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箱の中身、感情のありか

掲載日:2025/11/29


 私と姉は同じ部屋だった。

 おもちゃ箱はふたつ。姉のおもちゃを、私は使ってはいけないからだ。

 私は部屋を出ていくとき、いつも私の箱に、おもちゃをしまう。そして部屋に戻ってきたときに、まっさきに姉の箱を探した。

 姉は私がいないとき、私のおもちゃで遊び、自分の箱にしまうからだ。


「盗ってないし! てゆーか私のおもちゃ箱、触んないでよ!」


 姉に文句を言うと、いつも逆ギレされて、母に告げ口された。

 母は話を聞かず、私に「駄目よ」と言った。私が抗議すると、


「心がせまいのね。仲良く遊びなさい」


 と言った。私は、姉のおもちゃを使ったことはない。一度使ったら、姉は泣きわめき、母に酷く叱られた。


「お姉ちゃんは使うのに」

「仕返ししようとしたの? 意地悪ね」


 姉は、私のおもちゃを枕において、ジャマなときだけ、自分の箱にいれるようになった。


「あんたが大事にしないから、使ってくれてるのよ」

「お前が意地悪だから、姉もストレスがたまるのよ」


 母はいつも、姉を叱らなかった。 

 私は宝物を箱にいれるのはやめた。箱に入らないものを、宝物にした。

 それは友達とか思い出だった。

 夜、ときどき姉は、箱の中をじっと見つめている。

 欲しいものは箱を見てても手に入らないよ。

 私はねたふりをしながら思った。


 高校生になって、私達は引っ越しをした。

 荷造りをしていると、姉は私に、自分の箱を差し出してきた。


「これあんたのでしょ」

「もう私のじゃないし」

「そうやって私にいつも押し付けるよね。ちゃんとしてよ」


 そう言って、箱の中身を私の膝にひっくり返す。荷造りが終わったと、部屋を出ていった。

 この春、姉は初めての彼氏ができた。私より早く彼氏ができたことは、姉の自尊心を満たしたらしい。

 私は私のもので、姉のものだったものを見おろす。

 姉は幼い頃の箱の中身を、すべてを過去の遺物にするらしい。そしてそれは、私にも出来た。

 けれど、私は自分のダンボール箱に、それらをそっとしまったのだった。



《完》



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