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一章 エージェントと悪魔

1章です。

プロローグから続いて、自由気ままに書いています。

ご気軽に楽しんでいただけたらと思います。

 破滅の日は突然きた。

いつもの日常を送っている最中、悪魔たちが天界に侵攻を仕掛けてきた。

今回はいつもの小競り合いではなく、奴らも全ての幹部たちを使って全力で襲ってきている。

戦いは長く続き、籠城をしていた私にもついに刃が向けられた。

 そんな不利な状況でも天使エージェントたちがなんとか私を現世に逃がしてくれたけど、捕まるのは時間の問題でしょう。

 狙いは私が持っているこの力だ。”レア”は私のこの力を使って天界を侵略する気だろう。

どうしてこんなピンポイントで彼女が欲しがる力が顕現してしまったんだろう。

 そして誰からこの情報が漏れて悪魔たちに伝わってしまったのだろう。

 人が多いこの街中で私はひたすら走っている。通りすがる人は物珍しそうに私をみて何事もなかったように目をそらす。

 天界では天使と悪魔、二大組織の全面戦争が起こっているのに、呑気に過ごしている彼らが羨ましい。


走り続けていると次第に人通りが少なくなり、少し息苦しさから解放される。

しかし、私を追いかけてくる悪魔たちの気配はずっと感じている。今も私を捕まえようとこちらの位置を探っているようです。

 喉が焼けるように痛い。運動などろくにしていなかったから走るのに慣れていない足は鉄の棒のようになっていた。自分の無力さに思わず涙が出てくる。

 このままでは、せっかく逃がしてくれた者たちに示しがつかない。なんとか。身を隠さなくては。

道から外れ、裏路地に走り込むと何かにぶつかってしまった。

「痛ぁ!」

 聞き覚えのない声に耳を傾けつつ、私はぶつかってしまったであろう人を見る。

路地裏に差し込む青い月明かりに照らされた美しい黒髪と黒い瞳。作業着を着た女性が私を不思議そうに見ている。

っ!悪魔たちに今の声で私の位置を悟られてしまった。このままでは。

 私はその時、とても残酷な考えに至ってしまった。奴らに力を渡ってしまうことはあってはならない。

だったら、私がするべきことは。


 目の前の彼女は何かを察したようにその場を逃げようとした。覆い被さっていた体を引き離そうとする彼女の顔を押さえつけて、「ごめんなさい...」

 そういった後静かにくちづけをした。


 目の前に毎日鏡で見てきた顔が写る。どうやら入れ替わりは成功したらしい。

何が起こっているかを確認するように自分の体を見る彼女にどうしようもない罪悪感が芽生えてしまう。

 世界のためとはいえ、全くの無関係な人を巻き込んで、しかも犠牲になってもらうように仕向けてしまった。

「本当に、ごめんなさい」

 私は精一杯の謝罪の気持ちを込めて彼女に言葉を送った。私を呼び止める言葉に振り返らず、私はひたすらに裏路地に潜って行った。



     ◇



 悪魔たちの気配が消えた。ほんの少し時間が経って私はそれを自覚した。

この体の持ち主である彼女を犠牲にして私は生き残った。

冷たく湿ったコンクリートに膝をつきながら、ひたすらに後悔をし、自分への無力感を感じて。

 どうしようもなく溢れてくる罪の意識。これを払拭する手段はきっとこの世には存在しないのだろう。

途方に暮れてきた道を戻っていると、遠くから誰かの泣き声が聞こえてきた。さっき彼女と入れ替わった場所だ。


駆けつけるとそこには、私の信頼する天使エージェントルーシーが地にふし涙を流していた。

「お嬢様...!申し訳ありません。あなたをお救いできなかった私をどうかお許しください...!」

後悔を言葉に乗せながら、咽び泣く彼女の姿に思わず自分の罪悪感を重ねてしまう。

「...!、誰だ!!」

勢いよく振り返り私を見たルーシーが私に武器を向ける。

「...ただの人間か。ここは危険です。早々に立ち去りなさい」

「いえ、ルーシー。私はここにいます」

「っ!お嬢様!無事だったのですね!」

 驚きと歓喜の表情を浮かべながら手をとるルーシーに私は生き残ったという安心を得た。


ようやく落ち着いた彼女は涙を拭いて言った。

「お嬢様、悪魔たちは目的は果たした、と突然戦いをやめ撤退しました、だから私はお嬢様が連れ去られてしまったと思い込んでしまい悪魔たちの残滓を追ってここまできました。」

 さすが感知能力に長けている彼女だ。私を追跡できた理由に納得していると。

「お聞きします、お嬢様。ここで何があったのか、なぜそのようなお姿をしていらっしゃるのか」

「説明は後です。一刻も早く私を天界に連れてってください」

これは行幸だ。この現世で1ヶ月以上は身を隠し続けなければならないと思っていたが、天界へのゲートを開けられるルーシーと出会えたこと、そして悪魔たちが撤退した今。

 彼女への仕打ち。償えるなら今のこの瞬間しかないと、この体と共に私は誓う。

「全ての天使エージェントに告げなさい。最大戦力で魔界へ侵攻します!」

 間に合わせる、あの人を必ず助けるために。


     ◇


 子供の頃、フローリングに頬をつけて、ひんやりとした木材の感触に浸っていたことを思い出していた。

あれ?私床で寝ちゃってたのかな。家に帰ってきたまでの記憶が全然ない。

身体中が軋んで痛い。仕事のしすぎで筋肉痛なのかな。お腹すいた。冷蔵庫になにかあったかな、なんて、目を閉じながらずっと考えている。

 だけど今日が休日だってことは覚えている。最高に気持ちがいい二度寝を決めようと眠気に身を委ねようとした。

そういえば、昨日のあの子は泣いてたけど大丈夫だったかな。ま、途中で助けずに見てみぬふりをしようとしたんだから心配する理由も責任もないか。


 「じゃねぇよ!私の体返せや!!」

 昨日のことを思い出して、まだ寝ぼけている自分の脳に喝を入れた。

 そうだよ、私あの子に体奪われて、その後に布で何か嗅がされて...

起きあがろうとすると、自分の今いる場所に違和感を感じた。

「何この柵みたいなやつ...」

外の光が穴から差し込んで、おしゃれなインテリアのように交差している木材に手をかけるともう一つの違和感に気づいた。

っ!手錠!?なんで私の手に。昔泊まったビジネルホテルのような匂いを感じながら辺りを見渡す。

周りにはベッド、机、洗面台、小部屋になったトイレ。なんかアニメとかで見たことある。

「うん...牢屋じゃん」

はーーーー!なんで!なんで私牢屋に入れられてんの。助けて!なんもしてないよ!


 ウロウロと牢屋の中を歩いているとキラキラと視界に入る銀髪の髪が目に入った。

そして恐る恐る洗面台にある鏡に写った顔をつついたり、引っ張ったりしてみた。

 やっぱり、昨日の女の子と入れ替わっている。あれは夢ではなかったんだ。


「目が覚めた?」

声がした所に振り返るとそこには、ジャラジャラと装飾品をつけ、金髪で顔がモデルのように整った男が黒いスーツに身を包みながらこちらに手を振っている。

「おはようフランちゃん。ごめんねこんな牢屋に閉じ込めて、でももう少しの辛抱だから」

フランちゃん?この子のことか。

「すいません...ここってどこですか?私って攫われたんですか?」

「そうだよ、君は僕たち冥使めいしが魔界に連れ去っちゃったんだよ。君らは悪魔って呼ぶけどね!境遇的にもう理解してると思ってたんだけどな。もしかして見た目通り、温室育ちの天然さん?」

 なんだこいつ...ペラペラとよく喋るやつだな。めいし?とかよくわかんないこと言ってるし...

「なんのために攫われたんですか?家に帰して欲しいんですけど...」

金髪の男はポカンとした顔で、笑い出したかと思えば急に真顔になって、

「ダメだよ。君の能力は"レア"様にとって唯一無二。魔界に差し込んだ最後の希望なんだから」

思わず顔が曇る。能力とか希望とかよくわからないけれど、これだけはわかる。

 私はもう家には帰れない。

暗い表情に邪魔をするように彼は言った。

「本当に何もかもが僕たちにメリットしかない偶然。君はレア様のために生まれてきたようなもんだよ!うらやましいなぁ!僕如きの力じゃあなんの手助けもできなかったからね!」


 ごちゃごちゃと喋っているこいつの話は全て耳から通り抜けていく。どうしようもない絶望感に打ちひしがれながら俯いていると、ピンク髪の女が金髪の男を呼びにきた。

「アモン様ぁ!そいつ起きた!?コルンちゃんが準備できたから連れてこいって!」

「ん!了解!んじゃフランちゃん。レア様のところに連れて行くから、牢屋から出ていいよ」

 言われるがままに牢屋の扉をくぐって、アモンと呼ばれた男に背中を押されながら歩いていく。

あぁ、私がなにをしたんだろう。あのクソ上司に心の中で悪口言ったからかなぁ。それともなんの目標なく生きている私に神様が罰を与えたのかなぁ。

 まるでこれは、処刑台に送られる罪人の気分みたいですごく憂鬱。


     ◇


 豪華な和風のお城のような鮮やかな廊下を歩き続けると、目の前に二階建ての家ぐらいの高さの扉が見えてきた。

扉の前には、先ほどアモンという男を呼びにきたピンク髪の女の子、真っ黒なドレスと長い髪をたなびかせた妖艶な美女、そして時代劇で見たような着物と刀を腰に差した男が立っていた。

「コルン!レア様の体調はどうだ!」

「えぇ、お身体は痩せ細り、相変わらず寝たきりでとても元気とはいえませんが」

コルンと呼ばれた女が私を蛇のようにじろりと横目に見た。

「天界のお嬢様を確保した。と報告したところ大層お喜びになって、今は御座にお座りになられて待っておられます」

「え!レア様起きてるの!すごい!」

「大丈夫なのか?もし主の身になにかあれば...」

「大丈夫だ!!その心配も今日で全てなくなる!REA様の完全復活だ!」

 何が何だかわからない私を差し置いて、なんだか盛り上がっている。レア様?っていう偉い方がご病気なのはわかったけど、私となんの関係が?

 落ち込んだ気持ちも少し落ち着いて、多くある疑問を整理していると。

「「「「!!!」」」」

なんだ?こいつらが急に黙ったぞ?

「承知しました。ただいま彼の者をお連れします」

え。え。いきなりどうしたんだこいつら。時間とかがきたのかな?

コルンと呼ばれている女性が合図をすると、重く閉ざされた扉がゆっくりと開き始めた。

扉の隙間から光が漏れるのと同時に、扉を取り囲んでいた連中の目はまるで神を拝むかのように輝いている。

 こいつらの言っていることはさっぱりだけれど、話を整理してみると一つ気づいた。

 私、身代わりにされたな。あのお嬢様に。


     ◇


 昔見たミュージカルホールのような広々とした空間が扉の先にはあった。

家に帰れない絶望感など、とうにあのお嬢様への怒りに代わっている中、その人は遠くの上座に座っていた。

女神という存在がいるなら、このような人のことを指すのだと私は思う。

ほんの少し、青みがかりシルクのように透き通った長い髪、赤いダイヤモンドがそのまま目に入っていると勘違いしてしまうほど美しく輝いた瞳。想像の神々が来ているような白い羽衣をまとった女性がそこにいた。


「お前か」


 少女のように、それでいて威厳を感じさせる声色でその方は私に問いかけた。

何かを答えようとしても何もいえない。声が出せなくなっていた。

先ほどまでいた臣下のようなあいつらも何も言わずひざまづいている。


「近うよれ」


彼女に言われるがまま足が運ばされる。自分の意思ではなく、まるで捕食者に命を差し出す草食動物のようなものを自分自身に感じている。


「我のクローンに自らの魂を埋めることも遂には叶わず、この体は朽ち果てるだけだと思っていたが」

レアと呼ばれる女が私の髪を撫で、頬に指を添える。

「まさか、こんなにも我が欲する力を持ったものが生まれるとは思ってもいなかった。我にその体を使ってもらえることを誇りに思うが良い」


 そして終始目を丸くしている私の顎を掴むと、そのまま唇を奪われた。



「...」

「「「......」」」

「...どういうことだ。コルン...」


未だ、その瞳に怒りを表すかの如く赤い光を灯している女が黒髪のあいつに声をかけた。

「どうして...入れ替わりのトリガーはキスをするだけ。そこに相互の意思は関係ないはず...」

たったの六人が存在するには広すぎるその空間に緊張とそこしれない恐怖に思わず嫌な汗を掌に感じる。


「....!....お前は、誰だ....?」


家臣一同がまさかという分かりやすい顔で状況を見る。

「...私は、灰野ザクロと申します...。配送の職に就いております.....」


 瞬間私は思い切り突き飛ばされた。盛大に尻餅をついてものすごく痛い。

「役立たず、どもめ....!体はあっても精神が奴でなければ意味がないだろう....!」

レアは苦しそうに胸を抑え片膝をついた。

「レア様!お体に障ります。フランの精神についてはもう一度私共にお任せを...」

女の手を振り払い、レアは言う

「奴はもう己の体すらも捨てる覚悟でこいつを仕向けてきた。入れ替わりが一度きりかどうかわからない限り、身代わりを用意し続けられれば、永久に見つけられることはなくなる...少なくとも我の寿命が尽きるまでは決して出てこない...!」

 女神のように美しい顔は、全てを悟ったかのように静かにそして嵐の如く憤っている。


「...かしこまりました。これからについては後ほど。ではそのものの対処についてはどうなさいますか」

女は私を見下ろしながら、家畜を見るかのように冷たい目をしている。


「その体はまだ使いようがある。天界の奴らにとっては大きなアドバンテージだ。貴様ら同様、我の呪いで管理をする...」

そういうとレアが右手に赤くドス黒い炎のようなものを纏って私の心臓に触れた。

瞬間、触れられた場所から蜘蛛の巣のような赤い閃光が走って、体を次々と侵食していく。


それと同時にこの城を大きな地響きと爆発音が襲う。ホールの天井に開いた穴から武器を携えた白いスーツを着た者たちが現れた。

「クソ悪魔共、さっさとその子を渡して」

煌びやかな装飾品をつけた際どいスーツで、大きな乗り物に乗って何か言っている。ダメだ。さっきの呪いってやつのせいでまた気を失いそう。

「なんでぇ!なんで天使共がきてんのさ!監視役のゴアちゃんはなにしてんのぉ!」

「打て」

そのセリフを遮るように全ての戦闘員が一斉射撃をした。

まるでライブのレーザー光線のように入り乱れて打ちまくっている。

「ササラさん、それ対戦闘機用機関銃ですよね?絶対に救助者に弾当てないでくださいね?!」

1m以上のライフルを両手で打つ彼女がそう叫んでいる。

「うるさい。わかってる。ルーシーこそクソエイムで灰...なんちゃら打つなよ?」


 天使エージェントたちの一斉射撃をレアや臣下たちに光線の如く浴びせている最中、遠くからジェット機のような音が近づいてくる。轟音と共にもう一度天井が破壊されたあと、ジェットコースターの最高速度のような感覚を肌で感じとる。そして地面に横たわっていたはずの私はいつの間にか空の上にいた。

周りの音を全てかき消す風の音で一種の無音を体験している。花の香りに意識を戻され、気づけば薄緑のまとめられた髪の女性に抱き上げられている。

 女性は胸ポケットから無線機のようなものを取り出した。

「こちら天使エージェントヘラ。灰野ザクロ様を救出完了。全天使エージェントに次ぐ。直ちに撤退せよ!」


 顔中に吹き荒れる風を受けながら空を飛んでいる私は、気を失いかけたその時、確かに抱えてくれている女性にこう言われた。

「ご無事でなによりです。灰野様」

 その自分を気遣う言葉は、張り詰めていた意識を柔らかくほぐすかのように染み渡った。

そして私はもう一度深く眠りについた。

とにかく書き殴った感じで一章は終了しましたね。

場面展開も多くてんやわんやしてましたね。

拙い文章ですがこれからも続きを書いていけたらと思っています。

二章は気長に、ゆっくり執筆していくのでまたよろしくお願いします( ◜ω◝ )

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