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ソラの向こう側は、ユウ闇に煌めく  作者: 乙希々


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13/20

祭囃子。

 ──私は、お祭りが嫌いだ。


 うるさい花火。


 耳障りな太鼓の音、甲高い鈴の音。


 酸っぱいソースの匂い、甘ったるい菓子の匂い。それに群がる観衆。何もかもが嫌で嫌で仕方がなかった。


 そして、行き交う人々の楽しそうな笑顔を見るのがとても耐えられなかった。


 綿菓子なんか美味しくない、ただの砂糖の塊だ。


 浴衣なんか着なくてもいい、窮屈だし、着飾る意味が分からない。


 花火なんか綺麗きれいじゃない。


 何でみんな、楽しそうに笑えるの──。

 


 私がまだ中学生のとき。


 夜にお母さんからのお使いで行ったコンビニの帰り道。


 エコバッグに醤油の小瓶とおやつを抱え、ふとした興味本位で覗いた神社の夏祭り。


 あまりの蒸し暑い熱気と人の体臭で吐き気がした。


 こんな鮮やかで賑やかな光景を見ているだけで、心と身体が拒否反応を起こした。


 それでも、ふらふらと連なる提灯ちょうちんに導かれ、お祭りの喧騒を一人で歩いた。


 あちらこちらで人とぶつかった。


 でも周りは、私のことちらりと見て、ただ無機質に過ぎ去るだけ。


 みんな、大嫌い。


 急いで祭り会場から離れようとした。でもそのとき、見知った男女の集団に見られた。 


 クラスメイトの人たち。


 今一番会いたくない人たち。


 みんな浴衣を着て、オシャレして、本当バカみたい。


「あれひいらぎじゃね?」


 誰かが言った。


「何であいつがここにいんの?」「知らね」

「ガリ勉は家で勉強してればいいのに」

「それよか一人で来てやんの」「何あの服ダサいんだけど」


 心臓がずきりと痛む。両手で耳をふさいだ。でもドンドコ太鼓の音が鳴り止まない。


 その場から走って逃げた。


 人の流れに逆らって参道を駆け抜ける。


 周りの人たち、みんな私を見て笑っていた。


 神社の石段でつまずいて転んだ。


 右膝から血が出て痛い。でも周りは誰もが見て見ぬふりしてた。


 その時、大きな音を立てて花火が鳴った。


 ドン、ドンとうるさい。


 今の自分を惨めに照らすなと思った。


 じわりと痛みと悔しさで視界が滲む。


 花火が消えた後、宵闇よいやみの中、たった一人で歩いていた。もう足が痛くて走ることさえできなかった。


 家に帰ると家族が私を見てびっくりしてた。でもお母さんは何も聞かずに優しく傷口の手当をしてくれた。消毒液がしみる。でも心の痛みが和らいだ。


 お父さんは私の頭を撫でてくれた。もう子供じゃないんだからと突っ張ってみたけど本当はすごく嬉しかった。


 夕飯の後は妹とバラエティー番組を見て二人で笑い合った。とても楽しかった。


 寝る前にシャワーを浴びた。傷口がヒリヒリしたけど、何だか気持ちがスッキリした。

 

 そしてベッドのなか。


 だけど、眠れない。


 いつまでもいつまでも祭囃子まつりばやしが頭の中で鳴り止まないから──。

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