第3話 ミリアの涙
ミリアに連れられて、蓮は街へ向かっていた。
道中、蓮はポケットに手を入れたまま、周囲を見渡す。
空は紫、建物は石造り。異世界の景色に、少しだけ興味が湧いた。
「本当に魔法、使えないんだよね?」
ミリアが歩きながら物珍しそうに尋ねる。
「あっごめんなさい。こちらの世界だと、魔法が使えない方が珍しくって…。不思議な感覚なの」
連はミリアに振り向き。
「ああ。貧弱な一般市民だぜ。」
蓮は軽く笑った。
ミリアは優しく微笑んだ。
「じゃあ、私が守ってあげる。この世界は危険だから」
蓮は肩をすくめた。
「助かる。腹減ってるし、飯食ってから色々考える」
街に着くと、ミリアは蓮を食堂へ案内した。
木造の温かみある店内。香ばしい匂いが漂っている。
「好きなの頼んで。私が払うから」
ミリアは笑顔で言った。
「いいよ。自分で食った分くらい自分で払うよ。」
ミリアは、不思議な紙幣を目の前でひらひらして見せる。
「あなた、異世界人なら、ここの世界のお金持ってないでしょ?」
ここでの紙幣は円ではないみたいだ…。
考えれば当たり前か…。
「……悪いな。助かる」
蓮は素直に礼を言った。
料理が運ばれ、蓮は黙々と食べる。
その時だった。
「おい、ミリア。こんな奴と飯食ってんのか?」
食堂の空気が一瞬で凍った。
現れたのは、異世界風のヤンキー。
髪は逆立ち、鎧のような服に魔法の紋章。
周囲の客は目をそらし、見て見ぬふりをしている。
「あとで俺の部屋に来いよ。話がある」
蓮は箸を止めた。
「……今、俺がミリアと話してるんだけど。割り込むなよ。」
ヤンキーは蓮を睨んだ。
(なんだこいつ…。なんて目をしてやがる…。)
ヤンキーは連を睨み返し。
「じゃあ、明日は、お前が俺の部屋に来い」
蓮は無言で睨み返す。
食堂の空気は重く、誰も口を開かない。
ミリアは悲しそうな顔をして、俯いた。
「ごめんね……不愉快な思いさせちゃって……」
今にも泣き出しそうなミリアに、蓮は言った。
「構わねぇよ。あれ、友達か?」
ミリアは首を振る。
「……違うけど」
「人が話してる時に割り込むのはマナー悪いって、言っといてくれよ」
蓮は立ち上がった。
「それより、現世に帰る方法、あるか?」
ミリアは少し驚いた顔をして、答えた。
「……あるよ。でも、ゲートは一定周期でしか開かない。夕暮れまでに通らないと、次は一年後みたい」
ミリアは地図を渡した。
蓮は頷いて
「じゃあ、行くわ。何から何までありがとな。」
食堂を出て、ゲートへ向かう蓮。
だが、歩きながら不満を漏らす。
「最後なんだから、見送りくらい来てくれてもいいのにな。」
その時、すれ違った村人の独り言が耳に入った。
「またミリアか……可哀想にな」
「またいじめの対象になって……」
蓮は足を止めた。
「……いじめ?」
急いでさっきの店に戻るも、もうそこにはミリアの姿はなかった。
蓮は拳を握りしめた。
「……さっきここで、ミリアと話してた男のこと誰か知らないか?」




