表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【年賀状】とかけて【馬の耳に念仏】と解く、その心はーー。

作者: 内向ひとり
掲載日:2025/12/31

挿絵(By みてみん)


 隣の家に住む彼は、高校三年の同級生で腐れ縁だった。

 私が彼を意識し始めたのはいつか、悔しいが覚えていない。



 高校の終わりには進路は違えるものだ。

 そう気づいてから早三年。

 神様仏様(パワースポット)で祈っても、直球で誘っても、どこ吹く風か反応なし。



 もう別れまで時間がない。

 だから今年の年賀状にはこう書いた。



 『元日、玄関で5分間だけでも、耳を貸して。

  声が聞けなくなって終わるのは嫌だから』



 年賀状の余白って、いつも少なくなるから、想いは全部書ききれない。

 だから思い切って、対面で話すことにした。

 これで駄目なら、ただの腐れ縁だ。



 ピンポーン。



 扉を開けると、白い息を吐きながら佇む彼がいた。



「……おう。あけおめ」


「あ、あけ……おめ」


 緊張で言葉が舌の上でもつれる。


「年賀状見た。お前、耳手術するの?

 もし聴力失うんならその前に、俺、もう一度伝えたいことがあって」


「えっ? いや、手術なんてしないけど……」



 確かに私は補聴器なしでは、まともに言葉を拾えないが、手術をする程ではない。



「はあ、何だよあの文面……紛らわしい」


「ご、ごめん。私が言いたかったのは、全然違くてーー」


「待って。俺から言わせてくれ」



 彼は深く息を吐き、私に向き直る。



「お前は耳が悪くて、肝心なことはいつも届かない。

 聞こえてるフリして誤魔化すから、勘違いに気づくのは、いつもぬか喜びした後だ」



「ごめん」


 

「ちがっ、そうじゃなくて!

 つまり俺が言いたいことは、……は……がーー」


 彼は言いづらそうに下を向いて喋り出した。

 口元がマフラーに隠れて、良く聞き取れない。

 冷気にあてられてお互い鼻も耳も赤くなっている。

 ……もう時間切れだろう。ただの腐れ縁だ。



 そう認めた瞬間、頬を涙が伝う。



 その様子を見て、彼は表情がパッと明るくなる。


「その涙は、つまりOKってことだよな!?」


「えっ……うん」


「……お前、また聞こえてるフリしただろ。

 今回は分かったぞ」


 謝ろうと口を開きかけた私の言葉を遮って、彼は口の動きがはっきり見えるように真正面から言葉を被せる。



「俺はお前のことが好きだ!

 例え耳が聞こえなくなったって、今後も俺が拾って届けていく。

 だからーー俺と付き合ってください!」



 言葉の終わりと同時に彼の胸へと飛び込む。

 強い抱擁と共に、見計らったかのように雪が舞い降りた。



 『年賀状』とかけて『馬の耳に念仏』と解く。

 その心は『心に届くのが大事』。



 だから私は、もう、聞こえてるフリをしない。



 Happy new year!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ