸上部隊の前に姿を現した。

 それは蛮族の戦闘機ではなく、ミマサカが誇る攻撃戦闘機カマエル型MC-Xだった。MC-Xの編隊はヤマシロの地上部隊に接近すると、地上攻撃に移った。元々陸上の蛮族攻撃を目的に編成された部隊の防空能力は乏しく、されるがままの攻撃を受け、退却を開始した。

 ヤマシロの国境に接近してきたため、ヤマシロ国内から対空ミサイルが発射されると、MC-Xの編隊はミサイル発射を感知したのか、蛮族のテリトリー奥深く姿を消したため、援軍に向かったヤマシロの戦闘機部隊はその空路の途中で引き返して行った。


 ヤマシロ側が被った被害は大きくはなかったが、軍に与えた衝撃は大きかった。

 その衝撃の一つはミマサカが蛮族と組んでいる可能性が高いと言う事であり、この戦争がずっと以前より静かに計画されていた可能性がある事である。

 とすると、周到に準備された戦いであり、どのような策謀が巡らされているのか分からないことになる。

 もう一つは、ヤマシロが誇るミサイル統合管制システムが作動できなかった事である。このシステムは各戦闘機、各ミサイルを一つのコンピュータが一括制御するため、いくつもの周波数の電波を使って、通信を行っている。

 その情報はデジタル的手法とスペクトル拡散によって、暗号化さると共に、一部の妨害電波が出されていても、システムの運用に障害をきたさないように作られている。それが、使えないと言う事は、このシステムが使用してる全ての周波数が敵に知られていると言う事を意味した。

 このような情報は最高機密であり、それを誰かが漏らしたと言う事であり、まずはこの情報がどのように漏れたかを突き止めなければ、今後の改善策も意味をなさない事になる。

 当然、ヤマシロの軍、諜報機関、治安機関はこの情報漏えいの犯人探しに総力を上げ、ミマサカへの侵攻作戦は中止となった。

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