二人の幼馴染
俺が住む国、ヤマシロは東を大国エド、西を経済大国ミマサカに挟まれた科学技術立国である。そして、南は海、北は蛮族ドートン人のテリトリーで、その境界には長城が築かれ、蛮族の侵攻を防いでいる。
パックス・エドーナによって、俺の国の周辺では俺が生まれてからこのかた、戦争は起きちゃいない。
だが、いつ戦争なんて起きるかは分からない。17歳の俺は高校生でありながらも、兵役義務によって、週末は戦闘機のパイロットだったりするのだ。
そんな俺の平日はもちろん高校生をしている。
朝の学校の廊下は騒がしい。俺の近くにいる女の子たちのテンションは高く、途切れる間もなく、おしゃべりが続いている。俺はそんな周りの雰囲気に押されながら、女の子たちの歩調に合わせて、ゆっくりと廊下を進んで行く。
3-2。
俺の教室の看板が見えてきた。
「さて、また今日も授業か」
俺がそう思った時だった。
「もう。亮ったら、なんで私の事無視すんのよ!」
背後から、俺を非難する声が聞こえてきた。
振り向くと、同級生で幼馴染の山上陽香がふくれっ面で、少し息を切らしながら、俺の後ろに立っていた。
陽香は濃い茶色の肩までの髪をした小柄な女の子である。胸が控えめなのと、気がきついところが、ちよっと難である。とか言っても、俺もまんざらではない。
「何の事だよ?」
はっきり言って、無視した覚えはない。
「亮が駅で電車を待っている時、私、電車の中から手を振ったのに、無視して私の乗っているところまで、来てくれなかったじゃない!」
「はいぃ?
何それ?
俺、お前の事、気付いてなかったし」
確かに俺の動体視力は卓越している。が、なんだ目の前を過ぎて行く電車の中に乗っている人間の顔をいちいち見るほどの暇人じゃねぇ。
「私があんなに手を振ったのに、気付かなかったって言うの!」
陽香のふくれっ面は今にも破裂しそうなくらい膨らんでいる。
困った。どうしていいのか分からずにいた時だった。
「亮君、どうしたの?」
また背後から、声がした。
俺は助かった!そんな気分で、振り向いた。
そこに立っていたのはこれまた同級生で幼馴染の宮内玲佳だった。
玲佳は黒く輝く長いストレートヘアーが魅力的な女の子で、陽香とちがって、優しくかわいく、そして胸もあって、スタイルがいい。
当然、俺としても興味があるのだが、全くタイプの違う陽香にもひかれているところがあって、玲佳と陽香には等距離を保っている。
「何よ、横から。
邪魔しないでよね!」
「邪魔も何もねぇだろうが」
俺がそう言った時だった。玲佳がすっと手を出して、俺の手を握ると、教室に向かって歩き始めた。驚きと怒りの表情を浮かべた陽香の前を、玲佳が俺の手を引っ張って歩いて行く。そんな玲佳の行動を黙って見ているような陽香じゃない。
俺の思いは正しかった。
陽香が俺のもう一方の手を掴むと、教室と逆方向に引っ張った。
「痛てぇよ。
俺は綱引きの縄かよ!」
右手を陽香に、左手を玲奈に引っ張られている俺が、不機嫌そうな声で怒鳴る。
「あれ?
寺沢、今日も朝から、あつあつ?」
通りすがりの友人が、そんな俺にからかいの言葉をかけて行く。
「ばかやろう!
あつあつなもんか。痛って、言ってんだろうが」
通りすぎていく友人に怒鳴る。そんな時、俺を引っ張る力が緩んだ。
「終わったのか?
助かったぜ」
俺がそう思って、二人を見た時、俺はまたまたどうしていいか分からなくなってしまった。
俺をはさんで、陽香と玲佳がにらみ合っているではないか。
勘弁してくれよ。
俺の正直な気持ちだった。




