第2話 腹が減っただけなのに
神崎蓮はポケットに手を突っ込んだまま、ふらふらと歩いていた。
目的なんてない。ただ、腹が減っていた。
元々ラーメンを食べたかった。それだけだ。
「……なんか、こっちに人が多いな」
人の流れに逆らうのは面倒だが、蓮は何となく皆が歩いてくる方と反対の方向へ足を進めた。
そっちが街だと思ったからだ。
皆がダンジョンに向かっているのなら、皆が来た道を戻れば町がある――そう思った。
だが、蓮の前に一人の少女が立ちはだかった。
「待って!そっちはダメ!」
蓮は足を止め、少女を見た。
ローブ姿で、杖を持っている。年は蓮と同じくらいか。
「……誰?」
「私はミリア。中級魔法使いよ。あなた、私服で武器もなし、ポケットに手を入れたままって……死にたいの?」
蓮は眉をひそめた。
「は?何の話だよ」
「ここは高難易度ダンジョン。出てきた人は皆、上級魔術師。命からがら逃げてきたの。そんな場所に、あんたみたいな格好で入ってくるなんて、正気じゃない!」
蓮は肩をすくめた。
「……あー、そういうことか。俺、間違えて、この世界に来ちゃったんだ。」
「間違えて?」
「ラーメン食いたくて歩いてただけなんだよ。腹減っててさ。そしたら、なんか空間歪んで、気づいたらここにいた。飯屋どこ?」
ミリアは呆気に取られた顔をしていた。
「……あなた、異世界転移者?」
「異世界?あー、そうかもな。ラーメン屋で『マヨネーズ味』頼んだら、奥の部屋に通されて、気づいたらここだった」
「……マヨネーズ味のラーメン……?」
蓮は真顔だった。
ミリアは頭を抱えた。
「とにかく、ここは危険よ。町に戻るなら、私が案内するわ。あなた、魔法も使えないんでしょ?」
「魔法?使えねぇよ。」
ミリアはため息をついた。
「もう……いいわ。町まで案内する。ここはあなたの世界じゃないんだから、あたしが責任もって送り届けるわ。」
蓮はニヤリと笑った。
「わかったよ。その…ありがとうな」
連のことを畏怖せず親切にしてくれることなんて何年ぶりのことだろうか…
連はうれしく思った。
こうして、神崎蓮の異世界生活は開始早々終わった?




