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蛮族集結

 そんな彩加の行動に、彩加の席の近くの生徒たちが立ち上がり、何事かとのぞきこんだ。


 「画びょうだ!」


 一人の生徒が叫ぶと、教室中の生徒が立ち上がり、彩加の方に視線を向けた。

 担任も慌てて教壇を降りて、彩加の席に向かっていく。

 しゃがみ込んだまま涙を流している彩加のすぐ横に立って、担任は彩加の椅子の上に置かれた画びょうを手にした。


 「誰だ!

 これを置いた奴は?」


 担任が再びそう言って、教室の中を見渡した。今度はかなり怒りの形相で。

 男子がこんな事をやる理由は無い。やったのはきっと、女子の誰かだろう。それは間違いないだろう。しかし、誰が。

 俺がそう思っていた時、彩加が突然立ち上がると、嗚咽しながら、ドアを目指して走り出しはじめた。


 「おい、水上」


  担任は叫んだが、彩加には聞こえなかったのか、それとも聞こえていてもこの教室から逃げ出したかったのか、振り向くこともなく、教室を飛び出して行ってしまった。

 そんな彩加を一人にしておけない。

 俺はそんな気持ちになって、彩加を追って駆け出し始めた。


 「こら、寺沢」


 担任の声が聞こえたが、俺はそんな事で止める訳にはいかない。そんな気になっていた。

 生徒たちは教室に入っていて、廊下には誰もいない。

 彩加は女子だけに俺より足は速くないだろうところに、足を怪我していて、さらに遅い。

 俺は階段の踊り場で、彩加に追いついた。


 「待て。彩加」


 俺は彩加の肩に手をかけて、そう言った。

 その瞬間、彩加は振り返って、俺に抱き着いてきた。俺には彩加の小さな嗚咽が振動となって、伝わってくる。

 一瞬、戸惑ってしまったが、俺はそんな彩加をぎゅっと抱きしめた。




 そんな頃、法治と言う事を知らない北方の蛮族と俺たちの国を隔てている長城付近は異様な雰囲気に包まれていた。

 続々と集結してくる蛮族たち。今にも攻撃をかけてきそうである。武力的には劣っていても、蛮族には人の数と言う武器がある。仲間の屍を乗り越えても、攻めてくる。

 しかもまずい事がヤマシロ側にはあった。ミマサカへの侵攻に備え、多くの戦力が北方ではなく、西方に移動してしまっていた。

 この事態に、この国の宰相 松山正秀は航空戦力を蛮族に投入することを決定した。

 とは言え、ミマサカとの国境に集中させている戦力を北方に移動させようとすると、背中を見せたその隙を突いて襲ってこないとも限らない。

 松山宰相は予備戦力の招集をかけ、蛮族攻撃に向かわせることにした。蛮族ごとき、予備戦力で事足りると言う判断だ。

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