御簾越しの会話
黒光りする木でできた床。その部屋は三面から採光され、自然の光が導かれてはいたが、あまりにも広い空間である事と照明を制限しているため、部屋の中はほのかな照度でしかない。そして、採光されていない閉ざされた一面には床より一段高い場所が設けられていて、御簾がかけられていた。
その御簾のため、容姿は確認できないが、御簾の奥には一人の男が椅子に座っており、御簾の前には一人の男が跪いていた。
「計画に齟齬が生じたようだな」
御簾の奥の男が低い声でそう言った。
「はい。
ミマサカが攻め込んだ段階で、引き返してくると思っていたのですが。
まさか、後方の予備戦力だけで、ミマサカ軍を撃退するとは予想外でした。
作戦の基本的な流れに影響はまだありませんが、アイヅとミマサカの戦力ダウンは今後に響いてくるかも知れず、我々の戦力を再び投入しなければならないかも知れません」
「巷では、一人の高校生が撃墜王ともてはやされているらしいが」
「はい。
この者は私の例の計画のS級にランク付けされた者で、計画が発覚するきっかけとなった者です」
「ほぉ。因縁ある者ではないか。
して、その腕前は?」
「我が方にもSランクは二機存在しますが、Sランクを細分化したなら、この者は我が方のSランクを大きく上回っておりました。昔の話ではありますが」
「それは厄介ではないのか?」
「はい。
ですが、陛下、ご心配はいりません。
その者はあの寺沢敦の息子でありますので」
男のその言葉に御簾の奥に低く、押し殺したような笑い声が響いた。
「それはおもしろいではないか」
「はい。
彼には今後、活躍してもらいますよ」
跪いている男も、笑いをかみ殺しながら言った。
「では、作戦を次の段階に進めます」
「うむ。
任したぞ」
御簾の前に跪いていた男は深く頭を下げると、その部屋を後にした。




