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10年以上前の国家のわな

 母親に連れられて訪れたショッピングモール。そこにあったゲームセンター。

 ピカピカと光る電飾。楽しそうな人々の声。心をくすぐる電子音。

 俺は引きつけられるように、母親の手を引っ張って、その中に入って行った。

 透明な箱の中に入ったぬいぐるみ、お菓子におもちゃ。

 クレーンのようなもので、ひっかけるらしい。

 初めて見る物に俺は目を輝かせて、辺りを見渡す。

 大きな紙コップのような入れ物にコインを入れて、持ち歩いている人。

 その向こうには、吸血鬼の城を思わせる不気味な映像を映し出した大きな画面があった。

 俺は母親の手を振り払って、そこに駆けて行った。

 その前にあるシートに座って、操縦桿のようなものを操作して、画面の中の吸血鬼を倒していくらしいが、画面は二重にだぶっているようで、見づらい。

 あとで分かったが、眼鏡のようなものをつけると立体に見えるものだった。

 じっと見ていると、ゲームの内容が分かった。

 そのゲームは画面の廃墟と化した街を、戦闘車両で駆け抜け、救いを求める生き残った人々を収容しながら、街に潜む吸血鬼を銃撃により倒すと言うものだった。

 ゲームのポイントは、画面上に現れる者が生き残った人間なのか、倒すべき吸血鬼なのかを瞬時に見分けられるかと、画面の右下に出ている動く者の存在を示すレーダー状の情報を見落とさず監視できるかであった。もちろん、照準の腕も必要であるが。

 俺がじっと、それを食い入るように見ていると、母親が一回だけと言う条件でそのゲームをやらせてくれた。

 俺にとって、初めてのゲームだったが簡単だった。

 吸血鬼共だけを倒し、人々を救出していく俺の背後には、いつの間にか大勢のギャラリーが集まっていた。


 背後が騒がしいな。


 俺はその程度にしか、思っていなかったが、滅多に到達できない最終ステージと言うところまで、俺はたどり着いていた。


 「すげぇな。この子。最後のステージは初めて見たよ」


 俺の背後がさらにざわめき始めていた。

 最終ステージは吸血鬼製造システムのある研究所で、俺はそこでも吸血鬼共を倒し続け、製造システムのある棟の前で戦闘車両を降りて、中に侵入していく。

 ここでも、あちこちから突然吸血鬼が襲ってくるが、俺の前に現れた瞬間に葬られて行った。

 そして、この棟の奥深い部屋に、吸血鬼の製造システムがあった。

 その部屋には多くの吸血鬼がいただけでなく、製造システムからは一定間隔で、吸血鬼が生み出され襲ってきた。

 元々部屋にいた吸血鬼や製造された吸血鬼たちを倒し、その攻撃をかわしながら、製造システムを破壊しなければならないのだが、製造システムにはどうやら何らかのシールドが施されているようで、俺の攻撃はことごとく跳ね返された。

 俺はその結果から、システムの構造を理解した。

 吸血鬼が出てくる瞬間しか攻撃のチャンスがないのだ。

 なので、この部屋にいる吸血鬼をまず全滅させ、新たな吸血鬼が出てくる時を待つ。

 そして、その吸血鬼ごと、あるいは隙間をついて、製造システムを破壊するのだ。

 俺は部屋に残存している吸血鬼を倒すことに集中した。

 俺が吸血鬼たちと戦っている間にも、次々と吸血鬼が製造される。

 一体が製造されるまでに、二体は倒さなければ、ミッションを果たすことはできない。

 俺は全神経をこの場にいる吸血鬼に向けた。

 やがて、部屋の中の吸血鬼たちはいなくなった。


 「すげえ。吸血鬼を全滅させたぞ」


 背後のギャラリーたちから、そんな声が聞こえていた。

 俺は照準を製造装置の吸血鬼たちが出てくるドアのような物に向け、その瞬間を待った。

 ほんのしばらくすると、そのドアが開き、吸血鬼が飛び出してきた。

 俺は狙いを定め、吸血鬼に攻撃を放ち、そのまま製造装置にも放ったが、これは虚しく跳ね返された。

 俺には次の手があった。

 俺の背後のざわめきをよそに、再び照準を製造装置に向けていた。

 そして、再びドアが開き、吸血鬼が姿を現した。

 俺は吸血鬼の顔の横すれすれに攻撃を放った。

 そして、すぐに吸血鬼自身に照準を合わせ、打ち抜いた。

 製造装置は爆発し、最後に生み出された吸血鬼も倒れた。


 「うぉぉ。やったぞ。」


 俺は最終ステージもクリアしたが、俺自身より、背後の方が興奮気味だった。


 あの時のゲームが実はただのゲームではなく、国家の中枢までが絡んだとんでもないシステムで、戦闘に適した人材を選別するためのもだったとは、拉致される寸前で救われた後になって、俺は知った。

 しかも、その事件の黒幕は今の国王の弟で、その実務を取り仕切っていたのは菅原隆弘と言う俺の親父の友でもあり、戦闘機開発で親父と肩を並べる人物だった。

 そして、現国王の弟はその時、処刑され、菅原は国外に逃亡している。

 そう言う悪い奴らさえ、俺の力を欲しがるほど、俺の腕前はやっぱり天才なのかも知れない。


 そう。俺ならやれる。


 俺は全神経をこの空間に存在する敵ミサイルに集中した。

 すでに多くのミサイルは撃墜あるいは命中して、残存しているミサイルは少なかった。

 そんなミサイル一つ一つに狙いを定め、俺はその針路の先で待ち構えられるよう、操縦桿で機体をコントロールし、機銃でミサイルを撃墜して行った。

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