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爆撃機を撃墜せよ!

 みなの力でミサイルを全て片づけかけた頃、俺たちのミサイル攻撃を潜り抜けた敵機が射程に入って来ていた。

 情けない話だが、俺の闘争心は鈍った。

 今度狙う相手は機械のミサイルではない。

 人が操縦している戦闘機である。

 俺が撃墜するたびに、人が一人死んでしまうんだ。

 その時だった。

 機体のスピーカーから、新たな命令が聞こえてきた。


 「敵機編隊後方に爆撃機。

 カツラ市街を爆撃中。

 爆撃機を撃墜せよ」


 俺はレーダー画面を見た。

 俺が今いる空域には戦闘機が集中していたが、そこから離れて敵機が二機、それを取り巻くように十機が確認できた。

 俺が慌てて、カツラ市街の方向に目を向けると、はるかかなたの地上で火の玉がいくつも湧き上がっていた。


 「市民を巻き込む無差別爆撃は禁止だろうが」


 俺は一人、機内で叫んだ。

 大勢の何の罪もない人々が今、あの場所で死を迎えている。

 ここで、食い止めなければ、この惨劇はこの国のさらに多くの場所に広がって行くに違いない。

 それは俺の街だったりするかもしれない。

 あの火の玉の中で、死を迎えるのが、俺の家族だっり、陽香、玲奈、彩加だったりするかも知れないのだ。

 そう思った瞬間、萎えかけていた俺の闘争心に再び火が点いた。

 俺は俺の大事なものを守る。

 奴らは人間ではないのだ。

 敵と言う、俺たちに危害を加える人とは別の存在なのだ。

 敵は抹殺すべし。


 「うぉー」


 俺はそう叫ぶと、操縦桿を握り、急上昇を始めた。

 乱戦状態になりつつあった戦闘空域から離脱し、爆撃機を襲う。

 他の何機かも戦闘空域を離脱して、戦闘空域を目指している。

 最大戦速で高高度を移動し、敵爆撃機に近づくと、急降下を始めた。

 俺を迎撃に向かってきていた敵機がミサイルを発射した。

 俺は機体を起こして、水平飛行に移る。

 巨大なGに、俺の体が前のめりになりそうになるのをベルトがシートに縛り付けると共に、パイロットスーツが俺を締め上げる。

 けたたましい警告音が鳴り響き、ミサイルが接近してきている事を俺に知らせた。

 俺の後方に二発のミサイルが食いついてきている。

 俺は猛スピードで、敵の爆撃機をはるか上空で抜き去りると、高度を落としながら、急旋回を切った。

 急な旋回に俺の体に巨大なGがかかったが、機体もそのGに悲鳴を上げている。

 敵のミサイルは大回りして、俺の後方に再び張り付いた。

 俺は一気に敵の爆撃機を目指す。

 敵の護衛戦闘機が俺を撃墜しようと旋回するのが見えた。


 「射程距離だぜ!」


 俺はそう叫ぶと機銃を旋回しようとしている敵機針路の先に向け、トリガーを引いた。

 断続的な軽い衝撃。

 続いて、敵機から煙が上がり、高度を落としていくのが見えた。爆撃機周辺では友軍機と敵機が戦いを演じているのが見えたが、俺は手を貸している余裕はない。

 少し減速し、俺の尻に食いついてきているミサイルとの距離が適当な距離になるまで、近づけながら、爆撃機の後方に迫った。

 爆撃機の後部に銃座があって、俺に向けられようとしているのが見えた。俺は照準を爆撃機の銃座に合わせて、トリガーを引いた。

 銃座を覆う強化ガラスが砕け散り、敵兵が真っ赤に染まった。

 俺はそのまま爆撃機に接近すると、爆撃機の翼の下に潜り込むと同時に、エンジンを切った。

 俺の尻を追っかけていた敵のミサイルは、吸い込まれるように敵の爆撃機のエンジンに突っ込んだ。

 片翼を吹き飛ばされた爆撃機が、飛行能力を失い、落下し始めると、翼の炎が燃料に引火したのか、爆発を起こした。

 爆発は爆撃機内部の爆弾を誘爆し、その衝撃が俺の機体を激しく揺さぶる。

 慌てて、エンジンを再始動して、操縦桿を握る。

 俺は再び機体を引き起こすと、戦闘が行われている上空を目指す。

 爆発した爆撃機の飛び散った小さな部品が俺の機体にあたり、甲高い感じの衝撃を伝えてくる。

 俺が目をやった上空ではすでに友軍機は全て撃墜されたのか、視界に入った戦闘機全てが俺を目指して飛んで来ようとしている。

 だが、俺の友軍機たちも頑張ってくれていた。敵機の数は三機しかいない。

 俺は旋回しながら、上昇する。敵機は俺を狙って、下降しながら旋回してくる。

 最大戦速に加速すると、俺の後方に敵機の機銃の銃弾が雨のように降り注ぐ。

 そのまま、俺は急上昇で敵の上空を目指す。

 敵機が機体を起こして、水平飛行に移って、その正面に俺を捉えようとする。

 俺の機体のエンジンが悲鳴を上げる。

 コックピット内に警報音が鳴り響く。

 エンジン性能の限界である。

 ここで、緩める訳にはいかない。

 もう少しだ、頑張ってくれ。

 俺は加速を緩めない。

 敵機が機体を水平まで戻した時には、俺は敵機の上空に達していた。

 そのまま俺は上昇して、敵の残った爆撃機よりも高い上空まで上り詰めた。

 俺は再びそこから、急降下を始めた。

 目指すは敵爆撃機。

 敵機はそんな俺を撃墜しようと俺に狙いをつけ、三機が固まってくれているではないか。

 俺は機体構造の限界を超えるほどの操作で、機体を立て直しながら、旋回した。

 翼からの悲鳴のような振動が激しく伝わってくる。

 敵の銃弾が俺のいない空間を空しく切り裂いていく。

 俺の機体の機首は敵機を真正面に捉えた。

 機銃のトリガーを引くと、敵機が炎と煙を上げて、落ちて行く。

 次。次。

 三機を立て続けに葬ると、俺は爆撃機に向かって行った。

 護衛の戦闘機のいない爆撃機は単なる馬鹿でかい的でしかない。

 この戦いで俺たちは二機の爆撃機を葬り、多くの戦闘機を撃ち落としたが、俺たちの側の被害も甚大だった。

 生きて戻れなかった多くの仲間たち。

 幸いなことに、俺の友人でパイロットになった奴はいなかったので、この戦いで亡くなった奴はいないが、俺と同じ年齢で亡くなった奴はかなり出た。

 それだけではない。

 爆撃と撃ち落された敵、味方の戦闘機により破壊された街。

 この多くの犠牲の代償として、エドに攻め込んできていたアイヅに大打撃を与え、敗走させた事で、東側の安定確保をヤマシロは得た。

 当面の敵はミマサカだけであるが、戦力を大幅に削がれたミマサカが直ちに攻め込んでくることはなく、俺たちの国は陸上部隊を主力として、侵攻の準備を整える時間も得ることができた。

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