第4話 拳の理由
ヤンキーの名前は――グラッド・バルド。
王都の魔法騎士団に所属していたが、素行不良で追放され、今は街の裏社会を仕切る存在。
魔法の腕はそこそこ、性格は最悪。
ミリアは彼に目をつけられ、ずっと苦しめられていた。
蓮がグラッドの部屋に着いた時、扉は半開きだった。
中から、鈍い音と、ミリアの悲鳴が聞こえた。
「やめて……お願い……!」
蓮が部屋に踏み込むと、グラッドがミリアを殴っていた。
ミリアは床に崩れ、涙を流していた。
ドアを開けて、そのままミリアに歩いて寄り添う蓮
「どうして来たの……?そのまま下界に帰ればよかったのに……」
ミリアは泣きながら蓮に訴えた。
蓮はポケットに手を入れたまま、部屋の中を見渡した。
「これで会うのも最後だって言うのに、お前がゲートまで見送りにも来ねぇから文句言いに来たんだよ。」
グラッドは振り返り、苛立ちを露わにした。
「今、お取込み中だろ。邪魔すんな。」
蓮は一歩踏み出す。
「ミリアに飽きたなら、次は俺を殴らせろってか?」
グラッドはニヤリと笑い、拳を握った。
「面白ぇ。お前、魔法も使えねぇらしいな?ちょっと遊んでやるよ。」
次の瞬間、グラッドの拳が蓮の顔面に向かって飛んだ。
――だが、蓮は動かなかった。
グリッドの拳が容赦なく蓮に振り下ろされる。
蓮は一切抵抗せず、ただ黙って殴られ続ける。
「いやぁっ!」
ミリアが叫ぶ。目の前で繰り広げられる暴力に、恐怖と悲しみが入り混じる。
グリッドは快感に浸っていた。
「俺に逆らうから、こうなるんだ」
そう言わんばかりに、満足げに拳を振るい続ける。
やがて、グリッドの手が止まる。
蓮はゆっくりと顔を上げる。
ミリアが駆け寄り、涙を流しながら蓮の胸にすがる。
「…あたしのために…」
蓮は静かに言った。
「気が済んだか? 気が済んだなら、もうミリアをいじめるなよ。」
その言葉に、グリッドとミリアは目を見張る。
蓮の身体には、殴られた痕がまったく残っていない。
両手もポケットに入れっぱなしだ。
「防御魔法か…?」
グリッドは疑うが、蓮はただ首を振る。
実際は拳が当たる瞬間に、身体をひねって衝撃を逃がすボクシングの技術だ。
再び怒りに燃えたグリッドが襲いかかる。
止めに入ったミリアが弾き飛ばされ、地面に倒れる。
蓮の目が鋭く光る。
「俺に攻撃するのは構わない。でも、他の人に手を出すのはやめろ。」
グリッドはミリアを人質にしようと手を伸ばす。
その瞬間、蓮の拳が一閃。
グリッドは一撃で気絶した。
蓮はその場に立ち尽くし、ぽつりとつぶやく。
「…やべっ、またやっちまった。これって弱い者いじめになるんかな…?」




